3列シートのバスを中心に、いまや多くの高速バスで座席間を仕切るカーテンが備えられています。座席を個室のようにできる設備ですが、プライベート感を演出するだけでなく、課題解決のために導入するケースもあります。

利用者の声に応えたプライベートカーテン

 高速バスでは3列シートの車両を中心に、隣の座席とを仕切るカーテンの装備が見られます。閉めれば座席を個室のようにできることもあり、いまでは多くのバスに広まっています。


VIPライナーの「グランシアファースト」車内。座席間を仕切るカーテンが設けられている(画像:平成エンタープライズ)。

「VIPライナー」シリーズを運行する平成エンタープライズ(埼玉県富士見市)も、ある課題を解決するため2009(平成21)年にこのようなカーテンを新たに開発し導入、プライベートカーテンの名で商標登録もしています。同社に話を聞きました。

――プライベートカーテンをなぜ開発したのでしょうか?

 おもに夜行バスでは、特に女性のお客様から「寝顔を見られたくない」といったプライバシーへの配慮に対するお声があります。それに応える形で独立3列シート(車内の両端と真ん中の列に座席を配置し、各席のあいだに通路を挟む型式)を導入したのですが、それでも座席の割り振りに対しご要望を寄せられたことが、カーテン開発のきっかけになりました。

 対策として車内の前方を男性エリア、後方を女性エリアに分ける案もありましたが、こうすると、指定席予約サービスが成り立たなくなってしまいます。この当時、座席を任意に指定できるのは当社独自のサービスで人気があったことから、考えた末にカーテンで座席間を仕切ることで対応したのです。またカーテンの構造も、ドライバーが車内を歩いてお客様の人員確認ができるよう、上部が透けて見えるタイプにしました。

しかし課題解決にはならず…

――プライベートカーテンの設置で、課題は解決できたのでしょうか?

 いえ、カーテンで仕切っていても、周りを意識してしまうというお声をいただくことがありました。そこで完全女性専用車の「プルメリア」を運行したところ、そうしたお声はほぼなくなりました。

※ ※ ※

 前述のとおり、いまでは座席を仕切るカーテンが多くのバスで見られるほか、2010(平成22)年ころから、カーテンではなく大きなパーテーションで座席後方や通路側を仕切った、個室タイプの座席を備えた高級志向の車両も相次いで登場していきました。すべて個室でわずか10数席というバスもあれば、同じ車内でグレードを分け、上位グレードの座席のみ個室を設けているケースもあります。


カーテンを閉めれば個室感覚に(画像:平成エンタープライズ)。

 しかし、このような個室空間はスペースをとるため、座席数が少なくなりがちで、1席あたりの単価も高い傾向です。平成エンタープライズによると、座席数が20席を切るような高級志向の車両は、「会社の宣伝にはなりますが、黒字化はなかなか難しいでしょう」といいます。

 同社でもこの志向に応えるべく、座席の背面に固いシェルと呼ばれる部分を設け、背もたれをリクライニングさせても座席が後ろに倒れ込まない「バックシェルシート」にプライベートカーテンを組み合わせた車両は開発したものの、パーテーションで仕切って個室を設けるのは、乗車人数が少なくなることから断念したそうです。「当社は『ある程度の金額で高級感があるバス』を目指していますので、個室の開発は費用対効果からも考えていません」と話します。

※一部修正しました(7月20日0時49分)

【写真】「高級志向」4列シートバス、答えのひとつ


「VIPライナー」には4列シートで各席ごとにテレビモニターがついている車両もある。座席間はカーテンで仕切り可能(画像:平成エンタープライズ)。