2019年4月12日、東京大学の入学式の祝辞で、東大名誉教授で社会学者の上野千鶴子氏が「他大学との合コン(合同コンパ)で、東大の女子学生は“東大”というと引かれるから東大ということを隠す」と触れた。学歴は時に女性にとってマイナスになるということだろう。

 国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が2012年に発表したデータによると、日本の女性の大学および短大進学率は約58%。先進国の中ではドイツが約63%と近い数字になる。しかし同じような大学進学率であっても、ドイツでは女性が高学歴であったり、高収入を得ていることが、恋愛において壁になることはないようだ。

 日本では、女性がいい大学を卒業していることに負い目を感じる男性もいるそうだ。しかしドイツでは学歴や経済力は女性にとっての魅力の一つ。結婚しても働く女性が多く、男性側も、ともに経済面で家族を支えられる相手を求める傾向が強い。ドイツの婚活サイトをのぞいてみても、自身の立派な学歴や経歴を堂々と書いている人が多い。女性は高学歴や仕事の地位を隠すことはあまりないという。

 日本では、高学歴・高収入の女性に男性が引いてしまうのは、「経済面において男性は女性よりも上にいて頼られるべき」という意識があるからだという説もある。だが、ドイツでは女性が男性に頼りたいと思っておらず、男性も女性から頼られたいと思い過ぎてはいないようだ。例えばデートで食事をしたとしても、支払いはたいてい別々。女性も男性におごられると、「自身が下に見られているのではないか」と嫌悪感を示す人が多いという。そのため、男性もあえて「割り勘で」と店員に告げる。互いに平等な関係を望んでいるといえるだろう。

 また、日本では控えめな女性を好む男性が多いと言われるが、ドイツでは男性が女性に奥ゆかしさや控えめな態度を求めていない。ドイツでは「言うことははっきり言う」のが、美徳とされている。思ったことを言わないと、後でトラブルにもなりやすいため、自己主張することはコミュニケーションの一つと捉えられているのだ。反対に意見を言わない人やあいまいな表現をする人はとっつきにくいと思われやすい。そのため、コミュニケーションが重要になる恋愛においても、自己主張ができる女性の方がモテるのだ。

 昨今、日本でも共働きの家庭が増えている。今後、男女ともにさらに意識改革が進み、女性の学歴や仕事での地位がネックにならない社会になっていくといいだろう。