Jリーグは不思議なリーグだ。上位と下位との実力差がここまで接近しているリーグも珍しい。過去2年こそ川崎フロンターレが連覇を果たしているが、常勝軍団の域にはほど遠い。鹿島アントラーズにしても高位安定型であることは認めるが、20冠と言われてもJリーグが始まってすでに27年が経過し、その間、最低でも80冠あったわけで、強さを示す説得力のある数字にはならない。

 現在首位を行くFC東京も、首位に立ったのはクラブ創設以来、今季が初。他国のリーグならば大騒ぎだ。それが騒ぎにすらなっていないところに、Jリーグの特殊性を垣間見る気がする。

 ヴィッセル神戸は14節まで順位こそ13位ながら、降格圏まで勝ち点差は僅か1。瀕死の状態にあった。首位、FC東京との勝ち点差は19。15節は大差がついた状態にある両者の対戦となった。

 天気は雨。かなりしっかり降る悪天候の中、味の素スタジアムには今季最多となる38506人の観衆が集まった。通常は2万人台半ばなので、神戸見たさ、イニエスタ見たさに1万人以上の観客が駆けつけたことになる。この辺りも1位対13位の関係には見えないが、試合の中身もそれに輪を掛けていた。

 神戸のトルステン・フィンク新監督はこの日が初采配。相変わらず「バルサ化」という抽象的なキャッチフレーズを掲げる神戸にあって、このドイツ人監督はどんなサッカーをするのか。どこまでバルサ化に近づけるか、注目が集まったが、布陣は常識的な4-2-3-1で、支配率が上がりやすいサッカーは維持されていた。

 FC東京とマッチアップすると、志向の違いがくっきりと浮かび上がった。ボールを支配する神戸とカウンターの機をうかがうFC東京。パッと見、13位対1位の対戦にはとても思えない展開になった。支配率は58対42。東京の支配率は通常よりさらに低下した。

 FC東京の長谷川健太監督は試合後、神戸との「志向の違い」を強調した。確かにFC東京はカウンター系で、神戸はボール支配にこだわるサッカーだ。しかし、たとえば森保式3バックと比較すると、神戸とFC東京は同じ系列のサッカーとして括られる。4バック同士だからというわけではない。3バックでもこれと同類項で括られる、森保式とは異なるタイプがある。FC東京と神戸はけっして水と油の関係にはない。説明は難しいが、お互い正統派のサッカーだ。

 派手か地味かの違いと言ってもいい。FC東京が地味で、神戸が派手となるが、かつて、FC東京の監督を務めた原博実(現J副チェアマン)は、「首都東京のチームなので華やかなサッカーがしたい」と述べている。
つまり、当時と現在と、クラブとしてのコンセプトが変わっていることを意味する。とても重要な問題だと思うが、その辺りについて突っ込む人はいない。かつてはFC東京も神戸的だったのだ。原サンもバルサに対してほぼ100%肯定する志向の持ち主だった。

 とはいえ、その肝心のバルサも現在と過去ではスタイルが変わっている。現在のバルベルデ監督のサッカーは、かつてに比べカウンター色が増した。大袈裟に言えばFC東京的サッカーに近づいている。よって「バルサ化」と一口にいわれても、言葉足らずにしか聞こえない。神戸にはもう少し具体的は表現が求められている。
しかし森保式3バックは、それが些細な問題に見えるほど、別次元に位置するサッカーだ。3バックと一口にいっても種類は様々。それこそバルサ式3バックだってある。グアルディオラが監督の時代に使用した中盤ダイヤモンド型3-4-3。クラブW杯で来日した際は、これを0トップ型にアレンジした3-4-3で戦っている。

 従来と異なることをする場合、キチンとした説明が必要である。なぜ数ある選択肢の中から森保監督は3-4-2-1を選ぶのか。