8強が出揃ったコパ・アメリカ。グループリーグの期間中、ブラジルで話題になったピッチ内外のエピソードの数々をお届けしよう。

ブラジル代表に新たな火種

 今、ブラジルで問題視されているのが、代表監督チッチの息子マテウスだ。彼はつい最近ブラジル代表コーチのナンバー3の座に昇格した。エドゥが古巣アーセナルのゼネラルディレクターに引き抜かれ、チッチの右腕でオリンピックチーム監督でもあったシルヴィーニョが来季からリヨンの監督になるため、その後を継ぐ形の抜擢だ。しかし、選手としても指導者としてもほとんど何の経験もない彼がこのポストに就くことには、多くの批判が集まっている。

ミスを連発したブラジル人審判

 ブラジル人レフェリーのウィルトン・サンパイオはコパ・アメリカの終了を待たずに大会を去るかもしれない。彼は試合中多くのミスジャッジを連発しただけでなく、アルゼンチン対パラグアイ戦では、既定の時間より2分早くタイムアップの笛を吹いてしまい、その後、あわててプレーを続行させた。ちょうどオフサイドで試合がストップしたところだったので、幸いにも気づいた者は少なかったが。

カタール協会はPR大成功

 2022年W杯開催国、カタールのサッカー協会は、グループリーグ3試合の前に、5人の協会役員を使って300本のチームマフラーを観客に無料で配布した。そのおかげかマフラーをもらった多くのブラジル人はカタールを応援。彼らの目論見は大成功に終わった。


カタールに勝利し、ようやくひと息ついたリオネル・メッシ photo by Reuters/AFLO

売られたエスコートキッズの権利

 選手と手をつないでピッチに入るエスコートキッズ。通常は近くのサッカーチームの子どもたちや、スポンサーが集めるものだが、スポンサーのマスターカードは今回、ブラジル戦のこの権利を”コパ・アメリカ・エキスペリエンス”として売りに出し、ブラジルの試合に毎回8人のキッズを募集した。

 このパックにはエスコートの権利のほかに、両親の分の試合チケットが2枚、そしてVIPルームの使用権がついてくる。パックの値段はなんと1万レアル(約25万円)。ブラジル戦以外では、エスコートキッズはみんな通常どおりお金など払わずピッチに入り、ラッキーな子どもはリオネル・メッシとだって手をつなげるのだが……。

メッシとスアレス、劣悪ピッチを嘆く

 今回のコパ・アメリカのピッチコンディションは、残念ながらかなり悪い。すでに3人の監督と多くの選手が芝の状態を嘆いている。そのなかにはメッシやルイス・スアレスなどのビッグネームも含まれるから、状況はかなり深刻なのだろう。ちなみにカタール戦でゴールを外したことを、メッシはピッチのせいだと主張している。

「このピッチはボールが跳ね上がる、バウンドしすぎるんだ!」

アルゼンチンサポーター、強制送還

 バッラ・ブラバとは、アルゼンチン版フーリガンのことを指す。コパ・アメリカの開催中、ブラジルは過去に暴力事件を起こしたサポーターの入国を拒否。彼らが試合に来られないよう、空港やスタジアムに顔認証システムを導入した。そのためバッラ・ブラバの何人かは、ヒゲや髪形などを変え、変装して入国を図ったが、あっさり見破られて母国へ強制送還された。

メッシ、家族を緊急招集

 開幕から2試合連続で勝利のなかったアルゼンチンは、最後のカタール戦にすべてをかけていた。この日のスタンドには、メッシの妻と3人の子どもたちの姿もあった。「子どもたちと妻に近くにいてもらうことで、パワーをもらいたかったんだ」とメッシ。もともと彼の家族は、コパ・アメリカには来る予定ではなかった。それをメッシたっての希望で急遽駆けつけてもらったという。そのかいあってかアルゼンチンは勝利。翌日のメッシの誕生日を無事祝うことができた。

「日本招待」批判の本音

 日本とカタールがコパ・アメリカに招待参加したが、南米以外の国を招聘することは、以前から物議をかもしていた。今回は特に、ベネズエラのラファエル・ドゥダメル監督とパラグアイのエドゥアルド・ベリッツォ監督がこのことを公に問題提起したことで、クローズアップされた。

 それは単に南米大会によそ者が参加することに納得ができないという理由からだけではない。実は、今年の大会はコパ・アメリカ史上最高の報奨金が用意されている。決勝トーナメントに勝ち進んだチームには、より多くの金額が渡される。南米のチームはどこも財政状況が厳しいのは似たり寄ったり。喉から手が出るほど欲しい報奨だ。結局は危惧に終わったが、それを南米でもない、しかも、金持ちの国に持っていかれるのはどうしても納得がいかないというのが本音なのである。