最先端の技術が採用されることで、時代の世相を反映してきたゲーム市場。第5世代通信(5G)のプレサービスが20日に始り、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開かれた国内最大級の展示会「東京ゲームショウ2019」でも「5Gでゲームがどう変わるか」が焦点になった。加えて、ゲームを競技として扱う「eスポーツ」も本格化してきた。ゲームとは縁が薄かった層も巻き込み、さらに巨大な市場が形成されつつある。

腕が鳴るクリエイター
 「レイテンシ(通信遅延)のない世界が来るなら、これほど幸せなことはない。これまでゲームデザインでごまかしてきた部分を解消し、入力速度に応じたシビアなゲームを作ることができる」。スクウェア・エニックスの佐藤英昭執行役員は5Gに高い期待感を示す。オンラインゲームでの通信遅延は運営上の足かせの一つ。低遅延を実現する5Gはゲームの作り方を大きく変えるとみられる。

 5Gの大きな特徴は「高速・大容量」「低遅延」「同時多数接続」。東京ゲームショウに出展したNTTドコモはブース内に5G基地局を2台設置。実際に5Gを使い、格闘ゲームのキャラクターが現実の風景の中で戦っているような拡張現実(AR)体験を実現した。スマートフォンを動かすとキャラクターの後ろ姿に回り込めるという新感覚のゲーム性に会場は沸いた。

 こうした機能を実現するには、スマホの位置情報とARの画像処理という2種類のデータを同時に遅延なく通信する必要がある。高速・大容量、低遅延という5Gの特徴を分かりやすく示した。

 今回の東京ゲームショウは国内の出展企業が350社と過去最多で、海外からの出展も3年連続で300社を超えた。出展は家庭用ゲーム機やパソコン向けが依然として多いが、注目されるのはやはりスマホ向けだ。今回は3割近くがスマホ向けとなった。家庭用ゲーム機並みのゲームをスマホでも楽しめるようになった今、5Gに対する期待は大いに高まっている。

プレー環境構築で競争
 だが「いろいろな実証実験でアピールしてきた半面、誤解も与えてしまっている」と、NTTドコモの中村武宏執行役員は漏らす。実際の5Gは、導入当初から標準仕様の性能を発揮できるわけではない。利用は一部の地域に限られ、数年かけて全国に拡大する。既存の4Gネットワークの高度化も進め、当面は4Gネットワークと5Gを組み合わせた運用が続くことになる。

 また通信速度はスマホなどの端末の性能に依存する。そのため、実際は毎秒数ギガビット程度からのスタートとなるという。通信遅延もネットワーク構成によって大きく変わる。5Gの標準仕様が高くても、すぐに恩恵にあずかれるわけではない。

 その意味で今後はハードウエアメーカーの開発競争の激化が想定される。国内アンドロイドOS(基本ソフト)のスマホとして首位のシャープは、ゲーム向けに適したスマホで強みを発揮。1秒間当たりに画面更新する回数を示す「リフレッシュレート」の高さや端末を冷却する放熱性能などで、他社と差別化を図る。

 高性能化が進むと、端末の発熱という課題は避けて通れない。シャープの小林繁パーソナル通信事業部長は「5Gスマホは通信回りの熱がかなり上がる。形や構造が大きく変わるだろう」と見通す。今後はよりアナログ分野の要素で、勝負が決まることになる。

業界つなぐ「eスポーツ」
 eスポーツもここ数年で大きな注目を浴びるようになった。米インテル日本法人の鈴木国正社長はカプコンブースに登壇し「誰でも参加できる形式を取ることで、業界の裾野を広げたい」と語った。20年東京五輪・パラリンピックに先立ち、東京で大規模なeスポーツイベントを開催することを説明した。