韓国政府のGSOMIA破棄を伝えるテレビニュースをみるソウル駅の市民(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

韓国大統領府は8月23日、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を終了させるとの韓国政府の決定に対し、アメリカ側が強い憂慮を表明したことは当然だとの立場を表明した。

韓国大統領府の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長は記者ブリーフィングにおいて、「アメリカ側が韓国にGSOMIAの延長を期待してきたことは事実だが、アメリカが表明した失望はアメリカ側の希望が満たされなかったことによるものであり、失望したと述べたことは当然のことと思う」と述べた。

ポンペオ国務長官は韓国の決定に「失望」

これに先立ち、アメリカのポンペオ国務長官は「われわれは韓国の決定に失望した」と、GSOMIA終了決定直後に明らかにしていた。国防総省もイーストバーン報道官が「強い憂慮と失望を表明する」と発表した。

GSOMIAに関するアメリカと韓国との協議について、金次長は「韓国政府はあらゆるレベルにおいてアメリカと緊密にコミュニケーションを取り、協議を行うなど韓国の立場を説明してきた。7〜8月だけでも、両国の国家安全保障会議で9回、電話協議が行われた」と説明した。

また、「ホワイトハウスとはほぼ毎日コミュニケーションを取っており、7月24日にホワイトハウスの高官がソウルを訪問した時にも、この問題を協議した」と付け加えた。

金次長は「重要なことは、今回の決定が韓米同盟がさらにアップグレードできる契機になるということだ」と述べた。2016年11月に締結されたGSOMIAが終了し、今後は安保関連の軍事情報不足になるのではないかとの心配に対して、「2014年12月に締結した韓米日3国間情報共有約定(TISA)を利用し、アメリカを媒介にする3国間の情報共有チャネルを積極的に活用していく」と説明した。

また、「韓国政府は今後、国防予算の増額、軍事偵察衛星など戦略資産を拡充することで、韓国の安保力強化を積極的に推進していく」と付け加えた。

一方で、アメリカ政府の消息筋は、GSOMIA終了を決定したことをアメリカが理解しているとした韓国大統領府関係者の説明を否定し、これについて韓国側に抗議したことを明らかにしている。

韓国の政界では、大統領府の今回の決定に対し、野党が強く反対している。者国(チョ・グク)法務相内定者に関するスキャンダルが拡大しており、これを沈静化させるためにGSOMIA終了を決定したのではないかと、野党側は強く反発している。

者氏はこれまで、大統領府の民情首席秘書官を務め、8月9日に法務相に内定されたが、娘の大学入学や不動産売買に関して不正を指摘されるなど大問題になっている人物だ。民情首席秘書官とは、政府高官の監視と司法機関を統括するポストでもある。

GSOMIA破棄で喜ぶのはどの国か

自由韓国党の黄教安(ファン・ギョアン)代表は8月23日、国会で「GSOMIA破棄に北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は万歳を叫び、中国とロシアは祝杯をあげて喜んでいるだろう。文在寅大統領が本当に国益を考えているならば、GSOMIAではなく(2018年9月の平壌での南北首脳会談の際に署名された)板門店宣言軍事分野履行合意書を破棄すべきだ」と述べた。

黄代表は「百害無益で自害行為以外の何物でもない決定を下した理由は、結局、者内定者の内定辞退を求める要求が高まっている中、そのような世論を弱めるために破棄を決定したものだ」と付け加えた。さらに、「現在の政権は二重人格で詐欺、偽善を行う人物である者国という1人を守るため、大韓民国の国益を捨てようとしている。韓国の国内政治のために、安全保障と外交まで犠牲にさせた大韓民国を破壊する行為だ」と述べた。

これに対し、与党「共に民主党」は「GSOMIA以降の情報交流はそれほど多くなかった」と指摘し、安保への危機を訴える自由韓国党の姿勢は問題だと指摘した。同党の李海瓉(イ・ヘチャン)代表は記者会見で、「自由韓国党の批判姿勢そのものが問題。原因と当事者のことを考慮せず、ただ非難する新たな親日派のような話はやめるべきだ」と述べた。さらに、「そんな姿勢を続ければ続けるほど、自由韓国党は親日派的な枠組みから抜け出すことができない。国民がそんな姿勢を目の当たりにすれば自由韓国党の人間は親日派に近いと見るだろう」と述べた。

また、李代表は「常識的に考えて、者氏の問題は国会の聴聞会で議論されるべき問題だ。一方でGSOMIAは、東北アジアの安全保障に関連したものであり、問題の次元が違う。者氏は法務相内定者であって、国防省や外務省の大臣候補でもない。そんな判断も思考もできなければ、政治をしないのがましだ。かえって政治に害となる」と付け加えた。(ソウル新聞2019年8月23日号)