呪いと聞くと、とても恐ろしいイメージがありますよね。しかし、その呪いの起源は一体いつなのでしょうか。
そこで日本の神話を辿ってみると、ある夫婦の物語から、日本最古ではないかと思われる呪いの言葉が浮かび上がってきたのです。
日本最古の呪いの言葉
この日本列島は神話によると、イザナギ(伊邪那岐命・いざなぎのみこと)とイザナミ(伊邪那美命・いざなみのみこと)の夫婦の神によって産み出されました。
順調に国産みをしていた夫婦でしたが、火の神・カグツチを産んだイザナミが陰部を火傷してしまい、命を落とすことになります。
そうしてイザナミは黄泉の国へ。しかし妻を諦められないイザナギは、黄泉の国まで追いかけていきます。イザナギが迎えてきてくれましたが、すでにイザナミは黄泉の国の食べ物を食べてしまっていたので現世には帰れません。
そこで黄泉の国の神に相談することにしたイザナミ。その間、決して自分の姿を見ないでくれと、イザナミはイザナギに頼みます。
しかしイザナギは約束を破り、イザナミの姿を覗いてしまったのです。
イザナギが見たものは、腐敗してウジが湧いたイザナミの変わり果てた姿でした。自分の醜い姿を見られたイザナミは怒り、恐れて逃げ出したイザナギを追いかけます。
追っ手を蹴散らしながら逃げ、現世と黄泉の国の境にある黄泉比良坂(よもつひらさか)に辿り着き、大岩でこちらに来られないように防いだイザナギ。
愛する夫の仕打ちに悲しんだイザナミは、「このようなひどいことをするなら、私は一日に千人の人間を殺しましょう」という言葉を掛けたのです。
この言葉こそ、日本最古の呪いの言葉ではないかと、作家の竹田恒泰氏が著書「怨霊になった天皇」で記しています。
イザナミの呪いと人の寿命
イザナミが「一日に千人殺す」と宣言したら、イザナギは「ならば私は一日に千五百の産屋を建てよう」と言いました。そうして人間は一日に千人が死に、千五百人が産まれるようになったのです。
この物語によれば、現世に生きる我々人間に寿命があるのは、伊邪那美神の怨念の結果である、ということになろう。
引用元:竹田恒泰「怨霊になった天皇」
イザナミの呪いによって、人間は寿命が定められるようになったように見えますね。
右がイザナギ、左がイザナミ。二人は天の橋に立っており、矛で混沌をかき混ぜて島(日本)を作っているところ(wikipediaより)
変わり果てた自分を見捨てた夫を恨み、呪いの言葉を吐いたイザナミ。その後、黄泉津大神(よもつおおかみ)、道敷大神(ちしきのおおかみ)と呼ばれ、イザナミは黄泉の国の神として存在するようになりました。
イザナミとイザナギは、神話に登場する神の中で初めて夫婦になった神です。そんな夫婦が呪いの言葉を吐き、別れてしまったのは悲劇としか言いようがありません。
参考文献:竹田恒泰「怨霊になった天皇」(2011年)
外部リンクJapaaan