日中の時間帯にアルコール飲料を提供する店が増え、「昼飲み」という言葉が定着しつつあります。ファミリーレストランの中には、日中限定でアルコール飲料を割安で提供する店もあり、ビールグラスやワイングラスを片手に談笑する主婦や学生のグループを見かけることがあります。そもそも、飲食店はなぜ「昼飲み」を始めたのでしょうか。また、アルコール飲料を飲む場合、日中と夜、どちらの時間帯が適しているのでしょうか。専門家に聞きました。

主婦層や家族連れも新たなターゲットに

 飲食店が昼飲みを実施するようになった背景について、飲食店コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

Q.「昼飲み」を導入する飲食店が増えている印象があります。なぜ、日中からアルコールを提供するのでしょうか。

成田さん「飲食店が『昼飲み』を導入する狙いは、ずばり『新しいターゲット層の獲得』です。これまでアルコールの提供といえば、仕事帰りの男性サラリーマンや独身OLがターゲットでした。『ハッピーアワー』『ほろ酔いセット』などが代表的な集客法です。

最近は新たなターゲット層として、女子会を行う主婦たちや家族連れを狙っています。ファミリーレストランの中には、非常に安価なアルコール飲料の提供で集客をしている店舗もありますが、そうした客は食事やおつまみも一緒に注文するので、結果的に売り上げは伸びます」

Q.アルコール飲料を提供することで、客単価が高くなるということですか。

成田さん「そうですね。すべての人ではないですが、アルコール飲料を飲むと楽しくなって気分も良くなり、ついつい財布のひもが緩くなりがちです。1杯で終わらせるつもりが、もう一杯注文する、ということはよくあります」

Q.「昼飲み」の主な顧客層は。先述のように主婦層が多いのでしょうか。

成田さん「主婦も多いですね。主婦の場合、家族の手前、夜頻繁に外出することはできません。その点、昼は比較的外出しやすいですし、夜の女子会と違い、終電を気にせずに同伴者とゆっくり話せます。そして何よりも、夜より昼の方がお財布に優しいです。

また、最近では、家族全員でお酒を交えて昼食を取る『家族飲み』の利用も増えてきています。準備や後片付けが不要な上、おいしい料理やおつまみもあり、比較的低価格で利用できるため、喜ばれています。新しい家族のコミュニケーションの形となるのではないでしょうか。飲食店側も新たなターゲット層の獲得で売り上げも伸び、まさにウィンウィンです」

Q.反対に、日中にアルコール飲料を提供するデメリットはありますか。

成田さん「お客さまにマナーを守ってもらえれば、デメリットはありません。アルコール飲料を飲んで大声で騒いだり、他のお客様に迷惑をかけたりするなどの行為は店側の姿勢で防げるでしょう。店の回転率を指摘する人もいますが、ランチの利益率を考えれば、メニューの構成次第では十二分に利益が出るでしょう」

昼飲みの方が肝臓にやさしい?

 次に、日中にアルコール飲料を飲んだ場合の体への影響や注意点について、医師の市原由美江さんに聞きました。

Q.アルコール飲料を飲む場合、日中と夜、どちらの時間帯に飲むのがよいのでしょうか。

市原さん「アルコールは肝臓で分解されます。夜に飲むと、寝ている間も肝臓が働いていることになります。肝臓の負担を考えると、昼に飲む方が夜よりはよいでしょう」

Q.確かに、昼に飲んだ際に酔いが回りにくいと感じたことがあります。日中の方が酔いにくいのでしょうか。

市原さん「酔いの回りやすさに飲酒の時間帯は関係ないと思います。ただ、昼の方が体をよく動かしますし、水分もよく摂取するため、昼の方がアルコールの分解が早い可能性はあります」

Q.日中にアルコール飲料を飲む際の注意点は。

市原さん「当たり前のことですが、運転する場合は絶対に飲んではいけません。加えて、飲み過ぎずに適量を楽しむことに尽きます」

Q.アルコール飲料を飲む時間帯によって、飲んでもよい量に違いはありますか。

市原さん「違いはありません。昼に飲むからといって、夜よりも多く飲んでいいということはありません。1日に摂取するアルコール量は20グラムが適量とされています。繰り返しになりますが、飲み過ぎには注意しましょう」

Q.中には、朝の時間帯にアルコール飲料を飲む人もいます。朝に飲むのは健康上、よくないのでしょうか。

市原さん「例えば、夜勤の人であれば、朝の時間帯に飲酒して就寝すると思います。時間帯の違いはありますが、夜に比べてよくない点は特にありません。もちろん、適量を守っているという前提での話です」