THE ORAL CIGARETTES(以下オーラル)が9月14日と15日、大阪・泉大津フェニックスでバンド初の主催野外イベント『「PARASITE DEJAVU 〜2DAYS OPEN AIR SHOW〜」』をおこなった。イベントは14日にオーラルのワンマン公演『DAY1 ONE MAN SHOW』をおこない、15日はSiMや04 Limited Sazabysら、オーラルと所縁のある7バンドが出演した『DAY2 OMNIBUS SHOW』を展開。初日には、シンガーソングライターのロザリーナも登場し、6日に配信リリースされた「Don’t you think(feat.ロザリーナ)」をライブ初披露。アンコール含め全20曲を届けた14日のワンマン公演の模様を以下にレポートする。【取材=村上順一】

人と人で共有したい

山中拓也(撮影=Viola Kam 【V’z Twinkle Photography)】)

 午前中から主催野外イベントは始まっていた。この日のために用意されたアトラクション、屋台などフードも充実していて、お祭り気分で楽しむ人々の姿。開演時刻が近づくに連れ、メインステージに続々と人が集まり、ライブモードへと気持ちを切り替えていく。

 開演時刻になり、高揚感を煽るカウントダウンを会場のみんなでおこない、「1本打って、2本打って」と景気づけの4本打ちを経て、メンバーがステージに登場。大歓声で迎え入れられ、気合の入ったあきらかにあきら(Ba.Cho)の表情がスクリーンに。そして、山中拓也(Vo.Gt)が最後にステージに登場し、「全員で楽しんでいくぞ! ロックバンド、オーラル始めます」と、気合の入った言葉からアドレナリン全開のナンバー「BLACK MEMORY」で幕は開けた。拓也はステージを縦横無尽に動き回り、熱量の高い歌声でオーディエンスを煽る。オープニングからオーディエンスも一緒に歌い、最高のスタートを切った。

 続いての「What you want」では、身体を弾ませ盛り上がるオーディエンスに地面が揺れるよう。デビューした時から思い描いていた光景。拓也はその光景を目の当たりにし涙を浮かべ、「思い入れのある泉大津、これだけの人達と迎えられることを嬉しく思います」と「WARWARWAR」へ。ワンマンということでシングル曲以外も出しおしみなく披露。続いては大阪というこの場所に映える1曲「N.I.R.A」で、グルーヴィなサウンドで身体を揺さぶりかける。そして、拓也もギターを手に取り、鈴木重伸(Gt)のワウペダルを使ったギターサウンドが彩ったセッションから「GET BACK」へ。徐々に日が落ちライティングの存在感が増してくる。時間の変化がドラマチックに楽曲を彩るのも野外ライブの醍醐味だ。

鈴木重伸(撮影=Viola Kam 【V’z Twinkle Photography)】)

 MCではこの公演の一昨日、奈良に帰郷した話題。あきらからLINEで「ここまで連れて来てくれてありがとう」というメッセージに胸が高鳴った拓也。メッセージをバラされたあきらは照れくさそう。2人の絆が垣間見れたエピソードから、拓也は「近鉄線に怪しい駅あるやん...」と奈良出身の彼らならではのナンバー「瓢箪山の駅員さん」を披露。そして、あきらのフレットレスベースによる滑らかなフレーズが堪能できる「LIPS(Redone)」とオーラルのアーバンな一面をで、ゆらゆらと身体を揺らし4人の音に身を委ねる。

 さらに「ワガママで誤魔化さないで」のサビでは、中西雅哉(Dr)による躍動感のあるビートに合わせ、会場はメトロノームのように規則正しく左右に振り上げられる腕で埋め尽くされる美しい光景が広がった。盛り上がり必至の「カンタンナコト」では、約2万人による大きく上下にお辞儀する“折りたたみ”が絶景を作り上げた。平面の野外に約2万人というシチュエーション、この臨場感はホールとはまた違った感覚を与えてくれる。

 拓也は変装をして、アトラクションエリアのイベントを楽しんでいたことを明かした。会場から驚きの声が上がるなか、みんなが楽しん出る様子を写真に撮って、嬉しかったと笑顔の拓也。そして、アトラクションエリア設置されたステージでパフォーマンスした、ヒューマンビートボックスのKAIRIをステージに招き入れた。KAIRIは自己紹介に、百聞は一見にしかずということで、ヒューマンビートボックスをパフォーマンス。身体から生まれる“生きたビート”を会場に響かせた。そして、「一番見たいんじゃないかなと思うやつ、やってもいいですか?」と聞き慣れたイントロのフレーズを奏でるKAIRI。拓也とKAIRIで「DIP-BAP」を2人でセッション。クールなKAIRIのビートにエモーション溢れる拓也の歌とのシナジーにオーディエンスは魅了された。そこから、バンドサウンドが加わり、この日だけの鮮烈な「DIP-BAP」を届け、ライブのハイライトの一つとなった。

 拓也は「自分の目で見て、自分で聴いて判断してほしいとデビュー当時から言っています。俺らは音楽を通して上がってきたというよりは、人と人と繋がって上がってきたという感覚が強いです。だから、色んなものを吸収して、人と人とで共有したいという気持ちを持ち続けていきたい」。

 さらに8月にリリースされたベスト盤『Before It’s Too Late』に収録された、過去曲のリメイク、Redone Versionに言及。「困惑させたかもしれないけど、色んなことに挑戦していくし、今日みたいなこと(コラボ)もやっていきます。自分のためになるものは吸収していって下さい。俺らのものを、自分のものにして欲しいと思っているだけです」と思いを語った。

 「もし勘違いしている人がいたら言葉ではなく音楽で訂正させて下さい」と、ミュージシャンとしてのアティテュードを強く打ち出し、ガラッとライブの雰囲気を変えた「ハロウィンの余韻(Redone)」を披露。ジャンルレスなオーラルを見せてくれた。あきらはサンプラー、雅哉もパッドを使用したエレクトリックなサウンドで、既存曲がクールに変貌。心地よい風が吹き抜けるなか、「僕は夢を見る(Redone)」で拓也は、この空間と一体化するかのようにステージ前方で両手を広げる。KAIRIとのコラボから、この2曲と“カッコいいものは何でも取り入れる”といった、フレキシブルなアティチュードを見せた瞬間だった。

みんなに寄り添えるなら…

あきらかにあきら(撮影=Viola Kam 【V’z Twinkle Photography)】)

 拓也はロックというものについて「俺は自分が弱いからロックを鳴らしています。だから誰よりも絶望、苦しみが欲しい。みんなに寄り添えるように悲しみがわかるように、誰よりも俺は苦しんでもいい。それが俺らのロックのスタイルです。死だって感じてもいい、みんなに寄り添えるなら…。今までもこれからも人と人とで生きてる。絶望を感じた時に素晴らしいものを生み出す力を俺は持っています」。

 その弱さを肯定するかのように投下された「5150」。オーラルの素直な感情をありのままにぶつけていけば、その想いに応えるかのように、盛大なシンガロングをステージに届けるオーディエンス。そして、拓也はガムシャラにマイクに向かって歌声を放つ。意識の共有を感じさせ、一体感は更に増していく――。ステージが真っ赤に染まる。人の闇の部分を露呈するかのような、強烈な一曲「PSYCHOPATH」、キラーチューン「狂乱 Hey Kids!!」と畳み掛ける。野外という開放的なシチュエーションも相まって、オーラルの勢いを肌で感じさせてくれるパフォーマンスに、会場は凄まじい熱気で満たされた。

 オーラル第2章の始まりにこの『PARASITE DEJAVU』は大切な役割を持っているという。「大切な人を亡くした時に後悔しないようにしてほしい。後悔するのではなく今を精一杯生きること。大切な仲間を失いました。俺はああしてやれば良かったなではなくて、あいつの分を受け継ごうと思っています。音楽が素晴らしいのはその人がいなくなっても、ずっと受け継がれることだと思う。それが音楽じゃないかな…」。

中西雅哉(撮影=鈴木公平)

 更に続けて「人間というのは不思議なものでずっとループしている、デジャブを見続けているんだと思う。出会うべくして出会った。運命とはそういうものだと思います。人と人との奇跡、それは音楽も一緒です。だからこの奇跡を一生掛けて守りたい。形は違えどまたあなた達に会いたい。また俺らの音楽に出会ってもらえますように、また来世でみんなと逢えますように――」と願いを込めた言葉から、出だしはアカペラによる「See the lights」を熱唱。ありったけの想いを歌と演奏に託し、満月が浮かぶ空へと響かせた。

 ライブも終盤戦。拓也は「みんなの愛を聞かせて下さい!」と投げかけ、披露された「LOVE(Redone)」では、<LOVE 一人で笑う事は出来ないという>を2万人でシンガロングで多幸感に満たされていく。拓也は目を潤ませながらも歌い上げ、絆で結ばれたオーディエンスたち溢れんばかりの愛に包まれた泉大津フェニックス。本編ラストはメロディアスで爽快なビートが印象的な「容姿端麗な嘘」。拓也は「最後にヤバイ光景を見せてくれ!」と、オーディエンスは身体を弾ませ、大きな盛り上がりを見せた。

 アンコールを求める手拍子に、雅哉がステージに登場し、ワンマン恒例の“まさやんショッピングのコーナー”へ。コーナー名を高らかにコール。雅哉は「大阪全土に響き渡ったような気がする」と、満足そうな笑顔。再び3人もステージに戻り、拓也は最近、ロックについて考えることが多くなってきたと話す。その中で「想定外のことをやっていくのが俺らなのかな。面白いことをやりたいので、これからも宜しくお願いします」とこれからの展望を話し、サプライズゲストにロザリーナを呼び込み9月6日にデジタルリリースされた「Don’t you think(feat.ロザリーナ)」をライブ初披露。

ライブの模様(撮影=Viola Kam 【V’z Twinkle Photography)】)

 光のコントラストが幻想的な空間を作り出し、拓也とロザリーナのハーモニーが儚いメロディをより美しく響かせた。MCではロザリーナが「Don’t you think」のMV撮影のエピソードを話す場面も。最後はメジャーデビュー5周年、初心を忘れないという意志を込めた「起死回生STORY」で『DAY1 ONE MAN SHOW』の幕は閉じた。最後に記念撮影をおこない、打ち上げ花火で感動のフィナーレを迎えた。

 メジャーデビュー当時からの夢の一つだった野外イベントは、彼らにとってはまだまだマイルストーンのひとつだが、すべては人との繋がりから生まれる“愛”という言葉が相応しいステージだった。表も裏もさらけ出した感情を音楽に乗せ、嘘のない姿を終始発信していくオーラル。第2章ではどんなことを提示してくるのか、期待感は高まるばかりだ。

セットリスト

『「PARASITE DEJAVU 〜2DAYS OPEN AIR SHOW〜」DAY1 ONE MAN SHOW』
9月14日@大阪・泉大津フェニックス

01.BLACK MEMORY
02.What you want
03.WARWARWAR
04.N.I.R.A
05.GET BACK
06.瓢箪山の駅員さん
07.LIPS(Redone)
08.ワガママで誤魔化さないで
09.カンタンナコト
10.DIP-BAP (feat.KAIRI)
11.ハロウィンの余韻(Redone)
12.僕は夢を見る(Redone)
13.5150
14.PSYCHOPATH
15.狂乱 Hey Kids!!
16.See the lights
17.LOVE(Redone)
18.容姿端麗な嘘

ENCORE

EN1.Don’t you think(feat.ロザリーナ)
EN2.起死回生STORY

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