訪日したボルトン米大統領補佐官は22日、首相官邸で谷内正太郎国家安全保障局長と会談。ホルムズ海峡を航行するタンカーの安全確保に向けた米国の有志連合構想や、韓国への半導体関連材料の輸出規制や、徴用工問題についても意見を交わしたようもようだ。

ボルトン氏は、23日には韓国を訪問することになっており、韓国政府には米国が日韓対立の仲裁に動いてくれるのを期待する空気が強い。しかし果たして、そのような展開になるだろうか。

韓国青瓦台(大統領府)は18日、日本政府による輸出規制措置を受けて、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の見直すこともあり得ると示唆した。すると、米国務省がすかさずけん制のコメントを出している。

この「見直し」示唆については、米国の安全保障専門家からも強い懸念の声が出ている。

外交問題評議会(CFR)シニア・フェローのスコット・スナイダー氏は米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、「(韓国は)米国の仲裁を引き出すために(GSOMIA)をテコとして活用している側面があるが、これは(米国との)同盟の精神に反する行動だ」と語っている。

同氏はまた、「米国はGSOMIAが交渉のカードに使われることなど想定していない」としながら、「GSOMIAは韓国と日本の2国間関係だけでなく、米国を含む3者の協力とも密接に関係しているだけに、これ解体しようとする行動は、韓国に致命的な結果をもたらす」と指摘している。

韓国の文在寅政権との「ズレ」は今に始まったことではない。

(参考記事:「何故あんなことを言うのか」文在寅発言に米高官が不快感

しかし、今回は米国自身の安全保障にも関わることだけに、反応がシビアに出ている可能性がある。実際のところ、すでに日韓の葛藤は安全保障面にも及んでいる。

だが、いずれの国の安全保障政策も、米国との同盟関係を前提に設計されており、GSOMIAもまた例外ではない。

視点を変えて言えば、米国の東アジアでの安保戦略はいずれも重要な同盟国である日韓との連携、また日米韓3国の連携を前提に練られていると言える。

それを考えずにGSOMIAの見直しに言及し、それでいながら米国の仲裁に期待するというのは、文在寅政権の「外交下手」が如実に表れた例とも言える。

そもそもボルトン氏が持ってきた「本題」は、対イランでの有志連合への参加要請なのではないか。他人に頼み事をするときは当然、「見返り」についても考えておかねばならない。

米国の仲裁に期待したせいで、中東で高い代償を払わされることにならなければ良いのだが。