ついさっき食事をしたばかりなのに、もうすでにお腹が空いている……。このような状況に遭遇した経験を持つ人は多いはずだ。育ち盛りの子どもや部活やサークルで激しい運動をしている学生ならばまだしも、一般的な成人が日常的にこのような状態にあり、思うがままに食べていたら……。肥満や糖尿病になるリスクが高まるのは、火を見るよりも明らかだ。

そうならないようにするためには、食後すぐに空腹感を覚えてしまう原因を究明したうえで、きちんと対策をとる必要がある。そこで今回、管理栄養士の真野稔子さんに「食べてもすぐにお腹がすく食べ物とその原因」などについてうかがった。

食べてもすぐお腹がすくのはなぜ?


食べてもすぐお腹がすく原因

真野さんによると、食後すぐにお腹がすく原因としては、「偏った食事による栄養不足」「糖質制限のしすぎ」「寝不足」「ストレス」などが考えられるという。

「食後、すぐにお腹がすくのは血糖値が低下するからです。とりわけ糖質の多い食事は、血糖値を急上昇させた後、急降下させます。血糖が下がった際、私たちの体はお腹がすいたと感じる『空腹感』を最初に生じさせます。エネルギーとなる糖質が不足した脳は、エネルギーを補給するように指令を出します。低血糖は私たちにとって危険信号なので、『何か食べないといけないぞ』というサインを送っているのです」

食事制限などでダイエット中の人は、慢性的な糖質不足から、常に空腹感と隣り合わせ。糖質は脳の唯一のエネルギー源と考えられており、過度な糖質制限をしていると、脳がいつもエネルギー不足になってしまうそうだ。

「糖質を補給しなければ空腹感は治まりにくく、食べても食べてもお腹がすくはめになってしまいます。また、睡眠不足やストレスはホルモンバランスを崩し、食欲や血糖値に悪影響を与えます」

食後すぐにお腹がすきやすい食品

・糖質だけの食品

・ジャンクフード

・スナック菓子

・ファストフード

・加工食品

・野菜・果物ジュース(サラサラタイプ)

「糖質だけの食品やジャンクフードと呼ばれるもの、ハンバーガーなどのファストフード、ご飯類、麺類は『高エネルギー(高カロリー)』『高塩分』『高脂質』である一方、ビタミンやミネラル、食物繊維が不足しやすく、栄養バランスが悪い食品です。スナック菓子も同様ですし、野菜や果物のジュースも、サラサラタイプのものは食物繊維が少ないので、すぐに吸収されてしまいます」

また、加工食品なども栄養に偏りがあり、いずれも血糖値がすぐに上がるが、下がるスピードも速いため、食べてもお腹がすく食品だという。噛む回数も少なくてすむので、満足感を得られるのが遅く、つい食べ過ぎてしまう原因につながるという。

食後すぐにお腹がすきにくい食品

栄養バランスに優れないジャンクフードやスナック菓子などの食品は食後すぐに空腹を感じるが、一方で満腹感や満足感を持続できる食品もある。代表例を以下にまとめた。

・噛みごたえがあり、噛む回数の多い食品

米なら玄米、雑穀米、パンならハード系の全粒粉のパン、ライ麦パンなど。おしゃぶり昆布やスルメなどの乾物食品。食材が大きめにカットされたものは噛みごたえもあり、噛む回数も増えて満足感につながる。

・たんぱく質の多い食品

肉、魚、大豆・大豆製品、卵、乳製品など。これらの食品はたんぱく質のほか、脂質やそれぞれに含まれるビタミン類が摂(と)れるうえ、消化に時間がかかるため、満足感が続く。

・食物繊維が多い食品

雑穀、野菜類、キノコ類、海藻類、果物類など、食物繊維やビタミン類が摂れる食品。特に食物繊維は血糖値の上昇を緩やかにするため、満腹感を得やすい。また、噛む回数が増えるので、ゆっくりよく噛んで食べることも血糖値の上昇を緩やかにする。

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すぐにお腹がすかないようにするための対策

食べる食品の峻別も重要だが、食事方法を工夫することも食後の腹持ちを持続させるうえで大切となる。具体的なポイントは「食べる回数や量を調節」。サイドメニューで野菜を使ったものを追加するなど、購入時に工夫して選ぶことが肝要だと真野さんは強調する。

「セットメニューでも、大きさが選べる場合は小さめのものを選ぶようにして、野菜を多く食べることができるようなサラダ、スープ、味噌汁などを付け加えます。メインとなるメニューのサイズを小さくして、サイドメニューをプラスするのも一つの方法です。野菜にはビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が含まれているので、栄養バランスも良くなります」

野菜・果物ジュースは、ミキサーで回したものやスムージーなど、できるだけ食物繊維が残ったものを飲むようにするといいそうだ。さらに野菜や果物などは、ジュースよりも食物繊維やビタミンがしっかり残る固形で食べることを推奨している。

以下に真野さんお勧めの空腹感を抑える食べ方を3点まとめたので参考にしてほしい。

・時間をかけて食べる

脳が満足感を感じるのには、食べてから20分ほどかかる。ゆっくり食べることにより、脳の視床下部にある満腹中枢が刺激され、満足感を覚える。ゆっくり噛んで食べると血糖値の上昇が緩やかになり、かつ血糖値の急降下が防げるので空腹感を抑えられる。

・一口30回噛む

人の脳はよく噛むほど満腹感を覚え、「もう食べなくていいよ」という指令を出す。一口30回噛むくせをつけるといい。

・一口ごとにお箸を置く

一口食べ物を口に入れたら、一度お箸を置いて味わうことに集中してみる。ゆっくり食べると満腹感を覚えやすくなり、空腹感を抑えることができる。

※写真と本文は関係ありません



○監修者:真野稔子(マノ・トシコ)

管理栄養士。モデルから食のアドバイザーへ転身。食は健康の基本であり、美の基本であるという考えから、お腹の中からキレイを作ろうというコンセプトに基づき、シンプルでナチュラルな食生活を提案。パーソナル管理栄養士として、また病院(病棟・外来)・企業・行政機関などでの栄養指導、カフェなどのメニュー開発や各種メディアに出演するなど幅広く活動中。

オフィシャルブログ「Food Care 〜食べて身体をケアしましょう〜」・「理想の身体を手に入れる・美人ごはん お腹の中からキレイを作ろう」やフェイスブックでも情報を発信している。