イギリスで起こった産業革命や、近年のIT革命で世界の産業構造が大きく変化したように、それぞれの時代で大きく伸長した業種がある。

 世界的に見てもそうだが特に日本においては、高度経済成長期などを経て製造業が大きく伸び、また2000年前後からそれ以降は、IT産業を含むサービス業が急拡大し同時に企業数も増えた。

 一方で、斜陽産業という言葉があるように、需要の落ち込みや事業の将来性を見いだせず倒産・休廃業件数が増加した業種も確かに存在する。各時代によって消費者が求めるモノは違うため、常に変化する顧客のニーズを汲み取るのが難しい業種もあるようだ。

 このように、業界環境が好調な業種は企業数が一定数あり増加傾向で推移するが、その逆もまた然り。そこで今回、帝国データバンクが保有するCOSMOS2データから3つの業界を例に挙げ、約30年間における社数の推移を追った。

社数減少は“あの業界”

 数多くある業界のなかで、最初に調べるのは「百貨店」。

 1904年(明治37年)に三越の前身、三越呉服店が「デパートメントストア宣言」を発表してから早115年。以前は、“何でも揃う街のシンボル”として存在し、90年時点での百貨店経営業者の社数は231社だった。

 しかし以降は、231社→152社(2000年)→103社(2010年)と減少し、直近2019年7月時点では91社と、とうとう2ケタにまでなってしまった。

 また、2017年には仙台市で「さくら野百貨店 仙台店」を経営していた(株)エマルシェが破産。昨年末には、鳥取県で「鳥取大丸」を経営していた(株)ティー・ディーが事業を別会社へ譲渡し特別清算となるなど、近年は百貨店の勢いが衰えつつあることが示唆される倒産事例も発生している。

 社数が減少しているのは、「百貨店」だけではない。「スーパーストア」も同様に減少の一途をたどっている。1990年から2000年は1,719社→1,941社と増加したものの、それ以降は1,941社(2000年)→1,222社(2010年)→759社(2019年7月時点)と大きく減少。

 今年の1月には広島県で「マダムジョイ」を経営していた(株)広電ストアが事業を別会社へ譲渡し特別清算となった。ここ数年、地場でスーパーストアを展開している企業の倒産も目立っている。

 社数が減少している背景として、「百貨店」はEC市場の拡大やファストファッションの台頭など、「スーパーストア」は大型商業施設の進出やドラッグストア・コンビニとの競合などが考えられる。

 新たなサービスが次々と登場し、顧客の購入する際の選択肢が増えているなかで、“これらの業界”は顧客に選ばれなくなってきた――というのは言い過ぎだろうか。

社数増加業界は?

 一方で、社数を大きく伸ばしている業界もある。

 情報インフラ開発やゲーム開発が含まれる「ソフトウェア業」だ。1990年は5,052社だったが10年後の2000年には11,413社と倍増。その後も17,917社(2010年)→22,645社(2019年7月時点)と増加している。

 90年代からインターネットが急速に広まり、今では私生活とビジネスの双方で必要とされている「ソフトウェア業」はやはり社数が増加していた。

 帝国データバンクの調べでは、平成時代の約30年間で製造業や卸売業の構成比が縮小した半面、IT産業などが含まれるサービス業は大きく伸長したことが判明している。

 今後もビッグデータやAI(人工知能)など先端技術の開発によりIT産業の躍進は続くが、それにより規模縮小を余儀なくされる業界も増えてくるだろう。令和時代では各業界の社数に大きな変化が見られるのか否か、市場の動向に注目したい。