時代の変化とともに、その印象や存在感が変わりつつある「お酒」。クラフトビールやクラフトジンなど多様な種類のお酒が流行する一方で、「飲み会が嫌い」という人もよく目にするようになりました。

R25世代にとって、いまベストな「お酒との付き合い方」はどんなものなんだろう…。

特集「新・飲酒論」では、いまの時代をとらえた「お酒」の話を深堀りしていこうと思います。



多くのメディアで注目を集めるこの人の「飲酒哲学」

今回お話をきいたのは、箕輪厚介さん。

稀代の編集者としてヒット書籍を次々と手がける箕輪さんは、大物著者との豪華な会食で高級なワインを飲んでいる(らしい)一方、取材やイベント登壇のときも、いつもハイボールを飲みながらトークしている印象があります…。

お酒に対していったいどんな哲学を持っているのか?ときいてみたところ、恐ろしい展開になってしまいました。

〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉


【箕輪厚介(みのわ・こうすけ)】1985年生まれ。2010年に双葉社に入社。広告営業などを経て2014年より編集部に異動し、『たった一人の熱狂(見城徹)』『逆転の仕事論(堀江貴文)』などを担当。2015年幻冬舎に入社した後、NewsPicks Book編集長として『多動力(堀江貴文)』『人生の勝算(前田裕二)』『お金2.0(佐藤航陽)』などの話題作を生み出しつづけている。2019年4月に、突然「箕輪★狂介」として歌手デビューを発表。代表曲に「You Know What?」「徒花」がある

天野:
今日は、R25世代の“新しいお酒との付き合い方”を考えるという企画で来ました。

箕輪さん:
めちゃくちゃいい企画だよ!!

お酒との付き合い方、ほんと考えたいもん。


と、話す理由がのちほど明らかに…

天野:
箕輪さんって、取材とかイベントのときいつもお酒飲んでてベロベロじゃないですか?

箕輪さん:
そう?


過去の取材での勇姿

天野:
ちなみに今日もすでに飲んでますか?

箕輪さん:
今日はそんなに飲んでないよ。

ハイボール10杯ぐらいかな。


そんな笑顔で言われても…

※ちなみにこの取材は、『NewsPicks』の生放送討論番組『TheUPDATE』の収録後に行っています

「会社の飲み会」ってムダですか?

箕輪さん:
俺、会社の飲み会は大好きなんだよね

幻冬舎の飲み会とか、もはや誘われもしないけど余裕で行くもん。「箕輪来るのかよ!?」ってなぜかビックリされるけど。

天野:
意外ですね…。会社の飲み会は何が楽しいんですか?



箕輪さん:
「人間だな〜」って思う。

会社の愚痴を言ったり、それなのにピュアな想いを語ったりもするでしょ。

そういうの聞くの好きなんだよね。超リアルじゃん。作られたコンテンツを見てるより面白いよね。

天野:
「会社の飲み会はムダ」という意見はどう思いますか?

箕輪さん:
そういう風潮はよくわかるけど、文化とか作品って膨大なムダから生まれるから、それが意味ないことだとは俺は思わないな。



箕輪さん:
よくいる編集者のオジサンって、やたら酒飲むでしょ。あれは大して仕事がないからだと思うんだけど

天野:
そうですかね…

箕輪さん:
でもあるとき、そういう「膨大な余剰」が許されてるのは豊かな証拠だって気付いたんだよね。

これまでそのオジサンたちが、酒を飲んでるだけのように見えても何かを生み出せてたのは、業界が豊かだったからなんだよ。

天野:
お酒の席から新しいものを生み出すという余裕があったんですね。

箕輪さん:
今は出版業界が貧乏になってるから、そういう“余剰”を抱えられない。働いてる人たちが大して酒も飲めなくなってるっていうのは、相当問題だよね。

これ、出版だけじゃなくて日本全体がそうなんだと思うけど。



箕輪さん:
今お金持ってるITの人は、めちゃくちゃうまいもの食べて、遊びでヘリコプター乗ったりしてるじゃん。そういうところから“この世にあらざるサービス”って生まれると思うのね。

日本全体が、ムダをもう1回抱えられるビジネスモデルを開発しないといけないよね。

天野:
なるほど。

箕輪さん:
大半のサラリーマンが貧乏になってるから、大衆居酒屋の飲み代を経費でこっそり落とすみたいなことやってるでしょ。

それは本来正しくないですよ。自腹でうまい酒ぐらい飲めるビジネスをちゃんとつくらなきゃいけない。

それは経営者がやることかもしれないけど、一般のサラリーマンでも、どうやったらそれができるか考えるとモノの見え方が変わるだろうね



箕輪さん:
だってさあ、『ゲーテ』(幻冬舎の男性ライフスタイル雑誌)の編集者が家賃8万円のワンルームに住んでちゃダメだと思わない?

天野:
高級志向の雑誌ですもんね…

箕輪さん:
家賃8万でリシャール・ミル(超高級時計)の記事なんて書いててもナンセンスじゃん

今、日本中がそういうナンセンスな状態に陥ってるよね。


かくいう筆者も「リシャール・ミル」って初めて知りました…

「お酒というガソリンで、自分を動かしている」

天野:
一方で、お酒を飲んでいてデメリットを感じることもありますか?

箕輪さん:
デメリットばっかでしょ!!!

だって酒飲んでなかったら俺最強だと思うもん。時間もめっちゃあるし頭もキレるしさ。

天野:
じゃあ、なぜそんなに飲むんですか…?

箕輪さん:
単純に寝られないから。

編集者なのにCDデビューしたり『スッキリ』にコメンテーターとして出たり、こんなワケわかんない生活して、さすがにシラフじゃ寝られないよね…

天野:
『スッキリ』とかだいぶ朝早そうですけど、起きられてるんですか?

箕輪さん:
朝はめちゃくちゃ早く起きてる。3時ぐらいから会社行って仕事してるときもあるし。



箕輪さん:
仕事しなきゃっていう責任感がすごいあって、寝てるときも次の仕事の夢見てるんだよね。締め切りの夢とか。

ただ、朝起きたときに反動というか、精神的にドカンと落ち込みが来る。3分で治るから仕事行くんだけど。

天野:
え…



箕輪さん:
今日もホストクラブのイベントでホストたちの前で歌ってきたんだけど、昼から酒飲んでテンション上げざるを得ない

酒っていうガソリンでどうにか自分を前進させてる気がする。精神はそこにはないよね。

みんなそんなもんなんじゃないの?

天野:
あの…箕輪さん…

箕輪さん:
なに?

天野:
それ、アルコール依存症じゃないですかね…?


目もだいぶトロンとしてきてますし…

箕輪さん:
たしかに、ホリエモンにも前言われたことある。「お前、日常的に昼から飲んでるのはけっこうヤバイよ」って。

天野:
怖すぎます。

箕輪さん:
酒飲んで目が覚めると、すごい罪悪感と絶望感があって、そこから「死ぬほど頑張ろう」と思って仕事するの。

毎日それの繰り返しだよ

天野:
何への罪悪感なんですかね…

箕輪さん:
結局、世の中を動かすような本を作れるということこそが自分のアイデンティティだから、それをやらずに酒飲んでしまうと「俺だめだな」「終わったわ」って自責するんだと思う。

それで、「まともになろう!」って思って喫茶店行って必死に仕事する。

ある意味、いい具合に自分を動かすエンジンになってるとは思うんだよね。



「あんまり飲まない」若い世代には共感する

天野:
若い世代で「お酒をあんまり飲まない」って表明する人がけっこういるらしいんですけど、それはどう思いますか?

箕輪さん:
めちゃくちゃ共感するね! 実際酒って今っぽくないと思うもん。

スポーツして汗かいて水飲むとか、そういうヘルシーなほうが時代に合ってるんじゃないかな。そういう人、どんどん増えてくでしょ。

天野:
じゃあ、なぜ箕輪さんは飲むんですかね…?


「なぜって…」

箕輪さん:
依存症だからじゃない?

天野:
ですよね! 病院行ってください!


就寝

というわけで、前半の「余剰こそがアイデアを生む」というコンテンツ論から一転、スター編集者の思わぬ闇に触れる結果となってしまいました。フルスピードで走りつづけるゆえの孤独があるのでしょうか…。

昨日記事を公開したEXIT・兼近さんが“お酒を飲んでいるときは、本当の自分じゃない”と話していたことを伝えると、「どっちが本当なんて実際にはないと思うけどね。朝イチでシラフの俺を取材したらそれが本心か?って言ったら、そうでもないじゃん」とのことでした。

ちなみに…箕輪さんほどじゃないにしても、お酒をガソリンにして仕事を頑張っている読者もいるのでは? 記事を読んでギクリとした方は、下記のURLなどでWHOが作成した「依存症チェック」ができます。

アルコール依存症治療ナビ
http://alcoholic-navi.jp/checksheet/

気になることがある人は、専門医に相談してみてください。節度を守って、お酒も仕事も楽しみましょうね!

〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉

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