オフィスワーカーの胃袋を掴んだエジプトめし、「コシャリ」。まだまだ一般的ではないこのフードを日本に広めるために店主が奮闘中!

ランチの定番に急上昇!? エジプトの国民食「コシャリ」

都内某オフィスビルの前。キッチンカーが並ぶお昼時、ひと際目を引く青いバンにオフィスワーカーたちが長い列をなす。列に並ぶ客の大半が常連のようだ。バンには「エジプトめし コシャリ屋さん」の文字。「コシャリひとつ!」と慣れた様子でオーダーし、トッピングをその場でサッと振りかけていく。

「コシャリはエジプトの国民食。現地には日本の牛丼店やラーメン店のようにそこら中にお店があって、エジプトの人たちは朝昼晩を問わずいつもコシャリを食べているんです」。そう語るのは、店主の須永司さん。

須永さんがコシャリのキッチンカーを始めたのは3年前。もともと電機メーカーの営業マンとして働いていたが、「30歳を過ぎたとき、やりたいことを死ぬまでにしよう、後悔しないように生きよう、自分で何か事業を興そうと考えて」、勤めていた会社を退社。

コシャリ 700円

そんななか、ひとり旅で訪れたエジプトでコシャリと運命の出会いを果たす。

「“今まで食べたことがない味で何だかわからないけれど、とにかくおいしい!”というのがコシャリの第一印象でした。日本では誰もやっていないし、これなら面白いのではと、コシャリ屋さんを始めようと決意しました」

とはいえコシャリに関して何の知識も情報もない。そこで現地の店に片っ端から飛び込んで、コシャリ作りを教えてほしいと直談判。けんもほろろに断られ続けたが、ようやく受け入れてくれたのが地元の名店「LUX」だった。片言の英語でコミュニケーションを取りながら、2ヶ月間の修行を積んだ。

「何しろ現地では食材から調味料まで全てが目分量(笑)。塩も手でざっと入れたりしているんです。教えてもらったというよりも、見て覚えたという感じでした」

炒めたパスタをお米と合わせたエジプトピラフにマカロニをのせ、トマトソース、フライドオニオン、ヒヨコ豆をトッピング。それらを全てかき混ぜて味わうのが現地流。ピラフの素朴な味わいにオニオンの食感、トマトソースの酸味が絶妙にマッチ。親しみやすい味わいで、ボリューミーながらモリモリ食べられる。

お好みでパルメザンチーズ、自家製ホットソース、レモンビネガーをプラスして。エジプトのレモンビネガーはにんにく入りだが、日本ではあまり好まれないのでそこはカット。現地のレシピを基本にしつつ、柔軟な発想でより日本人が受け入れやすい味に仕上げている。

エジプトの国民食コシャリを日本でより多くの人に知ってもらうために

作り方はわかっても、日本でそれを再現するのは難しい。材料の調達からまず手こずった。

「何より苦労したのがトマトソースです。エジプトのトマトは味が濃く世界一おいしいといわれていますが、日本ではなかなか手に入らない。かといって日本のフレッシュトマトを使うと味が薄くなってしまう。そこで試行錯誤して最終的に行き着いたのがトマト缶。あと隠し味に和の素材を使っています。義理の兄が割烹料理店の料理人で、いろいろアドバイスをもらってこの味に行き着きました」

温たまコシャリ 800円。温泉卵をくずして食べればまろやかに。こちらは須永さん考案のオリジナル。

「コシャリといっても日本では誰も知らないし、お店で待っていても誰も来てはくれないでしょう。ならばキッチンカーで自分から動いてそのおいしさと魅力を知ってもらった方がいいと考えたんです」

実店舗ではなくキッチンカーを選んだのもひとつの戦略だったという。曜日ごとに別の都内のオフィスビルを訪れ、ランチタイムに販売。口コミで客は徐々に増え、今では出店するたびに訪れるファンもついてきた。実店舗の展開も見据えているという須永さん。その先の野望とは?

「少しでも多くの人にコシャリを知ってもらいたい。日本で牛丼に取って代わる食文化のひとつにするのが僕の野望。そしてゆくゆくは、カップラーメンのように身近な料理にしたい。いつでもどこでもコシャリが食べられるようになればと思っています」

誰でもどこでも食べられる、エジプトの定番を日本でも。須永さんの奮闘は今日も続いている。

※価格は税込

エジプトめし コシャリ屋さん

http://koshary-yasan.hungry.jp/

出店情報は上記HPで確認を。

文:小野寺悦子

撮影:石渡 朋