法務省出入国在留管理庁は2日、4月から始まった新しい在留資格「特定技能1号」の4月から6月までの在留外国人数を初公表した。4業種で20人が特定技能で雇用され、このうち農業分野ではカンボジアの2人にとどまった。農家からは、許認可が滞っているなどとして不満の声が出ている。

 特定技能の初認定は大阪府で雇用される農業のカンボジアの2人。6月までに4業種でカンボジア、ベトナム、タイの20人が「特定技能1号」で在留する。働く地域は富山1人、岐阜11人、京都1人、大阪2人、兵庫5人。外食、漁業、介護など10業種はゼロだった。

 同庁によると、7月末までの特定技能の申請者は600人で、申請には至っていないが特例措置で技能実習から特定技能への移行を目指す外国人は500人を超す。ただ、書類不備などで現時点で許可された人は1割以下だ。受け入れ企業に代わり外国人労働者を支援する登録支援機関は7月末時点で1526。

 政府は農業では初年度、最大7300人の外国人労働者が雇用される可能性があるとし、5年間で最大3万6500人を見込む。同庁は「制度が浸透していないため、特定技能の許可まで到達するケースが少なく、時間を要している面はある」としている。

40超す書類調整は難航


 和歌山や群馬などの25ヘクタールでネギやレタスなどの露地野菜を栽培する農業生産法人「GFF」(大阪府岸和田市)は、特定技能1号に認定されたカンボジアの2人を雇用する。2人は2016年にGFFの技能実習生として研修を始めた。2号の実習期間が終わるため同社が申請し、新ビザに移行、今後5年間は農業分野で働ける。同社は入国管理局と調整を繰り返し、申請で40種類を超す書類を準備。監理団体を通じ、送り出し機関とも調整し、初の特定技能に認定された。

 同社には2人以外にも特定技能への移行を希望しビザの変更申請をした実習生がいた。何度も同局と調整したが、許可された2人のときは必要なかった書類提出が求められ、ビザが切れ、帰国を余儀なくされた。同社は「相手国との調整に時間がかかる。体制が整えば特定技能を増やし、人手不足解消につなげたい」としている。

 特定技能の雇用を目指す農家からは「国会審議は異例の早さだったが、許認可は遅過ぎる」「書類が煩雑」と不満の声が上がる。農家らで作る香川県善通寺市のファーマーズ協同組合は肉牛で過去の技能実習生を受け入れようと4月から準備した。だが、6月末にやっと登録支援機関として認められ、特定技能の申請はこれからだ。近藤隆理事長は「許認可のスピードが遅い。人手不足は深刻で、早急に特定技能を雇用できるよう整備してほしい」と求める。

<メモ> 特定技能

 外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が成立。4月からは、一定技能を持ち即戦力となる「特定技能1号」を14業種で受け入れ始めた。農業は耕種か畜産の農業技能測定試験と日本語能力の試験を受ける必要がある。約3年の技能実習を修了していれば試験は免除される。農業分野では、受け入れ元の直接雇用に加え、派遣形態の雇用も認める。