3代目でもすでにターボの販売比率は落ちていた
5代目となる現行型スバル・フォレスター。販売面では堅調な人気を維持しているが、2018年に登場したときは、ハイブリッドのe-BOXERが採用された代わりにターボエンジン搭載グレードが消滅したことで、多くのスバルファンはざわついた。
1997年にブランニューモデルとして誕生した初代モデルは全車ターボエンジン搭載車で(NAは少し遅れて追加された)、2代目モデルまでは硬派な高性能モデルのSTIバージョンも設定。”バカッ速SUV”の市場を開拓したパイオニア的存在だっただけに、クルマ好きの間ではターボの消滅を寂しがる声が噴出した。
フォレスターがターボをやめた理由は、ひと言でいえば「時代の流れに合わせたグレード展開の見直し」ということになる。一部のファンは強く残念がるものの、4代目モデルからターボエンジン搭載グレードの販売比率は大幅に下がり、モデル末期は2割にも満たない比率になっていた。
もっというと、フォレスターのターボグレードの販売比率はボディサイズが拡幅された3代目モデルあたりから下がり始めており、車格が上がるにつれて”バカッ速”的な動力性能はあまり求められなくなっていたのだ。
4代目モデルではターボ搭載車にMTの設定がなくなったことから、硬派な走りを重視するユーザーが離れた結果、ターボも減ったといえるが、ターボが売れ筋グレードではなくなっていたのはかなり前からハッキリしていた。4代目フォレスターはターボにMTがなくても良く売れたし、ターボがなくなった現行型も堅調に売れ続けているので、メーカー的にはマーケティングの狙い通りといえる。
ハイブリッドのe-BOXERにスポーツ性を求めた
筆者個人としては、フォレスターにMTとターボがなくなったことを今も残念に思い、寂しく感じてはいるが、市場はそうではないというのが現実だ。
ターボの代わりに搭載されたe-BOXERには、もう少し電気トルクの上乗せが欲しいとの不満もあるが、販売の半分を占める人気グレードになっているので、現行型デビュー時に開発をまとめたチーフエンジニアの布目さんが語った「ターボの代わりに新しく提案するスポーツ性を磨いた」との取り組みは奏功し、成功したといえる。
国内の競合SUVからも高出力エンジンを積んだスポーツモデルが出そうな気配もないし、フォレスターは今も独自性を保っていると評価できる部分が少なくない。
とはいえ、「よそがやらないことをやるのがSUBARUの魅力」でもあるし、世界的にはもっと高額なクラスになるとスーパーカー並みの動力性能を備えたSUVが大人気だったりもするので、未来永劫フォレスターからターボが設定されないわけでは決してないはずだ。フォレスターはこのまま大人しい実用車として終わることはないと信じたい。
今後もしばらくはSUVが世界的な人気ジャンルとして売れ続けるのは間違いなく、今やSUBARUの屋台骨となったフォレスターには、搭載されるパワートレーンの充実化や高性能化がはかられる可能性は十分にある。いずれ高性能版はSTIの限定車として登場することも期待できると信じて、明るい未来を待ちたい。