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頭が良ければ、高い収入や社会的地位を手に入れることが可能なことから、知能が高い人ほど健康に生きられるようにも思えます。しかし、知能指数(IQ)が上位2%の人しか加入できない団体であるメンサの会員を対象とした調査により、IQが高い人ほど心身の健康を損ないやすいことが判明しました。

High intelligence: A risk factor for psychological and physiological overexcitabilities - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160289616303324

Bad News for the Highly Intelligent - Scientific American

https://www.scientificamerican.com/article/bad-news-for-the-highly-intelligent/

アメリカのピッツァー大学で心理学について研究しているRuth Karpinski氏らの研究グループは、アメリカのメンサ会員3715人を対象としたアンケートを実施し、気分障害・不安障害・注意欠陥多動性障害・自閉症スペクトラム障害・アレルギー・ぜんそく・自己免疫疾患を患っている人の数を調査。その結果をアメリカの全国平均と比較しました。

その結果が以下のグラフです。棒グラフは左から気分障害・不安障害・注意欠陥多動性障害・自閉症スペクトラム障害・食物アレルギー・環境アレルギー・ぜんそく・自己免疫疾患を表していて、黄色が全国平均・茶色がその病気の診断を受けたメンサ会員・焦げ茶色が医師による診断と自己診断を合計したメンサ会員の有病率です。どの病気を見ても、全国平均よりメンサ会員の有病率の方が上回っていますが、特に気分障害では全国平均の約2.5倍、環境アレルギーでは全国平均のちょうど3倍と顕著な結果となりました。



Karpinski氏らの研究グループはこの結果について、非常に高いIQを持つ、いわゆるギフテッドの人々によくみられる「Overexcitability(過度激動)」が原因ではないかと考えています。過度激動とは、刺激に対して過剰に反応してしまうという性質のこと。これにより、IQが高い人は「職場の上司から否定的な評価を受けた際などに考えすぎてしまい、そのストレスが元になって心身に異常をきたす」といった形で健康を損なってしまうのではないかというのがKarpinski氏らの推測です。



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一方で、アメリカの科学誌Scientific Americanに掲載された記事でこの研究結果を取り上げたミシガン州立大学の心理学教授デビッド・ハンブリック氏は、「IQが高いグループの方が一般人のグループより有病率が高いことが分かったとしても、高いIQが疾病の原因だと証明されたわけではありません」と指摘しています。というのも、「知的な探究に没頭している人は、平均的な人よりも運動や社会的な活動に割く時間が短いため、結果として不健康になりやすい」など、IQの高さと疾病は直接関係がないとも考えられるからです。

実際に、3歳でIQ171という天才児の事例では「IQが高い子どもは1日中学習に没頭してしまいろくに食事をしないので、親は高カロリーな食事とジュースを用意しなければならない」ことが指摘されています。

「IQ171の天才」を子どもに持つ親の悩みとは? - GIGAZINE



研究グループは今回の研究結果について「知能が高い人は精神的・肉体的な疾病のリスクが著しく高いとの知見をもたらしました。ただし、因果関係の解明には至っていません」と述べて、今後の研究によりIQの高さと健康の関係性が明らかになることへの期待感をのぞかせました。