「Amazonで商品をランク付けする「星」の仕組みは、かくも難解だった」の写真・リンク付きの記事はこちら

オンラインショッピングは見かけ通りにいかないことは、不思議でもなんでもない。すでに知っている製品でない限り、ショッピングには常にギャンブルの要素がつきまとうのだ。この布地はどんな手触りか、このクリームを使って発疹ができないか。そういうことは、画面で見ただけではわかるはずがない。

そこで買い物客は決断する前に、その製品を買ったことがある人たちにしばしば頼ることになる。つまり、レヴューを読むわけだ。

多くのネット通販サイトでは、買い物客は1つから5つまでの星のマークで商品をランク付けする。Amazonも同じだ。星の数は、ある商品について人々がどう感じたかをひと目でわかるように示す重要な目安になる。また、現代社会に溢れているとんでもない数の選択肢をフィルターにかけてランク付け、管理するための便利な方法としても役立っている。

星がなかったら、4万点を超えるシャワーカーテンの選択肢からどれを買うべきか、決める方法があるだろうか? 星の数が多いというのは、クラウドソーシングによる承認を受けているということなのだ。アマゾンは、4つ以上の星を獲得した商品だけを販売する実店舗をオープンさせたほどである。

しかし、Amazonで輝くこの黄色い小さな星マークは、見かけほどそう単純ではない。ある商品の評価が4.7で、別の商品が4.8というのは、そもそもどうしてなのだろう? そう質問されたあなたの答えは想像がつく。「そりゃ、平均値に決まってる。星の数の合計をレヴューの件数で割るだけだ。単純な算数だよ!」

ところが読者の皆さん、そうではないのだ。星の数はある商品についての「平均的なカスタマーのレヴュー」を反映しているとアマゾンは主張するが、その背後にある計算式はもっと複雑で、謎に満ちている。

5つ星が増えても平均の星の数は減るミステリー

アマゾンは2015年から、特許を取得した機械学習モデルを使って、星の数を加重平均でみるようになった。平均を算出する際に、実際の評価よりも高い数値で数えられるレヴューと、そうでないレヴューがあるということだ。

レヴューがどのくらい新しいか、「実際に購入が確認された」(レヴューの書き手が「素晴らしい」とか「全然ダメ」と言っている商品を本当に買ったかアマゾンが確認できた)顧客によって書かれたかといった要素を踏まえて、加重する。

アマゾンは、レヴューを書いた人が保有するアカウントの利用年数や、普段どんな星の数を付けているかなどを考慮しているのだろう。Amazonで商品を販売し、同社に関するブログも書いているデイヴィッド・ブライアントは、そう考えている。「否定的なレヴューを残した回数があまりに多いレヴュアーについては、配慮しているように見えます」

こうした新しいシステムは、購入する側にとってはおおむねよい取り組みだ。3年前に付けられた星5個は、つい先週付けられた星3個ほど有効とは言えないだろう。しかし、そこにはまた新たなアルゴリズムの秘密があることを考えれば、ネット通販サイトを利用するサードパーティーの販売者にとってはもどかしいところだ。

Amazonで販売する人たちのフォーラムは、自社の商品がランク付けされるこの難解な仕組みを、どうにか理解したいと切望する人たちで溢れている。「星5個のレヴューが1つ増えたのに、平均値が星1つぶん落ちたのは、なぜ?」と、ある書き込みは問いかけていた。

有名企業も打ち負かす「星」の力

商品のランク付けが落ちれば、売り手は失うものが大きい。よい口コミが広まれば、比較的知られていない商品であっても大成功を収めることができる。

「レヴューはブランドより重要です」と、ネット通販企業のコンサルティングを手がけるPotoo Solutionsの最高経営責任者(CEO)フレッド・ディミアンは言う。「Amazonを通じて、あるいは消費者に対して直接販売している小さな企業に完敗している有名ブランドもたくさんあります」

例えば、Cali Whiteという企業の「Cali White ACTIVATED CHARCOAL & ORGANIC COCONUT OIL」という歯磨き粉は、Amazonでの売れ行きがナンバーワンになり、CrestやColgateといった有名企業を打ち負かした例があるという。

星の数はアマゾンのアルゴリズム以外の要素からも影響を受ける。具体的に言えば、自社の商品を褒めてくれるレヴューを書く人にお金を払う販売業者によって、星の数が操作されている場合もあるのだ。Amazonの検索結果で、商品のランクを上げるのが狙いである。

「アマゾンは褒めているレヴューを直ちに削除します。嘘を見抜くからです。批判しているレヴューより、褒めているレヴューをすぐに削除します」と、ディミアンは説明する。この記事が最初に公開されたあと、アマゾンが偽りのレヴューのうちポジティヴなものを優先して削除しているという指摘について、同社の広報担当者は否定している。

「不正なレヴューの90パーセント以上は、コンピューターでつくられていると考えています。アマゾンは機械学習テクノロジーを使って、新たに投稿されたレヴューと過去のレヴューのすべてを365日分析し、不正なレヴューは受けつけない、あるいは削除しています」と、アマゾンの広報担当者はコメントした。

出来上がったエコシステム

また、Amazonに掲載されている「本物であると判明した」レヴューであっても、見た目の通りとは限らない。「本物とわかったレヴューであっても、考慮したり削除したりしなければならないものはたくさんあります」と、アマゾンの元社員で現在はAmazonを利用する販売者のためのコンサルタンティングを手がけているクリス・マッケイブは語る。

「こうしたレヴューはすべて、その製品と利害関係にある購入者のアカウントから書き込まれています」

例えば、販売企業が購入後にペイパル経由で払い戻している場合もある。アマゾンは「何らかの報酬(無料または割引価格での商品の提供、返金、償還を含む)と交換に投稿される、あるいは誰かのために投稿される」レヴューの投稿を禁じている。

販売者にとってレヴューは重要だ。同じようにアマゾンにとっては、レヴュアーを引きつけておくことが重要になる。Amazonで販売されている商品の多くは、アマゾンの社名で販売されているわけではない。こうした商品を顧客に信頼してもらうには、ますます拡大していくレヴュアーのネットワークにアマゾンは依存することになる。そして、こうしたレヴュアーたちは無償で働いているようなものだ。

ボットが目を光らせるレヴュアーランキング

この仕組みは、レヴューが本物か偽物か区別するだけにとどまらない精巧なエコシステムを生み出した。まず挙げられるのは、「Amazon Vine 先取りプログラム」だ。販売者は新商品を無料で提供する代わりに、レヴューを書いてもらえる。「ただでもらえるなら、やりたい! 」と思った人もいるかもしれないが、残念ながら選ばれた人だけを対象としたプログラムだ。

またアマゾンは、レヴュアーたちをレヴューしてランク付けしたリスト「10,000名のカスタマーレビューワー」[編註:日本のAmazonのリストはこちら]を作成しており、ここでの順位は常に見直されている。このエリートクラブのメンバーになった人たちは、プロフィールに「ベスト500レビュアー」といったアイコンを付けることができる。

レヴュアーのランク付けは、ある人がそれまでに投稿したレヴューの数だけではなく、何人の買い物客がその内容を「役に立つ」と思ったかによって決められる。流行を生み出す名誉あるレヴュアーたちをリストアップしたAmazonのウェブページは、「こちらのお客様によって書かれたレヴューをご覧ください。皆様にとって、とても参考になるでしょう」と、誘っている。

さらにアマゾンは、前年までのトップ・レヴュアーたちを「レビュアーの殿堂」で称えている。しかし、そこでの競争は激しい。トップの10,000人以内にランク入りしたからといって、栄誉ある席にいつまでも安穏としていられるわけではない。誰をリストから削除すべきか、掲示板サイト「Reddit」の便利な“ボット”が毎日モニターしているからだ。