株の初心者はどんな投資をすればいいのだろうか?カリスマ投資家の「Bコミ」こと坂本慎太郎さんが「初心者がやるべきこと」「やってはいけないこと」を伝授します(撮影:今井康一)

米中貿易戦争、日韓、英国問題、サウジアラビアへのドローン攻撃、そして国内では10月の消費増税と、株価にとってネガティブな要因は依然山積みだ。こんな時、プロの投資家は何に着目して、どんな投資先を選んでいるのか。Bコミのニックネームでもお馴染みの坂本慎太郎氏に、「銘柄選びのポイント」を聞いた。

個別企業に投資する場合の「鉄則」とは?

個別銘柄を選ぶ際には、業績が何よりも大事です。テクニカル分析はむしろ不要で、例えば、移動平均線に注目していて、(短期線が長期線を上から下に突き抜ける)デッドクロスが示現する直前まで保有していたら、すでに損切りに失敗してしまうこともあります。


確かに、株価指数先物取引やETF(上場投資信託)、FX(外国為替証拠金取引)などを売買する際は、テクニカルが有効となるケースも少なくありません。しかし、個別企業に投資するなら、まずは業績をしっかりチェックすることが大切です。

とはいえ、すでに業績がピークに達している会社の株式に投資しても、株価の値上がりはほとんど期待できません。その時点ではすでに大勢の投資家が群がり、天井近くまで買い上げられているからです。

「その事業をよく知っている身近な銘柄に投資する」という手法も有効ですが、投資家目線に徹しないと見誤ることもあります。ある個人投資家は、流行っている外食チェーンに行ってみて、トイレが気になり、投資を見送ったそうです。ただ、株価は上昇を続けてしまい、チャンスを逃してしまいました。投資家目線に立てば、トイレが汚くても客が入るということは「ブランド力があり、意識が低い店員がいても店は繁盛するくらい強い」ということでもあるのです。

私が注目するのは、やはり企業の業績です。そのためにも、これから注目度が高まると思われる業種やテーマを探します。そうすれば、業績がピークに達する前に投資できるため、株価の上昇余地も大きくなるからです。

なぜ「テーマ株」に安易に飛びついてはいけないのか?

ただし、テーマ株に投資する際には注意点があります。それは話題先行で買われている銘柄には手を出さないことです。ネットなどで急浮上テーマとしてはやされているものに手を出した場合、高値づかみをして取り残されてしまうリスクも大きいと思います。また、人気テーマのなかには、「量子コンピュータ」や「全固体電池」など、新しい技術が実用化され、実際に収益を生むまでには、5年、10年を必要するものが少なくありません。

ところが株式市場はニュースを先取りするため、新技術に対する噂が浮上すると、その技術が実際に使われるにはまだ数年先なのにもかかわらず、期待先行で「何々関連」とされる企業の株式に買いが集まりがちです。

つまり5年先、10年先に生じると思われる利益を織り込んで、株価が形成されてしまうのです。そのような銘柄を、特定のテーマの関連銘柄として買ってもいいのかどうか。このように、中長期投資家が犯してしまいがちな失敗は、収益を生むまでに長い年月がかかるテーマであるにも関わらず、中長期的な視点で銘柄を選んでいることを免罪符にして、数年先の利益をも織り込んで形成された高い株価水準の銘柄に投資してしまうところにあるのです。

このような期待先行の株価上昇は長続きしません。ちょっとした期待外れの材料が出た途端、一気に売りが出て株価が急落し、大損を被る結果になります。それでも強い意志でテーマの未来を信じて保有し続けられれば、どこかで報われることもあるかも知れませんが、大半の人は心が折れて売ってしまい、マーケットからの退場を余儀なくされます。したがってテーマ株に投資する場合は、しっかりした実需を持ち、地に足が着いている会社に注目するようにしています。

たとえば電気自動車関連の銘柄に投資するとしたら、私なら実際に電池の製造に関連している会社を選びます。なぜなら電気自動車が売れれば売れるほど、電池に対する実需が高まっていくからです。具体的に言うと、アメリカの自動車であるテスラ1台に搭載されている電池は500キログラム、日産自動車のリーフでも300キロもあります。そこで「電池の材料でもまだコモディティー化していない正極材や負極材、セパレーターなどを製造しているのはどこか?」という視点で、ひとつひとつ、企業の吟味をしていきます。

またセクター(業種)ごとの業績の伸び具合から、個別の銘柄に落としていくという方法もあります。今年度に比べて、来年度の業績見通しが大きく伸びる可能性のある業種はどこかをチェックし、そこから個別銘柄を見つけていきます。

こうしてテーマや業種から個別銘柄をピックアップしたら、それを「監視銘柄」として日々の株価の値動きをチェックするわけですが、もうひとつ忘れてはいけないのが、同じテーマでも外需関連と内需関連にグループ分けしておくことです。なぜなら株価を動かす外部要因として、為替レートの値動きが大きく影響するからです。

外需関連企業は、為替が円安になると利益が上がり、また内需関連企業は為替が円高になると利益が上がる。したがって、円安の時は外需関連を中心に、円高時は内需関連を中心にウォッチすれば、獲得できる投資収益を、より大きくできる可能性が高まります。

ただ、多くの人はこう考えたのではないでしょうか。「今後伸びるテーマを見つけたり、セクターごとの業績の伸びに注目したりするのが有効なのは分かった。でも、どのテーマが伸びるのか、どの業種の業績が伸びるのか、何で判断すれば良いのか?」

投資初心者に『会社四季報プロ500』が最適な理由

多くの場合、まずは『会社四季報』を開くと思います。四季報にも毎号「業種別業績展望」が掲載されており、業種毎の動きもチェックできるなどとても便利です。ただ、四季報を活用する際にはいくつか留意点があります。まず、全上場3744銘柄が掲載されているので、すべて読むとなるとかなりの時間を要します。ぎっしりとデータも入っており、そのなかから特に重要な情報を読み取るのには一定の慣れが必要です。つまり初心者が使いこなすには、いささかハードルが高いかもしれません。

そこで私が初心者にお勧めしているのが『会社四季報プロ500』です。全上場銘柄から500銘柄に絞り込んであり、私は毎号通読しています。株価の動いた理由を書き込んだチャートや銘柄特性、本命銘柄については「記者のチェックポイント」など、各銘柄に関する情報が詳述されています。

また、巻頭には最新号の注目テーマの解説と銘柄リストが掲載され、それに関連する企業がどこなのかも、細かく見ることが出来ます。各業種の今来期予想も掲載されているので、銘柄を選ぶうえで強い武器になるはずです。

さらに、全銘柄掲載している進捗率も参考になります。たとえば、この四半期では運送業界でも中堅企業で高進捗が目立ったのですが、ヤマト運輸の値上げの恩恵が周辺にも及んでいることが想像できます。こうした業種は注目してもよさそうです。

ただし、私は情報を集め、銘柄を絞り込んでも、すぐには投資しません。値動きの特性を把握するのと、ここから株価が上昇する理屈がつくれるかが重要だと思っているからです。投資する対象が見つかったら、複数の銘柄をバスケットにして、ウォッチし続けることが「勝利への近道」と言えるはずです。