◆「肌の色で笑いものにされる」社会

 炎上したネタをつまらない冗談だと受け止めるか、危険なものだと受け止めるかは、人それぞれだろう。“笑い”や“いじり”がどれだけ力強いものかは、本来お笑い芸人である当人たちが一番知っているはずだが、今回はそこに無自覚だったのかもしれない。

 たとえば、国際結婚が増えるなか、今後日本でも異なるルーツを持った人々はさらに増えていくはずだ。こういった笑いが野放しにされたまま、彼らが「肌の色で笑いものになる」社会で育つようなことは望ましいことだろうか?

 今回のネタもアフリカ系のルーツを持ったお笑い芸人が言ったのであれば、日本社会におけるマイノリティの問題を笑い飛ばすものとして、むしろ勇気を与えることにもなったかもしれない。単に言葉狩りをするのではなく、何が問題だったのか、しっかりと理解する必要があるだろう。

 アフリカ系コメディアンがさまざまな人種が入り混じった観客を相手に、黒人社会における問題点を皮肉るのと、日本人が日本人だけで埋め尽くされた客席に向かって「漂白剤がいる」「黒人の触れたものに座れない」と言うのでは、まったく意味合いが変わってくる。

 ただ、今回の件に関しては、こういった発言を公の場でお笑いのネタとして放つ時点で、人種問題について何か伝えたいメッセージがあるとはとても思えない。安全な立ち位置から、他の人種を消費しているだけなのではないだろうか。

 今回、炎上した2組の芸人は、若手の中でも才能があると言われている注目のコンビだ。今回のことをきっかけに、際どい笑いの中で社会的な問題をえぐり出すような、そんなエッジの効いたネタをつくりあげてほしいものだ。

<取材・文/林 泰人>【林泰人】
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン