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勉強や作業を行う時、BGMを流しながら行うという人も多いはず。一方で、「音楽を聴きながらの勉強は集中できず、十分な効果が得られない」という意見もあります。「勉強中にBGMを聴くことに問題があるのか」という疑問について、ウロンゴン大学の心理学者であるティモシー・バイロン氏が解説しています。

Curious Kids: is it OK to listen to music while studying?

https://theconversation.com/curious-kids-is-it-ok-to-listen-to-music-while-studying-125222

「モーツァルトの曲を聴くと数学に関する能力が向上し、成績が上がる」という説が唱えられ、この説を確かめたという(PDFファイル)研究結果が1993年に発表されました。それによると、確かにモーツァルトの曲を聴くことと成績の向上に関連が認められたものの、数学に関する能力が向上しているとはいえなかったそうで、「単に音楽を聴いてリラックスしただけ」という結論に至りました。

また、2006年に発表された研究論文では、10歳と11歳の子どもたちに、モーツァルトの曲とブリットポップバンドのブラーの曲を聴かせて認知能力に関するテストを実施したところ、子どもにとって馴染みの薄いモーツァルの曲よりも、ブラーの曲を聴いた時の方が高い成績を記録したことが判明。同研究では「学習者が音楽を楽しむことで認知能力が高まる」という結果が導き出されたことから、研究チームは同効果を「ブラー効果」と命名しています。



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バイロン氏によると、人は勉強する時、ワーキングメモリである脳の中に情報を保持しているとのこと。1989年の研究では、BGMに音楽、特にボーカルのある曲を流すと作業記憶が悪化することがわかりました。また、より内向的な人は特に刺激されやすく、音楽によって集中力が妨げられることが多かったそうです。

しかし、2017年に行われた研究では、「学習者のワーキングメモリ容量が多ければ多いほど、BGMを聴きながら作業をすると効率が上がる」という結論が得られています。

また、2011年に発表された研究では、「音楽を聴いているかどうか」ではなく「どんな音楽を聴いているのか」に注目し、音楽の内容とパフォーマンスの関連について調査が行われました。その結果、パフォーマンスが低下したのは、テンポが早くて大音量の音楽を聴いていた場合だったことが判明しました。



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こうした研究結果を踏まえて、バイロン氏は「勉強中に音楽を聴くことにはおそらく問題はない」と論じながら、以下の4点に注意する必要があると述べました。

・音楽を聴いてリラックスすること

・音楽のテンポが早すぎず、大きすぎないこと

・ボーカル部分が少ないこと、ビートに乗せて言葉を重ねていくヒップホップは特に注意力が下がりやすい

・自身の性格が内向的ではないこと