東京都世田谷区桜新町といえば、国民的アニメ「サザエさん」(フジテレビ系)の街として知られる。作者で国民栄誉賞を受賞した故・長谷川町子さん(1920〜1992年)にちなんだ「長谷川町子美術館」があるほか、駅周辺にはサザエさん一家の銅像などが立ち並ぶ。

J-CASTニュース記者は2019年8月23日、取材を兼ねて東急田園都市線・桜新町駅に降り立った。過去にも何度か訪れたことがあり、世田谷区という閑静な住宅街にもかかわらず、下町風情の残る温かいイメージだ。いつものように銅像の脇を通ろうとすると...あっ! 波平さんの大切な「1本毛」がないではないか!

1本なのに...ドライヤーをあてる波平さん

波平さんといえば、磯野家の家長である。サザエとカツオがケンカした時や、カツオが悪さをした時には「バカモン!!」と言って雷を落とすシーンが定番だ。そんな波平さんが大切にしているのが、頭頂部に生えている1本の毛。とあるシーンでは、洗面所で鏡を見ながら、丁寧にドライヤーをあてる描写などもある。

実は「銅像」波平さんの毛は、過去にも何者かによって抜かれた...として、大々的に報じられたことがあった。その際には「犯人は誰だ!」、「防犯カメラは付けないのか?」といったことが物議をかもした。

今回もまた、同じことが起こったわけだが、桜新町商店街振興組合の広報担当・佐藤昌人さんの答えは違っていた。佐藤さんは、

「今回、気付いたのは、お盆ぐらいですかね。でも私を含め、桜新町商店街の人間はサザエさん一家とともに生きています。波平さんも同じで、変な言い方ですが『生きている』と思っているんですよ。そう思えば、抜けた毛はまた生えます。そんなもんでしょ(笑)」

と予想外の「神対応」な答えだった。

ケガをしないため、あえてワイヤーに

ちなみに駅前のサザエさん一家は、すべて銅で作られている。しかし波平さんの「1本毛」だけは、ワイヤーを頭頂部にねじ込むような形なのだそうだ。佐藤さんは、

「もちろん、ほかの家族と同じく銅で...という話もありましたが、波平さんのたなびく『1本毛』だけは、どうしても雰囲気が出ない。仮に銅にしたとして、子どもが触って、刺さったりしても危ないですしね」

さすが、サザエさんの街。周囲への気配りを常に忘れない。

また、波平さんの初代声優だった永井一郎さん(2014年没)が亡くなった時には、銅像の前に誰言うとなく花が手向けられた。献花の数は、知らず知らずのうちに増えて行ったのだという。

佐藤さんは、

「もちろん、銅像そのものがハンマーで壊されたとなれば問題ですけど、波平さんの毛で『犯人は誰だ?』とか追求するつもりはありません。サザエさんが大好きなお子さんが、興味本位で触ってしまうケースもありますし。でも抜けた毛は、必ず生えてきますから!」

同商店街では、銅像を乾拭きするなど「サザエさん」一家を家族同様、大切に扱っている。

(J-CASTニュース編集部 山田大介)