2000年代初頭、『池袋ウエストゲートパーク』や『GO』などの作品で、圧倒的な存在感を放ち、何かと世間から注目を集めていた俳優・窪塚洋介さん。

今年、IndeedのCMに実写版『ONE PIECE』のサンジ役で登場したのを見て、「最近は何をしているんだろう?」と気になりました。

そこで今回は、ご本人に「窪塚洋介のいま」を直撃! ブレイク当初のことから、現在のことまで赤裸々に語っていただきました。

皆さんが気になっているであろう、“あの話題”にも触れていますよ…!

〈聞き手=阿部裕華〉


【窪塚洋介(くぼづか・ようすけ)】1979年5月7日生まれ。神奈川県横須賀市出身。1995年に俳優デビューし、映画を中心に舞台でも活躍。2017年にマーティン・スコセッシ監督作「SILENCE-沈黙-」でハリウッドデビューを果たし、海外にも積極的に進出中。今冬公開のBBC×Netflix London連続ドラマ「Giri/Haji」ではロンドン等で長期撮影を行い、メインキャストを演じている。レゲエDeeJay“卍LINE”として音楽活動を行うほかに、モデル、映像監督、カメラマン、執筆など幅広く活動中(ヘアメイク=botanicamakehair 佐藤修司)

阿部:
窪塚さん、大阪から東京まで来ていただいたとのことで、ありがとうございます。今日来られたんですか?

窪塚さん:
えーと、いつ来たのかな…忘れちゃったんですけど…

阿部:
えっ、そんな…

窪塚さん:
すいません、冗談です(笑)。2日前に来ました。


笑顔がすてきな窪塚さん。開始早々独特なペースです

阿部:
あ、そうなんですね…今は大阪に住んでらっしゃるんですか?

窪塚さん:
そうね、2012年からなんで、もう7年になります。

テレビへの出演が減少した理由は…?

阿部:
窪塚さんは、2000年代前半、かなりの数のテレビドラマに出演されていましたよね。

最近はテレビで見かけることが減ったような気がするのですが…

窪塚さん:
そうだね。テレビドラマは2003年に出たのが最後かな…

阿部:
それってなにか理由があるんですか?


まっすぐな目と沈黙に、緊張が走ります…

窪塚さん:
ああ、それは自分が本当に楽しめる仕事がなにかを考えたときに、テレビドラマは違うなって思ったから。

阿部:
どうしてでしょう?

窪塚さん:
作り手と自分の熱量の差を感じたんだよね。

一概にくくっちゃよくないけど、あるドラマの現場で、給料をもらうために作ってる“サラリーマン”的なスタッフがいて、それに嫌気が差したというか…

納得できなくても、放送日に間に合わせるために撮影を進める人もいて、とことん作品にこだわり切れない感じに「違うな」って思っちゃって。

阿部:
(めっちゃストレートな理由…)

窪塚さん:
逆に映画って、僕のまわりでは、1つの作品に人生かけてたり「これが最後かもしんねぇ」って情熱を持って作品を作ってたりする人が多かったから、すごく惹かれたんだよね。

自分が、「後悔しない今を生きたい」と考えたときに、やりたいのはこっちだなと。

それで映画の仕事を優先するようになったら、テレビに出ることは必然的に減ったって感じ。



阿部:
一方で、レゲエやヒップホップなどの音楽活動もされてますよね? その理由などはあるんでしょうか…?

窪塚さん:
役者って自分自身の表現っていうよりは、誰かが表現したいものの “駒”になる…って感じだけど、もっとダイレクトに自分自身を表現できることをしたかったんです。

阿部:
なるほど…!

窪塚さん:
この体で生きてる間に過ごせる今は「今」しかないから、文句言って過ごすより、楽しんだほうがいいじゃないですか。それで何でもやってみようと。

離婚や「落下事件」。いろんなことが起きた



阿部:
その境地にたどりつくのって、なかなか勇気がいりますよね…

多くのビジネスパーソンは、「やりたいことだけやりたい」と思ってても、いろんなしがらみがあってできないと思うんですが…

窪塚さん:
まあ、そうだよね。俺も気持ちを固められるようになるまでに、いろんなことが起きたし。

阿部:
いろんなこと…

窪塚さん:
離婚するとか、マンションから落っこちるとかさ。


触れてもいいか迷ってた話題きた…

窪塚さん:
あの(落下事件の)ときのことって、本当に覚えてないんだよね。

仕事やプライベートで思い悩んでいたわけでもないの。その日はアメリカに行く予定だったから、準備もしてた。

阿部:
そうだったんですか!?

窪塚さん:
でも、そんな普通の日に落ちたってことは、きっと調子乗ってたからなのかもなって思ってて

阿部:
たしかに超売れっ子でしたもんね。



窪塚さん:
あ、いや有名になって天狗になってたとかではなくて(笑)。

「この世の中にわからないことはない。自分のことは全部わかった」って思ってたんだよ。

たぶんそれを神様に怒られたんだと思う。「全部わかったんなら、お前これ説明してみろよ」、ドンって。

阿部:
(想像の斜め上を行く、調子の乗り方だ…)

窪塚さん:
それで「自分にもわからないことはまだある」って気づかされて生き方を見つめ直した。

そこから、自分のやり方で仕事をしてたら、ハリウッドから映画の仕事が来たんだよね。自分が大好きだったスコセッシ監督の作品に、すごく大事な役として参加できた。

いまだにドッキリかって思うくらいうれしかったな…


2017年に公開されたマーティン・スコセッシ監督『沈黙-サイレンス-』で、重要人物キチジロー役で出演。1回目のオーディションに落ちたものの、2回目のオーディションでチャンスを手にした

生き方の「バランスの取り方」は、あのドラマの名セリフに学んだ

阿部:
今は、メインでされてるお仕事はなんなんでしょうか?

窪塚さん:
俳優活動がメインかな。

BBC(イギリスの国営放送)とNetflixが共同制作してる連続ドラマ「Giri/Haji」の撮影があって、トータル6カ月ロンドンで生活してた。

音楽活動もしてたんだけど、2017年にアルバムを出してから活動休止してるね。

阿部:
そうなんですね。大変失礼な質問かもしれないのですが、「日本で人気俳優として活躍されてたこと」と比べて、現状をどうとらえているんでしょうか…?

窪塚さん:
うーん、それは「今幸せですか」「幸せって何か」みたいな話ですよね…



窪塚さん:
それって、「俺って幸せかなぁ?」って誰かにきいたり、「俺のこと幸せだと思う人、何人いますか〜?」ってアンケート取ったりするようなことじゃないと思うのね。

俺は今、幸せを感じているのか、いないのかというシンプルな話で。自分は今、シンプルにやりたい仕事ができてるから、幸せだと思いますよ。

阿部:
幸せの軸が、完全にご自身の中にあるんですね…

窪塚さん:
そうだね。

日本のドラマにたくさん出てたときは、幸せって、どこか「上へ上へ」みたいなイメージがあったのね。もっと有名になって、もっとお金を稼ぐみたいな。



窪塚さん:
それが、“いろいろ”あって、「上に行かなくても、『奥へ奥へ』でいいんだ」って思うようになったの。

幸せって、「自分と世間のバランスをどう取るか」みたいな話だから、バランスの取り方は人それぞれでいいんだと。

阿部:
幸せは、自分と世間とのバランスの取り方…! すごくしっくりきます。

窪塚さん:
そうそう。

「世間とのバランスの取り方」って話で言うと、俺、昔やったドラマのセリフですごい好きなセリフがあってさ。さっきテレビドラマのことちょっと悪く言っちゃったんだけど!

阿部:
おお! なんでしょう?



窪塚さん:
「悪いことすんなって言ってんじゃないの、ダサいことすんなって言ってんの」っていう。

これって、すごいパンチラインじゃない?

阿部:
これは…『池袋ウエストゲートパーク』のキングの名言きたーーーーーー!


※『池袋ウエストゲートパーク』…2000年に放送された伝説的ドラマ。主演は長瀬智也。脚本は宮藤官九郎。窪塚さんは池袋を仕切るカラーギャングの「キング」を演じ、人気を博しました

窪塚さん:
世間に対してバツが悪いとか、誰かに怒られるから悪いってことじゃないんだよね。

自分自身で「ダサい」と思うような生き方はしちゃいけない。

誰かが決めたルールを鵜呑みにして、わかった気になってるのはもったいないんだよね。はたから見たら「窪塚は何やってるかわからない」って思うかもしれないけど、自分の内側から出てくるものにしたがってるだけなんだよ。



阿部:
すばらしい…今日はありがとうございます。

窪塚さん:
そんなによかったですか! じゃあ、最後に怪しい壺でも買ってもらおうかな…

阿部:
なんでですか(笑)。


最後までマイペースにボケる窪塚さん

今までの経験を包み隠すことなく赤裸々に、そしてお茶目に話してくれた窪塚さん。

お話を聞いて、多くの人がなかなかし得ることのできない経験をしているからこそ、「世間と自分のバランスを取ることが幸せへのルートである」との価値観が生まれたのだと感じました。

でも、私たちがその価値観を鵜呑みにすることは望んでいないだろうなとも感じました。なぜなら、幸せは人が決めるものでなく自分で決めるもの、ですからね。

窪塚さんの口から出てくる言葉1つ1つが、まるでリリックを紡いでいるようで、「一曲作れるのでは?」と思わせる贅沢なひとときでした。窪塚さん、ありがとうございました!

〈取材・文=阿部裕華(@zukizucchini)/編集=於ありさ(@okiarichan27)/写真=長谷英史〉



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