農研機構は、天然成分のロリオライドをトマトに与えると、ミカンキイロアザミウマやナミハダニの被害を抑えられることを明らかにした。ロリオライドは、殺虫効果を持たず、トマトの害虫抵抗性を高める働きがある。薬剤抵抗性が出にくい、新たな害虫防除剤の成分として期待できる。
 
 植物の防御反応を高める資材は、稲のいもち病で農薬登録があって広く販売・利用がされているが、虫害対策にはない。

 ミカンキイロアザミウマやナミハダニは、農作物の重要害虫であり、主に殺虫剤で防除されている。しかし、単一の殺虫剤を使い続けると、剤が効きにくい薬剤抵抗性が出現する課題がある。

 同機構は、害虫を直接殺さない新しい薬剤を探すため、植物や微生物などの天然成分の防除効果を調べた。タバコに強い害虫防除効果があり、有効成分がカロテノイドの一種であるロリオライドだと突き止めた。

 トマトの葉をロリオライド溶液に浸し、ナミハダニの雌を放飼すると、溶剤だけの場合に8割以上だった生存率が5割程度まで低下した。産卵数も半分になった。ミカンキイロアザミウマとハスモンヨトウでも同様の効果を示した。

 ロリオライド自体は、殺虫成分ではないため、植物の防御反応を高めることで、害虫の生存率を低下できていると同機構は分析している。殺虫の仕組みが成分に由来しないため、抵抗性が発達しにくい。

 同機構生物機能利用研究部門の瀬尾茂美主席研究員は「抵抗性が発達しない、新しい薬剤の開発につながる」と期待する。