HC就任以降、たびたび耳にした南ア戦勝利「自分としては忘れたかった話」

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で初めて8強入りした日本は18日、都内で20日に行われる準々決勝・南アフリカ戦の先発メンバーを発表した。1番の稲垣啓太から23選手の名前を読み上げたジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)は落ち着いた様子で、充実の調整が続いていることを伺わせた。

 ベスト8入りという当初の目標を達成した日本代表。2016年からチームを率いるジョセフHCは、「選手が自分たちでチームを引っ張ろうという気持ちになっている」と話し、W杯期間中も感じるチームの成長について触れた。その象徴的な場面は、グラウンド外にあるという。

「グラウンドを離れた場面でも選手たちが集まって、選手主体で何かに取り組んでいる姿を多く見掛けた。チームにパソコンが6、7台置いてありますが、選手が2、3人で集まって、お互いに細かい役割を話し合って確認する姿をみると、このチームが一丸となって成長しているんだなと思います」

 ニュージーランドで生まれ育ったジョセフHCにとって、南アフリカは「最もリスペクトしているチーム」だという。リスペクトする気持ちは今でも変わらないが、今は20日の準々決勝で倒さなければならない相手。前日の記者会見で南アフリカのラッシー・エラスムスHCは「我々は手の内を隠す必要はない」と、一日早く先発メンバーを発表した。これを受けてか、ジョセフHCは南アフリカの作戦分析を明らかにした。

「4年前とは全く違うチーム」とジョセフHC、自分たちのスタイルで勝利へ

「南アフリカが何をしてくるのかは明らかだ。それは選手セレクションを見れば分かる。控えにFWを6人入れるのは珍しいことではないが、フィジカルでダイレクトなアプローチで来るだろう。相手にボールを渡してFWのディフェンスで相手を潰して勝機を見いだしてくる。我々はそれに対してしっかり準備をしてきた」

 そして「手の内は隠さない」という南アフリカHCとは対照的に、「今、明らかになっていないのは、我々が何をするかという作戦。それは日曜日のお楽しみだ」と具体策を明かすことはなかった。

 日本にとって南アフリカといえば、2015年の前回大会で大金星を挙げた相手。今大会ではイングランド代表を率いるエディー・ジョーンズHCが日本を大番狂わせへと導いた「ブライトンの奇跡」が、再び大きな脚光を浴びている。だが、記者会見で4年前の南アフリカ戦について話が及ぶと、ジョセフHCは物腰の柔らかい口調ながらもピシャリと言い返した。

「この4年間でその話が何度も出てきたので、自分としては忘れたかった話。その時とはまったく違うチーム。何人か同じ選手はいるが、違うメンバーが新たなチームを作った。2015年の偉業は本当に素晴らしいものだと思うが、(準々決勝を前に)我々はそこについて話はしていません」

 4年前、確かにエディージャパンは日本ラグビー界に燦然と輝く偉業を果たした。過去がなければ、今はない。だが、2019年、史上初のベスト8入りを果たしたジェイミージャパンは、全く新たな形で日本ラグビー界の歴史を塗り替えた。ジョセフHCが率い、選手が主体性を持って成長した日本代表。20日の準々決勝では自分たちの築いたスタイルで、南アフリカから2勝目を飾りたい。(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)