高齢者講習の受講が必要になるのは70歳から

 日本の人口ピラミッドにおけるボリュームゾーンである、いわゆる「団塊の世代」が高齢者と呼ばれる年齢になっていく。交通事故を起こしやすいとされる高齢ドライバーの絶対数が増えるということで、その対策は急務だ。すでに高齢者講習というカタチで70歳以上のドライバーが運転免許を更新する際には、特別な講習メニューを受けるようになっているが、はたして高齢者講習は危険なドライバーを見つけるフィルターとして機能しているのだろうか。その実施内容をあらためて見ていくことにしよう。

 まず、高齢者講習が必要になるのは70歳から(運転免許証の更新期間が満了する日における年齢が70歳以上になる人が対象)で、それはどんな種類の運転免許であっても変わらない。

 また受講期間は免許の有効期間が満了する日の6か月前から有効期間が満了する日までとなっている。その間に、講習に対応している自動車教習所で高齢者講習の予約を行ない、講習を受けなければ運転免許の更新ができないという仕組みだ。その内容は、座学・運転適性検査(60分)と実車(60分)というもので2時間みっちりかかる。ただし、農作業車などに必要な小型特殊免許だけを所有している高齢者は座学・運転適性検査だけの1時間で済む。ちなみに手数料は5,100円(小型特殊のみは2,250円)となっている。

検査結果次第では診断書が必要となる

 しかし免許更新時に75歳を超えると、上記の高齢者講習の前に「認知機能検査」が加わる。30分(750円)という短時間のテストになるが、その内容は「検査時の年月日、曜日及び時間」、「16種類の絵を記憶し、何が描かれていたかを回答」、「時計の文字盤を描き、指定された時刻を表す針を描く」といったもの。この内容だけを見ると、誰でもクリアできそうに思えるが、ある程度の認知症になっていると、こうした課題をクリアすることは難しい。年月日の不明瞭などは認知症の判断として、よく用いられる質問だったりする。そして、この筆記試験によって3段階に振り分けられる。

「記憶力・判断力に心配ありません」という判定結果を受けると、70〜74歳と同様に2時間の高齢者講習によって運転免許を更新することができる。しかし、「記憶力・判断力が少し低くなっています」という判定結果を受けると、通常の高齢者講習に個別指導もプラスした3時間の講習を受けなくてはならなくなる。さらに「記憶力・判断力が低くなっています」という判定結果を受けると専門医に受診して、受検又は診断書の提出が必要になる。その内容を運転免許本部で精査した上で、運転が可能と判断されれば3時間の講習を受けることで運転免許の更新が可能になる。

 つまり、75歳を超えると筆記試験の段階でフィルターがしっかりと機能して、運転免許を更新したいのであれば、かならず専門医にかからなければいけないのだ。実際、この「認知機能検査」によって「記憶力・判断力が低くなっています」と判定された知人のなかには、専門医を受診した結果、認知症と判断された人もいる。認知症と判断されると運転免許が更新できないだけでなく取り消し処分となることもある。

 高齢者講習によって完璧に危険なドライバーをフィルタリングできているとはいえないだろうが、けっして形式的なものではない。少なくとも専門医によって認知症と判断されるレベルであれば、高齢者講習の仕組みのなかで運転免許を更新できないようにストップすることが可能となっているのだ。