【AFP=時事】問題児と称されることもある中国競泳界のエース孫楊(Yang Sun、ソン・ヨウ)が、金づちで自身の血液検体(サンプル)を破壊していたと、14日の豪紙が報じた。

 国際水泳連盟(FINA)のドーピングパネルがまとめた報告書を入手したという豪紙デーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)によれば、五輪で3個の金メダルを獲得している孫は2018年9月、浙江(Zhejiang)省の別荘で行われた抜き打ち検査で、採取された血液サンプルを警備員と一緒に壊したという。

 FINAはこの件で孫に違反はなかったとの判断を下し、今週開幕する世界水泳選手権(FINA World Championships)の出場を許可しているが、他選手からは追放すべきだという怒りの声があがっており、世界反ドーピング機関(WADA)もスポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議申し立てを行っている。

 現在は暫定的におとがめなしということになっている孫だが、CASの裁定によっては、永久追放の処分が下される可能性もあるという。

 これまで非公開だったFINAの1月3日付の報告書には「母親が検査の行われた部屋に金づちを持ってくるよう警備員に言った」、孫と代表のチームドクターが「採取された血液サンプルの完全性を損ねるため、採血管を入れた容器を壊してしまおうと話した」といった驚きの内容が記されていた。

 報告書の中でドーピング委員は、「どんな場合でも、検査員の指示に従ってサンプルを提出する方が、違反に問われるリスクを犯すよりもはるかに慎重な判断である」にもかかわらず、「検査官と意見が食い違う複雑な状況で、自分が正しいという主張に選手生命を懸けるのは、愚かで大きなギャンブルだ」と述べている。

■検査員と担当医師とで意見が対立

 報告書によれば、検査官は昨年9月4日の夜に補助員2人を伴って孫楊の別荘を訪れ、血液と尿のサンプルを回収しようとした。ところが遅れてやって来た孫は、補助員の資格に疑問を抱き、近くの別の建物に設定された「検査所の外へ補助員を出すよう」要請した。

 結局、孫は血液サンプルは提出したが、尿サンプルの提出は拒否した。そして午前1時にチームドクターが現場へやって来て、補助員だけでなく検査員の女性にも適切な資格がないと非難すると、両者は「途端に険悪な雰囲気になった」という。

 検査員側は規定違反になると警告したが、医師はサンプルの回収を拒否。そして孫の母親が金づちを持ってくるよう言った後、「検査員はガラスの割れる音を聞き」「孫と警備員がサンプルを収めた容器を壊したことが判明した」という。

 孫の担当医師たちは、「検査官は、中国の医療法に基づいた血液採取の資格を持つ人間ではなく」「検査員の了解を得ていた」ため、「部屋を何度も離れた孫の行動に問題はなかった」と主張している。

 現時点でFINAは、リークされた「ドーピングパネルの報告書は基本的に機密文書」と述べたのみで、この件に関する具体的なコメントは発していない。

【翻訳編集】AFPBB News