道路交通法第24条で急ブレーキが禁止されている

 よく燃費に良い運転や雪道など滑りやすい状況での安全ドライブには「急の付く動作はやめよう」という。急ブレーキ、急発進、急加速、急ハンドル……などなど“雑な運転”は百害あって一利なしですよという戒めだが、そうした急の付く運転は違反行為でもあるという。果たして、どのような違反に問われるのだろうか。

 アクセル、ブレーキ、ハンドル操作それぞれに急の付く運転はできるが、道路交通法で明確に禁じられているのは「急ブレーキ」だ。道路交通法第24条に急ブレーキの禁止が明記されている。『危険を防止するためやむを得ない場合を除き(中略)急ブレーキをかけてはならない』と書かれている。危険を防止するというのは、衝突や路外逸脱などの事故を回避するための運転と理解できるので、基本的には後方の車両を驚かせたり、追突につながったりするような急ブレーキを禁止するという狙いだろうが、法律というのは文言をそのまま理解するものだ。この第24条がある限り、単独走行中の急ブレーキも禁止といえる。

 ただし、急ブレーキと書いてあるだけで減速Gなどの規定があるわけではないため、違反運転なのかどうかは現場の警察官などの判断によるところになろう。一説にはABSが作動するような操作は急ブレーキともいうが、雪道などではゆっくりとした減速でもABSがガガガッと作動するわけで、ABSを基準に急ブレーキと判断するというのが基準となることは考えづらい。いずれにしても急ブレーキは道路交通法で明確に禁止されているのは間違いない。しかしながら“やむを得ない場合を除き”という条件があるのも事実。危険回避のために急ブレーキをかけることを躊躇する必要はない。

いずれの行為も正当な理由があれば違反にならない

 さて、そのほか急の付く運転については、道路交通法で明確に禁止はされていないといえる。ただし、交通事故を起こしたりすると、安全運転義務違反や危険運転に問われる可能性は否定できない。また、複数台で急ハンドルや急加速を繰り返していると共同危険行為として摘発される可能性はあるだろう。いわゆる暴走族として取り締まりを受けることになる。ただし共同危険行為は複数台でなければ成立しないので、単走で急ハンドルや急加速をしている分には、少なくとも共同危険行為には当たらないのも事実だ。

 また、道路交通法には騒音運転等違反という条文もあるため、公道での空ぶかしやバーンアウト、サイドターンやドリフト行為も違反に問われる可能性がある。ただし、こうした行為に対しても禁止される場合は「正当な理由がなく」という条件がつく。スタックしてしまってタイヤが空転しているからといって即違反というわけではない。

 結論からいえば、急ブレーキの禁止は道路交通法で明記されているが、それ以外の行為については安全運転ではない、騒音がうるさいといった主観的な判断によって違反となるというのが現実だ。もっとも、急ブレーキであるかどうかの判断も主観によるものといえば、それまでだが。そして、いずれにしても事故回避など正当な理由があれば違反行為にはならないのである。

 とはいっても、急が付く運転はクルマを傷めてしまう。急ブレーキや急発進などタイヤがスキール音をたてるような運転はタイヤが減りやすい。また、MTで急発進を繰り返しているとクラッチが傷んでしまうし、急ブレーキではブレーキパッドなどが減ってしまう。急ハンドルはボディへの負担もかかるし、ブッシュ類も傷みやすくなる。モータースポーツの現場で1000分の1秒を争っているのであれば、そうも言っていられないが、公道で走るぶんには不要な負担をかけて愛車を傷めるメリットはない。

 繰り返すが、事故を回避するために急の付く運転をしなければいけないこともあるだろう。だが、それ以外のときに公道で急ブレーキや急ハンドル、急加速や急加速をするのは愚の骨頂だ。