アフリカ共和国の経済の中心地はヨハネスブルグ。写真はイメージ(写真:iStock/THEGIFT777)

8月下旬、第7回アフリカ開発会議(TICAD)が横浜市で開催された。安倍晋三首相はアフリカを従来のように政府開発援助を通して資金提供するだけの地域ではなく、投資対象として扱うべきだと民間投資を促した。


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投資を決定する場合は、どれだけの利益が見込めるかというリターンだけでなく損失がでるリスクも念頭に置くのが一般的だ。アフリカ諸国は人口増加率が高く、消費購買意欲のある若者が多いという人口ボーナスも効く。経済成長の余地があるため期待されるリターンは高い。

だが、不安定な経済状況や政局のため、リスクも非常に大きく民間投資は政府の思惑どおりに伸びてこなかった。そのリスクを減らす試みとして、政府系の日本貿易保険(NEXI)は、アフリカに進出する日本企業をインフラ輸出などの費用全額を保証することで支援することを示した。

ランキング1位はトヨタ自動車の販売を行う豊田通商

このように、アフリカビジネスを始める環境は整いつつあるが、現時点ではどの会社がアフリカのどこの国に進出しているのだろうか。東洋経済オンラインではアフリカへの日本企業の進出状況を「海外進出企業データ」を用いて調査した。

調査方法は日本企業ごとにアフリカ大陸の現地法人にいくつ出資しているかを数えた。出資企業として見なす範囲は出資比率が2番目以内に入っていることとしている。上場企業だけでなく、アフリカでビジネスを展開している有力な未上場企業も含まれている。

アフリカ大陸に最も多く進出している企業は、トヨタ自動車や同社部品を扱う豊田通商で、11社の現地法人に出資している。同社は長年にわたりアフリカに進出しているが、近年アフリカを中心にビジネス展開するフランス系大手商社CFAOを完全子会社化したことにより、アフリカ全域へのネットワークを得た。

出資している現地法人の5社が南アフリカにあり、自動車販売だけでなく鉄鋼の加工から関連製品の生産支援に至るまで一連の工程を担っている。また、トヨタ自動車もランキング10位に入っていて、自動車の組み立てを行う現地法人に出資している。


このほかにも、自動車に関連する企業として3位に日産自動車、4位にワイヤハーネスを作る住友電装、6位に自動車用部品を製造する矢崎総業、10位ホンダがランクイン。

アフリカでは、自動車関連産業が多く進出していることがわかる。

2位の住友商事はアフリカで主に採掘事業とインフラ関連ビジネスに従事している。採掘事業ではマンガン鉱石の採掘事業を手がけるアソマン社と長年取引をし、鉱石を日本などに販売してきた。

さらに、商社の中では最大級の資源プロジェクトをマダガスカルで行いニッケル、コバルトを生産している。また、発電所や変電設備の導入などのインフラビジネスも南アフリカで手がけている。

経済成長に不可欠なインフラを整備することで、より多くの企業が進出することできるようになり今後の安定的な経済発展を期待できる。

日系現地法人は南アフリカに集中

国別に現地法人数をみるために20位までで現地法人が多い国をランキングした。

1位の南アフリカが86社で、最も多くの企業が集中していることがわかる。2位のエジプト、3位のモロッコと合わせると上位3カ国だけで128社に及ぶ。アフリカ全体で204社なのと比べると、半数以上が上位の国に集まっている。特徴として海に面している国が上位に集中しており、他国との貿易がしやすい場所に多くの日本企業が進出していることがわかる。

アフリカとひとくくりにしても資源を持っている国や海運など、地の利を生かすことができる国とそうでない国がある。開発援助ではなく民間投資としてリターンを求める以上、投資機会のある一部国や業種へ集まることは避けられないが、アフリカ全体の発展という意味で考えると、この偏りを解決していく必要があるだろう。