横浜FMの仲川と浦和の宇賀神が競り合い、ボールが当たってゴールの場面が問題に

 横浜F・マリノス浦和レッズを迎え撃った13日の一戦は、横浜が3-1で勝利したものの、その2点目を巡って判定が二転三転する顛末になった。

 協議の末に一度ゴールを認め、オフサイドへと判定が変わり、さらにゴールへと覆るというお粗末な判定になった。

 横浜FMが1-0とリードして迎えた後半14分だった。横浜は左サイドから切り崩すと、FW遠藤渓太がファーサイドに向けたシュートを放った。浦和GK西川周作は必死のセーブで飛びついたが、ボールには届かず通過。そして、ファーサイドでは横浜のFW仲川輝人と、浦和のMF宇賀神友弥が競り合いながら入り込み、2人のところでボールが当たってゴールに入った。

 松尾一レフェリーと、バックスタンド側の田尻智計アシスタントレフェリーは即座にゴールとは認めず、インカムを使用してやり取りをしているのが見て取れた。その後、松尾レフェリーは一度ゴールを認めるアクションをし、ボールをセンターサークルに運んだ。しかし、その後もメインスタンド側の相樂亨アシスタントレフェリーや、第4審判の大坪博和氏ともインカムのやり取りをしているのが見て取れ、今度はオフサイドと判定が変わった。

 この間にも両チームは判定に対して審判団の周りで抗議をしていたが、その後もインカムでのやり取りや松尾レフェリーが近寄っての協議が続き、最終的にゴールが認められるという結果になった。

審判団が確認した5つの項目は? 判定と記録の整合性も取れない事態に

 この判定では、主審と副審がそれぞれの立場から見たうえで、以下の5つが確認事項だったと考えられる。

・遠藤がシュートした瞬間に仲川がオフサイドポジションにいたかどうか。
・2人の選手のどちらかにボールが当たって瞬間、すでにゴールインしていたかどうか。
・ボールに当たったのが仲川と宇賀神のどちらだったか。
・仲川は宇賀神がクリアする可能性に影響を与えていたかどうか。
・仲川は腕など不正な方法でゴールにボールを入れていないかどうか。

 まず、映像を確認する限り、遠藤がシュートした瞬間に仲川がオフサイドポジションにいたのは明らか。しかし、当初Jリーグは公式の速報でオウンゴールと発表していたため、ボールに当たったのが宇賀神という見解だったはずだ。映像を確認すると、これも仲川に当たっていたことが分かる。つまり仲川のオフサイドが成立するため、浦和ボールの間接フリーキックで再開されるべきだった。

 この時点では、仲川と宇賀神のどちらにボールが当たったのかの見極めを誤ったというのがミスジャッジの理由になっていたと言える。

 しかし、さらにJリーグは公式記録を仲川のゴールに訂正している。そうなると、ボールが宇賀神に当たって入ったという判定の根拠は崩れてしまう。一度はオフサイドに判定が変わっているように、主審と副審の間では遠藤のシュートの瞬間、仲川がオフサイドポジションにいたことは共通の見解だったのだろう。つまり、判定と記録の整合性も取れないことになってしまった。

GK西川が振り返る騒動の顛末 「その後に判定がゴールに変わりました」

 西川はこの協議の間の顛末について「オフサイドではないかという意見はアシスタントレフェリーに伝えました。ただ、判定は任せますと。その後にオフサイドになって、会場もざわついていたし、相手のベンチからも抗議になっていたので、落ち着いてから始めますということでした。ただ、その後に判定がゴールに変わりました」と、ピッチ上での一連の流れを話している。

 試合そのものは、横浜FMがシュート数21対4と上回ったように勝利に近い内容だったのは事実だろう。しかし、1点差と2点差では試合の展開も変化するものであり、大きな影響を与えたミスジャッジだったことは確かだ。

 欧州各国のリーグ戦や昨年のロシア・ワールドカップ(W杯)で本格的に導入され、サッカーと判定の在り方を大きく変えているビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)について、Jリーグも導入に向けた動きは進めている。しかし、改めてその必要性が浮き彫りになるミスジャッジだったと言えるだろう。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)