2019年7月15日(月・祝)、「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)は創刊50周年を迎えた。同日、東京・秋葉原UDXギャラリーで「週刊少年チャンピオン 創刊50周年大感謝祭」が開催された。同イベントに、『バキ道』の板垣恵介先生、『覚悟のススメ』の山口貴由先生、『弱虫ペダル』の渡辺航先生、『ハリガネサービスACE』の荒達哉先生、『BEASTARS』の板垣巴留先生、『魔入りました!入間くん』の西修先生、そして週刊少年チャンピオン現編集長の武川新吾氏と前編集長の沢孝史氏がゲストとして出席。イベントでは、週刊少年チャンピオンの歴代人気作品やキャラクターの誕生秘話が語られた。

【写真】週刊少年チャンピオン50周年記念号を手に挨拶する武川編集長

■ 正しくない筋肉も才能 範馬勇次郎の“鬼の顔”

ゲストトークショーの第一部では、板垣先生の担当編集も務めた沢氏が、『刃牙』シリーズを代表するキャラクター・範馬勇次郎について「(範馬)刃牙の親父を出そうとなった時に、トマス・ハリス『レッド・ドラゴン』という小説を読んで、背中に大きなドラゴンの入れ墨を入れているキャラがいたんです。それを板垣先生に話したら『面白いね』と。そして次のネームで出てきたのが、“背中の筋肉が鬼の顔”なんですよ」とデザインの由来を明かした。

すると板垣先生は「打ち合わせでは『背中に龍の入れ墨があって、手足が四肢に溶け込んでいる。彼(勇次郎)が動くと龍も動いているように見える』という話をしたんだけど。後でプロのボディビルダーの写真を見たら、背中がヘイケガニ(の甲羅のように)、顔に見えるんだよ。こっちの方が絶対いいと思って。解剖学的には正しい筋肉ではないんだけど、それを含めて他人と違う(勇次郎の)才能」と、キャラクターデザインにこめられた狙いを語った。

■ 最初は女の子が主人公だった!?『弱虫ペダル』誕生秘話

トークショー第二部では、『弱虫ペダル』の連載に至るまでのエピソードが、渡辺先生と当時担当だった武川氏から披露された。打ち合わせ中の雑談で、渡辺先生が自転車の話をする際の表情がよかったことから自転車をテーマにした作品を打診した武川氏。渡辺先生は「趣味を仕事にして面白くなくなるのがイヤ」という理由で一度は断ったものの、再度打診され、女の子を主人公にした自転車マンガを提案したという。

「自転車競技部の中で、一度に一つのことしかできない女の子がマネージャーになって、その目線から部を描く形にしようと思ったんです。何故なら、チャンピオンには『シャカリキ!』(曽田正人)という伝説の自転車マンガがあったので。『シャカリキ!』は越えられないので、別の手で行きます、と(笑)」と話す渡辺先生。先生にとって自信のある案で、武川氏も『女の子でも面白かった』と話すが、最終的には当時編集長だった沢氏から「少年誌なんだから男の子を主人公に描こうよ」と言われ、描き直して生まれたのが『弱虫ペダル』だったという。

■ 「不良」から生まれた葉隠覚悟の白ラン

板垣恵介先生、山口先生、渡辺先生の3人によるキャラメーキング秘話を語るコーナーでは、山口先生が『覚悟のススメ』の主人公・葉隠覚悟の着る白い学ランについて「週刊少年チャンピオンに連載するなら、旧世代の不良のイメージがある学ランを着せてみたいなと思って。自分がヤンキー全盛の街に住んでいたので、暴走族の白い特攻服を見る機会もいっぱいあって。自分はヤンキーじゃなかったけど、俺が描いてもいいだろうと。憧れがあったんだと思う」と由来を明かす。渡辺先生が「『覚悟のススメ』第1話で出てきた戦術鬼の破夢子がすごく好きで。目がすごくかわいいんですよ。でも、主役級の目をしているのに怖い。そういうビジュアルをどう作ったのかと思って」と質問すると、山口先生は「当時同棲していた女の子が……(笑)」と返答。意外な着想元に会場は笑いに包まれた。

その後も、板垣巴留先生、西先生、荒先生による即興キャラデザインや、創刊50周年を記念してのクイズコーナーが開催された。また、チャンピオンを代表する作品の展示コーナーも盛況を博した。(東京ウォーカー(全国版)・国分洋平)