映画『東京喰種 トーキョーグール【S】』の主人公・金木研(カネキ・ケン)を演じた窪田正孝と、主題歌『Introduction』を歌う女王蜂・アヴちゃん。女王蜂が手がける『東京喰種 トーキョーグール』の主題歌は、『HALF』に続き2曲目だ。

ふたりは、対談の直前に行われた舞台挨拶が初対面。話すのも、今回が初めてだったという。

限られた対談時間の中で、印象的だったのは、互いの発言に「なんで?」「どうして?」と、疑問を投げ合う姿だった。ふたりとも、相手の言葉を鵜呑みにはしない。自分なりに咀嚼して、より深い部分を理解しようとする。ちょっぴり過激で刺激的な対談を楽しんでほしい。

撮影/川野結李歌 文/岡本大介

石田スイ先生から、「絶対気が合うと思う」と言われた

おふたりは先ほどの舞台挨拶で初めて顔を合わせたばかりですよね。さっそくですが、窪田さんから見たアヴちゃんの印象はいかがですか?
窪田正孝(以下、窪田) シンプルに「めちゃめちゃ足が長いな」と(笑)。
アヴちゃん(以下、アヴ) ありがとうございます。私、これで食べてるところがあるので。
▲女王蜂・アヴちゃん
窪田 初対面とは言っても、僕はTVアニメ『東京喰種トーキョーグール:re』の主題歌(『HALF』)も聴いていましたから、女王蜂とアヴちゃんのことは前々から知っていたんですよね。
どんな印象をお持ちでしたか?
窪田 なんというか、つねになにかと戦っているというか、世の中に訴えかけている印象を受けました。
アヴ それうれしい! 私、挑みがちなところもあるから。もしかしたら戦闘狂なのかも。
窪田 それこそ『Introduction』もそうだけど、音楽を通じて、とても強いメッセージを発信してますよね。女王蜂の音楽からは、どんなものにも媚びない姿勢が感じられて。芝居と音楽は全然違う表現だけど、僕にも共通する部分があるなと思いました。まあ、僕の勝手な解釈ですけど。
アヴ でもそれも当たってると思います。私はライブハウスで10年間やってきた叩き上げなんですけど、バンド界隈でも、私と同じくらいに怒りを抱えている人には、なかなか出会わなかったりして。だって怒らないほうがきっとラクだし。

その意味で言ったら、私のほうも勝手に窪田さんにシンパシーを感じていたんです。
窪田 え? なんで?
アヴ 私、東京喰種の原作者の石田スイ先生とマブダチなんですけど、いつだったかスイ先生から「窪田さんとアヴちゃんは絶対気が合うと思う」って言われたことがあって。なにか、通じる部分があるのかな。
窪田 そうなのかな。でも、自分の中で崩したくないものというのはたしかにあって、そこへのこだわりは強いと自分でも思いますね。
▲窪田正孝
アヴ それはどんなところですか?
窪田 うーん、役者としての在り方とかかな。僕は役者にプライベートなんて必要ないって思ってるタイプなんです。もちろん番宣などでいろいろな番組に出て、そこでプライベートなことも話していくのは必要なことだとは思っているんですけど、もしやらなくて済むならやりたくない(笑)。

たとえば海外では、一切プライベートなことを話さない人もいるんです。理想はそれで、映画のフィルムの中だけに生きる存在でありたい。でも現実にはなかなか難しいんですよね。

「いつか役に喰われるぞ」と言われて

アヴちゃんから見て、俳優としての窪田さんにはどんな印象を持っていますか?
アヴ カネキくん(窪田が演じた主人公)を見ていて、これは前作もそうなんですけど、なんであんなに痛さが伝わるお芝居ができるんだろうって、それをずっと聞きたいと思ってました。カネキくんが辛そう過ぎて、「もうやめてあげて!」って何度も思いました。

私も舞台に立たせていただくことがありますが、きっとあんなには痛がれないと思う。窪田さんって実際に死にかけた経験でもあるんですか? そうじゃないとあんな演技、考えられないなって。
窪田 ないない(笑)。その部分はもう、自分自身を消費して表現していくしかないですよね。そういえば、その昔とあるプロデューサーから「(このままだと)いつか役に喰われるぞ」って言われたことがあって、それがすごく印象に残っていますね。
アヴ それは、役から自分に戻ってこれないっていうことですか?
窪田 精神的に壊れちゃうっていうことですね。役者って、朝起きてから夜寝るまで、食事の時間以外はずっとその役でいるわけじゃないですか。大勢の人がいる前で思い切り感情を爆発させたり、かと思えばキスしたり。それって冷静に考えるとすごくおかしいことですよね。

僕はそれでも役者稼業が大好きだからやってるけど、それでも気がつかないうちに精神的に病みそうになることもあって。本当に精神が壊れるまではならないように、そこはなんとかうまくやっていくしかなくて、それが難しいところでもありますね。

現代において、「新しい」はすべて嘘だと思う

完成した映画をご覧になって、アヴちゃんはなにを感じましたか?
アヴ サラッとやっているように見せてるけど「このアクション、一体なんで入れたの !?」とか、攻めてると感じるシーンがいくつもありました。あと「この咀嚼音とビジュアルは、そりゃR15+でしか見れへんよな…」とも。とにかくスゴいスピード感と爽快感でした。
▲『東京喰種 トーキョーグール【S】』(7月19日全国公開)の一場面より。©2019「東京喰種【S】」製作委員会 ©石田スイ/集英社
窪田 『Introduction』もすごく合ってたと思います。映画の最後に『Introduction』のアップテンポで爽やかな音がスッと入ってくることで、欠けていたピースが埋まったというか、ここで初めて作品が完成したような気がしたんです。
アヴ わあ! ありがとうございます!
窪田 なんて言うのかな。映像やアクションはすごくポップでスタイリッシュなんだけど、喰種や人間たちのやっていることや内包しているテーマはとても残酷で、そのコントラストとかギャップのようなものが、最後にあの楽曲が入ることでぐわっと際立つんですよね。
アヴ めっちゃうれしい! もともと『Introduction』という曲は女王蜂が10周年を迎えて、改めて「ここから始めます!」っていう気持ちで素直にできた曲なんです。だから本来は映画のテーマとは違うはずなんですけど、それがこれほどシンクロしたというのは、やっぱり運命めいたものを感じましたね。
女王蜂はTVアニメ『東京喰種トーキョーグール:re』でも『HALF』を提供しています。女王蜂、つまりアヴちゃんと『東京喰種トーキョーグール』には、きっとどこかに通じる部分があるんですよね。
アヴ 『東京喰種トーキョーグール』って、人間とはちょっと違う存在との折り合いの付け方の物語だし、もっと掘っていけば寺山修司作品のような戯曲っぽさもある。

私にしても、いつもなにかとなにかの狭間にいて、そこから世間や神様に喧嘩を売っているように思われがちだから、「生きながら人間としては死んでいる」みたいなテーマを持つ作品とは、共通点があるのだと思います。
一方でアヴちゃん自身は、国籍や性別や年齢を公開せずに、そういったラベルやタグを取っ払った存在として活動をしています。人間とグールの狭間で思い悩むカネキとは違い、すでに達観していますよね。
アヴ 達観ではないですけど、でも私は最初からずっと楽しく、わりと好き勝手にやっているだけなんです。怒りん坊ではあるけど、楽しく。

それでも世間っていうのは、どうしても私に、マンガの主人公並みの傷やドラマや悲劇を求めるんだなって思うこともあります。私はずっと「幸せなんて自分次第じゃん?」って思っているんですけど。

あと私のやり方が「新しい」って言われることもあるけど、もはや現代において「新しい」はすべて嘘だと思う。それは「新しい」んじゃなくて、「素晴らしい」とか「熱量が高い」っていうこと。
窪田 なんだか今のアヴちゃんの話を聞いていたら、絶対に山本舞香(トーカ役)と話が合うと思う。彼女もかなりのアウトローだから(笑)。
アヴ そうなんだ!

セリフは覚えるけど、セリフを言うための準備はしない

『Introduction』の歌詞からは、葛藤や抑圧からの脱却が見てとれます。映画のストーリーと照らし合わせると、主人公であるカネキの成長ともつながるような気がします。
窪田 でも僕自身は、カネキが成長したとはまったく思っていなくて。彼はまだ人間も喰種もみんなを救いたいと思っていて、言ってしまえば偽善者で甘ちゃんのまま。それでも前作で亜門と戦ったことで、少しだけ自分のことを認めることができた。まだそういう段階なのかなと思います。

一方で、前作と今作では現実に2年間の時間が流れているので、僕個人の変化は確実にあると思います。プライベートも含め僕もこの2年間でいろいろな役を演じて、たくさん経験したし。それが結果として、カネキのちょっとした変化という部分に自然と表れたのかなとも思います。
アヴ 窪田さんって、やっぱりカネキくんを演じているとき、フィットしている感じはありますか?
窪田 フィットはしてる。僕はもともと幸が薄い、なかなか幸せになれない役を演じることが多くて、そういう意味では昔からやってきた得意なタイプではあるんです(笑)。

でもカネキの場合は、これから先どんどん覚醒していって、それと引き換えに自我が崩壊していくじゃないですか。だから続編があれば、そこからは未知の領域ですね。僕自身がぶっ壊れるのは勘弁ですけど、役としてあそこまで壊れることができたなら、絶対に楽しいと思うんです。だからぜひとも続編をやりたいし、一刻も早くヤモリをぶっ殺したい(笑)。
アヴ めちゃくちゃたのしみ(笑)。あとちょっとマニアックな質問してもいいですか? 窪田さんは、たとえばカネキくんを演じる時、事前にどのくらい準備しますか? 私も舞台でお芝居することがあるから興味があって。
窪田 もちろんセリフは覚えるけど、セリフを言うための準備はしないですね。というか、準備は極力したくない。

人間って、たとえばキレるときは突然パーンとキレるじゃないですか。「1、2、3、ハイッ」ってキレる人はあんまりいないですよね。だから僕も0から急にキレたい。フラットな状態から一瞬でそこまで持っていくのが「楽しい」と思って臨んでますね。
アヴ なるほど。カネキくんが悶えてめっちゃ痛がるシーンとかは、具体的になにを想像してます?
窪田 あれは牛や豚などの屠殺シーンを元に、それを人間に置き換えて想像してるかな。最初にカネキを演じることになったとき、僕は肉が好きだから、屠殺されるところをしっかりと見ておく必要があるんじゃないかと思ったんですよね。
アヴ そうだったんだ! すごい腑に落ちた。そういうときの動物ってすごく抗うんですよね。たしかにカネキくんだわ。
窪田 喰種にとって人間は食料なわけだから、そういうことも知っておこうと思ったのがきっかけだったんですけどね。人間からすれば「喰種はなんて悪いヤツだ」ってなるけど、動物界全体で言ったら人間こそ喰種的存在だし、ほかの動物から見たら悪魔そのものかもしれない。
アヴ 喰種は人間しか食べないけど、人間はなんでも食べるし。
窪田 この話って突き詰めていくともっと深いし、尽きないよね。そういうことを考えるきっかけをくれたのはこの作品のおかげだし、少し見方を変えるといろいろな物事に置き換えられるのも魅力なのかなと、個人的にはそう思います。
アヴ じゃあ今度お会いするときにはぜひ、もっとディープなお話がしたいな。
窪田正孝(くぼた・まさたか)
1988年8月6日生まれ。神奈川県出身。B型。2006年にドラマ『チェケラッチョ!! in TOKYO』で初主演。以降数々のドラマや映画に出演、主人公から脇役まで、幅広い役柄をこなす。主な出演映画は『カノジョは嘘を愛しすぎてる』、『64 -ロクヨン- 』、『MARS〜ただ、君を愛してる〜』、『犬猿』、『銀魂2 掟は破るためにこそある』、『Diner ダイナー』など。公開待機作に『初恋』がある。
    アヴちゃん
    2009年にバンド・女王蜂を結成し、作詞・作曲・ボーカルを務める。ジャンルレスな楽曲、唯一無二のビジュアル、圧倒的なステージで脚光を浴びている。映画『東京喰種 トーキョーグール【S】』主題歌『Introduction』は、5月に発売された最新アルバム『十』に収録されている楽曲。2019年11月から12月まで、全国7ヶ所を巡る全国ホールツアー「2019 「十」−聖戦−」を控えている。

    CD情報

    女王蜂 アルバム『十』
    5月22日より発売中

    初回生産限定盤[CD+DVD]
    ¥4,500(税抜)

    通常盤[CD]
    ¥3,000(税抜)

    サイン入りポラプレゼント

    今回インタビューをさせていただいた、窪田正孝さんとアヴちゃんのサイン入りポラを抽選で1名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

    応募方法
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    受付期間
    2019年8月1日(木)20:00〜8月7日(水)20:00
    当選者確定フロー
    • 当選者発表日/8月8日(木)
    • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、発送先のご連絡 (個人情報の安全な受け渡し) のため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
    • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから8月8日(木)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき8月11日(日)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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