もし離婚になったら、買ったマンションはどうする? 財産分与のために売却せざるをえなくなっても、手放さずに住む方法がある(写真:shimi/PIXTA)

総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」における「住宅数概数集計」によると、「共同住宅(マンション・アパート等)」の住戸数が2334万戸と、過去最高に達しました。前回(平成25年)の調査と比べて125万戸増、5.7%増です。

中でも、「15階以上」の共同住宅数は2003(平成15)年から60万戸も増え、93万戸に達しています。増加の内訳を都道府県別にみると、東京が17万戸増、大阪が12万戸増。「タワマン」は日本の2大都市圏で増加していることがわかります。

筆者は東京で暮らしていますが、最近では都心ばかりでなく、少し離れた郊外でもタワマンを見かけるようになりました。この十数年間で、かなり多くの人々が「タワマン族」になったことでしょう。

夫婦で1000万円の収入があれば、タワマンは夢ではない

タワマン人気の要因は、何といっても「眺望」でしょう。低層のマンションからは見ることができない眺め……都心の夜景など、日常を忘れてしまうほどに華やかです。

それから、「ホテルライク」の暮らしもできる。コンシェルジュが常駐するタワマンでは、日々の生活をサポートしてくれたり、あいさつや声をかけてくれたり、ちょっとした優越感に浸れます。企業の社長・役員、士業・フリーランスの成功者たちに人気のタワマンは、「成功の暁に手にした城」なのでしょう。

タワマンには「便利」という側面もあります。立地のよいタワマンが多く、複合型の商業施設が併設されていることもあります。タワマンの中心価格は、5000万〜7000万円台。上層階は「億ション」になると思いますが、夫婦の合算収入で1000万円以上あるなら、中層階以下であればタワマンの購入は夢ではありません。

ただ、タワマンは暮らしに便利さや優雅な気持ちをもたらしてくれる反面、思いがけないトラブルももたらします。タワマン内にはいくつかの価格帯があるせいで、価値観の異なる人たちが共存することになるからです。

例えば、中層階以下のタワマンを所有している人の中には、セカンドハウスとしてキャッシュ購入している人もいれば、夫婦合算で何とかローンの審査が通ったという人もいます。収入に格差があれば、価値観は同じというわけにはいきません。そのためタワマン管理組合内でもめ事が起こりやすくなります。

実際、マンション管理会社に話を聞いたところ、「当社が預かるマンションは、“お金をかけて修繕していこう”という物件、そして“お金はかけずにいこう”という物件に分かれます。しかしタワマンの場合は、両方の価値観の人がいるので方針を決められず、苦心することが多い」というのです。

タワマン夫婦が離婚すると「財産分与」で必ずもめる

管理組合内だけでなくタワマンの物件内でも、もめ事が少なくありません。一緒に暮らしている夫婦が仲違いするのです。タワマン購入までは、その目的に向かって夫婦ともに歩んできたものの、いざ手に入った途端、方向が変わってしまうのでしょう。

タワマンは一般的なマンションより、部屋の個数があります。またタイプ別にも分かれていて、内装や仕様を選択できるようになっています。したがって、タワマンを所有する人たちは「カスタマイズしたい」という思いを強く持っています。

昔に比べると、おしゃれな家具も手頃に購入できるようになっていますから、「あれも、これも」と、テレビドラマに出てくるようなマンションライフを実現したくなる。その結果、支出は増え、預金は減りますが、「人生で最後の買い物だから」などと言い訳しながら、贅を尽くしてしまうのです。

しかし、もしタワマン夫婦が離婚の危機に陥ったら……。ぜいたくな選択をしてきたことが必ず問題になります。「財産分与」のもめ事が大きくなるのです。

結婚後、購入したマンションは、夫婦の共有財産となります。だとしたら、その権利は半々。とはいえ、マンションを2つに割ることはできません。そのような場合は、マンションの「評価額の半分」を、マンションに住まないほうがもらうことになります。

しかし、贅を尽くしたタワマンに投資してしまい、手元にお金がない場合はどうするか。売却し、現金を半分ずつ分けるしか方法はありませんが、凝りに凝った夢のタワマン、離婚することになっても簡単には手放したくない……。これは夫側に多い心情なのですが、さて、これを解決する手段はあるでしょうか?

昨年掲載した記事「『離婚タワマン夫婦』が陥る住宅ローンの地獄」でも触れましたが、「家」に対する「こだわり」は金額に換算することができません。そこで今、急成長しているのが「リースバック」というシステムです。

リースバックとは、家を売却して資金を確保すると同時にリース契約を結び、毎月のリース料(自宅であれば家賃)を支払いながらそのまま家に住み続けることができるサービスです。財産分与のために家を売却してしまうと、その後、新たな住まいを確保しなければなりません。そうであれば、売却・財産分与後もそのまま今の家に住み続けるほうが楽でしょう。

いや、楽などという言葉で片付けてはいけません。今の家やマンションに合わせて調達した家具類などは、新しい住まいでは使いづらい。背伸びして購入したタワマンである場合はお金の余裕もないでしょう。新しいところに引っ越してもお金をかけることは困難です。とくに夫のほうは、こだわり抜いたタワマンのわが家と離れるのは、妻と別れるよりつらいことなのです。

家賃負担とキャッシュフローを見極めることが大事

筆者は女性なので、やや複雑な心境ですが、今回、男性の本音が聞けました。

リースバックのサービスを提供しているセゾンファンデックスの担当者に聞くと、「正直、離婚時の利用は想定外でしたが、喜んでいただいています」。リースバックでタワマンを売却すると「区分所有者」ではなくなるため、固定資産税の支払いが不要となります。管理費・修繕費がなくなるメリットもあります。リース契約における家賃も「相場より低い設定にしているところが多い」とのこと。

利用者は現役会社員の50代が多く、家賃負担も問題ありません。離婚したうえリース契約に改めたことを管理組合に知られるデメリットはあるものの、「理事会出席の必要がなくなり、かえって“よかった”と思われる人が多い」と言います。

熟年離婚が増えるにつれ、「義父母の介護・老後資金」の問題や「相続財産トラブル」も増え、それらの対策としてリースバック利用が多くなっています。実際、介護や老後資金をめぐっての「夫婦問題相談」は増えてきているので、その解決にはよいシステムだと思います。

また「高齢化した家庭」では、家が広すぎるという傾向があります。子どもが自立して家を離れた後、老夫婦だけでは家の広さをもてあましてしまう。手頃な広さの家に住み替えをする場合、まず大量の断捨離をしなくてはなりません。高齢者にはこれが重労働でしょう。

そんなとき、リースバックで今の家を売却し、しばらくは賃貸契約をしながら、住み替え先のマンションの費用を工面していく。そうすることで心も体も余裕ができて、時間をかけて引っ越すことができるそうです。

子どものいない高齢夫婦の場合、不動産を残す必要がないので、ある程度の年齢になったらリースバックで売却し、売却益からリース契約の家賃を支払いながら老後資金にゆとりを持たせる、というケースも多いようです。年金問題が大きく取り上げられる昨今、住み慣れた自宅で、穏やかな老後生活を送れるなら理想かもしれません。

ただし、注意もあります。それはキャッシュフローを見極めること。売却後、住み続けるには家賃が必要です。リースバックは、キャッシュフローとライフプランをしっかり確認してから、時機を見極めて行動に移していただきたいと思います。