常識にとらわれないオリジナリティ溢れる映像表現で、”鬼才”の名をほしいままにしてきたアニメーター・湯浅政明。

彼の手がける作品は専門家やアニメファンから高い評価を受け、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭でグランプリにあたるクリスタル賞をはじめ、国内外で数多くの賞を獲得。名実ともに日本を代表するアニメクリエーターのひとりである。

しかし一方で、湯浅作品の多くは独創的、芸術的、前衛的であるがゆえに、「知る人ぞ知る」存在とたとえられることがある。そんな湯浅監督が「よりたくさんの人に作品を届けたい」と思いを込めて生み出したのが、劇場最新作『きみと、波にのれたら』だ。

アニメファン以外の客層にもリーチするため、ビジュアルやストーリーの方向性は新海誠作品や細田守作品にも通じるキャッチーさを取り込み、そこに湯浅監督ならではのイマジネーションをプラス。若い男女の王道ラブストーリーであり、青春の成長物語であり、同時にぶっ飛んだ映像表現がふんだんに感じられる、これまでにない仕上がりとなっている。

今回はフジテレビの岡安由夏プロデューサーと共に、「よりたくさんの人に作品を届ける」ために試みた数々の挑戦について、話をうかがった。

撮影/伊藤圭 取材・文/岡本大介