『銀河英雄伝説』は、数千年後の未来を舞台に、銀河上での勢力抗争を描いた田中芳樹によるSF小説。累計発行部数は1500万部を超え、1988年から2000年にかけてアニメシリーズも展開した。

長いあいだ根強い人気を誇る本作を、新たにアニメ化したのが『銀河英雄伝説 Die Neue These』。2018年にTVアニメ(ファーストシーズン)が放送され、今年9月27日からはセカンドシーズンとして劇場にて全三章が上映される。

新作アニメーションの制作が発表された際、SNS上でキャストが誰になるのかと騒然としたのを覚えている。それほどまでに多くの人に愛された本作で、中心に立つのがラインハルト・フォン・ローエングラム役の宮野真守だ。

当然、大きなプレッシャーがあったことだろう。しかし彼は、絶大な信頼を寄せる音響監督・三間雅文をはじめ、真摯に原作と向き合う制作スタッフ・キャスト陣とともに、ラインハルトとして作品のなかで懸命に生き続けた。その経験は役者・宮野真守の誇りとなり、糧ともなったという。

幾多の出来事に感情を揺らすラインハルトの心の機微を、宮野はどのように感じ、捉え、演じたのか──その答えはスクリーンの中にある。

撮影/布川航太 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.

三間さんの現場は、キャラの在り方にシビアに向き合える

『銀河英雄伝説』の第1巻から順に新作アニメーションとして制作するプロジェクト『銀河英雄伝説 Die Neue These』。オーディションに臨むにあたって「ラインハルト役を絶対に勝ち取りたい」と思った理由とは?
作品の魅力はもちろんですが、制作スタッフの魅力も理由だったと思います。

なかでも、音響監督の三間さんとご一緒できるのが大きかった。これまでもご一緒した作品はありますが、毎回、三間さんからいただくものは非常に大きいんです。ですから、また主役の立場でガッツリご一緒したいと思っていたんです。

それに、三間さんにとっても『銀河英雄伝説』はとても大事な作品であるとうかがっていたので、そこで自分には何ができるのかを知りたかったし、体感したかった。
「三間さんからいただくもの」とは、具体的にどんなことでしょうか?
音響監督として、俯瞰で作品の世界観を捉えていらっしゃると思いますが、同時に、一人ひとりのキャラクターについて「なぜこんなにも奥深くまで人物像を捉えることができるんだろう?」と、いろんな現場で感じていて。

「この人だったら、こういう心情になるよね」とか「いまこの人は、こう考えているんじゃない?」という、ビジョンの持ち方がものすごく深い。そうやって三間さんと対峙していると、「僕は自分のキャラに対してすら、まだまだ考えが浅かった。甘かったな」って毎回痛感します。
「自分が演じるキャラクターのことを、もっと深く考えなくてはならない」と?
そうですね。三間さんとのやり取りで、自分がいちばんそのキャラクターのことを深く考えられるようにならなくてはダメだなと思わされます。「いま、ラインハルトはどう感じている?」と聞かれたら、ちゃんと答えられるように。

そのためには、どれだけその人物の人生を知ることができるか。そのうえで、どれだけその人物の感情になれるか。三間さんとの現場ではとくに、自分が演じるキャラクターの“在り方”に対して、シビアに向き合っていけるんです。

演じる役がどんなに非道でも「僕だけは味方でありたい」

2018年にTVアニメが放送されたファーストシーズンでは「ラインハルトとともに成長していけたら」とお話されていました。
まさにこれから上映される『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』で、ラインハルトの感情に揺らぎが起こってくるんですね。ネタバレになるので、詳しくお話できないのが心苦しいですが…。そこにこそ、彼の成長があると僕は思っているんです。
ご自身の役者としての成長はいかがですか?
当たり前ですが、自分ではない人物の人生を生きることによって「こういう思い、生き方、立ち方、見え方があるんだ」って、たくさん感じさせてもらったことでしょうか。

ラインハルトは、貴族がいて(ラインハルト自身も貴族)当たり前のように戦争がある世界に生きている。自分にはまったくないものを持っているし、まずはそこに行き着くことが、僕の役者としての最初の目的でした。

そうやって役に向かうことで、新たな考え方だったり、「あ、こういうふうに心が動いていくんだ」といった気づきがあったりするので、そういう意味でも役者としての成長・発見があったと思います。
「貴族であり、戦争がある世界に生きている」ことを想像するのは難しいように思えますが、たとえばご自身の日常で「こういう場合はラインハルトだったらどうするかな?」と考えることもあるのでしょうか?
作品によっては、ふとそう思ってしまうこともあります。ただ、僕が日常でどう感じるかよりも、原作や台本のなかで「ラインハルトがどう感じているか」を考えることに集中するほうが大事だと思いますね。

だから……日常生活で貴族っぽくワイングラスを回すとか、「プロージット!」ってワインを飲み干してからバリーン! ってグラスを割ったりすることもないですよ(笑)。
※ラインハルトと将たちが「プロージット!(ドイツ語で「乾杯」)」とワイングラスを掲げ、飲み干したのちにグラスを床に投げつける、『銀河英雄伝説』の名シーン。
彼に共感する部分はありますか?
僕にとっては「否定がない」というのが近いのかもしれないです。「あ、ラインハルトはこうなんだ」と肯定して、そこに共感していく感じかな?

だから、共感と共通が違うとしたら……ラインハルトに僕が抱くのは“共通”ではないんです。僕は彼のような人生を歩んでいないし、僕の性格と共通している部分があるわけでもないかもしれない……。「ラインハルトはこうやって生きていくんだ」って、“共感”することを探すほうが大事なんだと思います。
彼の生き方に、感銘を受けた部分はありますか?
つらい思いをしたときに、そこで負けるのではなく、「じゃあ自分が(体制や制度を)変えてやる」と立ち上がる姿勢を尊敬しています。さらに、自分が帝国を支配するビジョンも描いている。その心の強さや大きさ、自信、信念を貫き通す強さは本当にスゴいと思います。
信念を貫き通すラインハルトは、別の角度から見ると“冷酷”と映ることもあると思いますが、宮野さんはどんな作品の役柄でも“肯定する”ところから入るのでしょうか?
そうですね。たとえば、非道なキャラクターを演じることがあったとしても、非道なことをする理由を探したい。その人物の正義・正当性を探したいと思います。「僕だけは、その人物の味方でありたい」というか。

まあ……僕はこれまでたくさん地球を救ってきましたが、たくさん世界も脅かしてきたので(笑)、いろんな思いがありますね。

オーディションで緊張する梅原裕一郎の姿に「かわいい!」

さまざまな世代が集うアフレコ現場だったと思いますが、雰囲気はいかがでしたか?
非常に独特な空気感でした。とても素敵なおじさまばかりが登場する作品なので、先輩方も多くて。そういった方々とご一緒できる機会はなかなかありませんし……。ラインハルトが作中でおじさまたちに「若造」と言われているように、僕のような「若造」としては本当にありがたかったですね。

つねに集中力をもって臨まないと、みなさんに食われてしまうような独特の緊張感がありました。ラインハルトとして「負けられない」という思いにもなれましたし、必然的に「自分の野望や目的に向かってまっすぐ進もう」という気持ちになれたような気がします。
現場の中心に立つうえで、意識されたことはありますか?
もはや、「みんな俺についてこいよ!」っていう現場ではないので(笑)。どれだけラインハルトに集中できているかを、自分の芝居できちんと周りに見せることが、“作品を背負う”ことにつながるんじゃないかと感じていました。

それに、ヤン・ウェンリー役の鈴村(健一)さんがいてくれることで、中心も変わりましたから。ファーストシーズンのときはとくに、(ヤン率いる)自由惑星同盟軍と(ラインハルト率いる)銀河帝国軍の話が別々で進んでいたので、僕が現場にいないときもあったんです。

僕が現場をまとめるよりも、僕と鈴村さんが、ラインハルトとヤンというふたりの天才をどれだけしっかりと芝居で見せられるかが重要だったと思います。そういう意味で、鈴村さんの存在は大きかったですね。
ラインハルトを語るうえで欠かせないのが、親友のジークフリード・キルヒアイス(声/梅原裕一郎)ですが、彼らの関係をどのように感じますか?
ラインハルトの根底にある「姉を救うために天下をとる」という思いを唯一、分かち合うことができるのがキルヒアイス。ただの友達でもないし、家族でもない、それ以上の……自分自身みたいな。心のつながりがある存在だと思うんです。

ただ、目的や思いは同じとはいえ、ラインハルトとキルヒアイスは性格的には違います。苛烈な感情を持つラインハルトは、キルヒアイスがいてくれるおかげで冷静になれるし、逆を言えば、彼に甘えられるから苛烈になれるのかもしれないし。

「自分が間違っても、キルヒが正してくれる」という信頼、安心があるからこそ、ラインハルトは前へ進むことができるんだと思います。
そういったふたりを演じるなかで、梅原さんとの信頼関係も強くなっていった?
それはあると思いますね。梅原くんとガッツリとタッグを組むのは初めてでしたが、この作品を通して、言葉を交わす機会がどんどん増えていったので。

別の現場で会ったときも、以前とは違うつながりを感じる瞬間がありました。
新たに知った、梅原さんの一面はありますか?
以前は「シュッとしてんな〜」って思っていましたが(笑)、いまは「あ、繊細な子だったんだ」って。イメージはあんまり変わりませんが、内面をもっと知った感じですね。

オーディションのとき、梅原くんはずっと台本を見てブツブツ言ってるんです。「緊張してるの?」って聞いたら、「緊張してますよ!」って。「梅ちゃん緊張するんだ!? 僕と一緒だねえ!」なんて言って(笑)。

何だか梅ちゃんって、平然とやってのけそうなイメージじゃないですか。それなのに、ガッチガチに緊張していたのが「梅ちゃん、かわいいじゃねえか!」って(笑)。

収録を終えて、「僕らの『銀英伝』が作れた」と実感できた

9月27日から『銀河英雄伝説 Die Neue These』のセカンドシーズン「星乱」が、4話ずつ全三章で上映されます。
原作をご存知の方はピンとくるかもしれませんが、「星乱」の最後のほうに決定的なシーンがあるんですね。そのシーンが終わったあとに三間さんと言葉を交わしましたが、そこで、「僕らの『銀英伝』が作れたんだな」と実感したように思いました。

やはり新たに『銀英伝』が制作されることでプレッシャーも大きかったんですが、「ちゃんと自分たちの『銀英伝』になったんだな」と思えるような言葉をいただいたので、最後の最後に大きな自信をもらえた気がしました。いまの自分にできることを最大限、表現できた自信はありますね。
それは見るのが楽しみですね。
セカンドシーズンまでの24話って、原作の小説でいうと2巻ぐらいまでなんです。それくらい丁寧に、原作をリスペクトして作られているからこそ、登場人物たちの心の機微をしっかりと見せることができる。

今回は、TVアニメシリーズから続いて毎週収録してきましたが、収録のたびに鈴村さんと「やっぱり『銀英伝』って面白いよね!」って話していて。本当に、彼らの生きざまに感銘を受けるんです。

なので、ご覧になられるみなさんにも彼らの生きざまを存分に感じていただければ、この世界観に魅了されること間違いなしだと思います。
本作に参加して、宮野さんが得たものとは何でしょうか?
ん〜そうだなあ……(と、楽しそうに考える宮野さん)。言葉にするのも難しいし、文字にするともっと難しいかもしれませんが、やはりこの「超大作」と呼ばれるほどの作品の真ん中にいられることが誇らしいですね。

そういった役割を背負えるということは、役者として……プレッシャーも大きいですが、喜びのほうが大きいというか。
その思いを持って、またほかの作品にも臨んでいける?
そうですね。仲間や先輩方、信頼する監督といったみなさんから刺激をいただいてお芝居ができたことは、自信につながりますし、役者としての糧になっていくと強く実感しています。
宮野真守(みやの・まもる)
6月8日生まれ。埼玉県出身。B型。主な出演作に『DEATH NOTE』(夜神 月役)、『デュラララ!!』シリーズ(紀田正臣役)、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズ(一ノ瀬トキヤ役)、『ちはやふる』(真島太一役)、『亜人』(永井 圭役)、『文豪ストレイドッグス』(太宰 治役)、『さらざんまい』(新星玲央役)など。2008年にアーティストデビューし、5月に17thシングル『アンコール』をリリースした。

作品情報

『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』
第1章 9月27日(金)
第2章 10月25日(金)
第3章 11月29日(金)
全三章 各3週間限定劇場上映
http://gineiden-anime.com/
©田中芳樹/松竹・Production I.G
配給:松竹メディア事業部

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、宮野真守さんのサイン入りポラを抽選で2名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2019年9月25日(水)12:00〜10月1日(火)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/10月2日(水)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから10月2日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき10月5日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
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