11日、総務省は、携帯電話に関する有識者会議に対して、省令の改正案を提示した。翌週の18日に開催される会合で集約したうえで、今秋から導入される流れが出来た。

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 18年6月に、菅義偉官房長官が、携帯電話料金を「現在よりも4割程度引き下げる余地がある」、と口火を切ったことでスタートした通信料金引き下げへの動きは、ほぼ1年間に渡る紆余曲折を経て今秋実現を果たす。

 11日の記者会見で菅官房長官は、「通信と端末それぞれに競争原理が働くことを通して、双方の価格が下がることを期待する」と述べた。事実上の勝利宣言だ。

 現在明確になっている最大の変更は、従来9500円で運用されて来た2年契約の途中解約違約金が、政府の主導により1000円以下とする方針の決定だろう。1000円以下ということは無料もあり得るため、会社別に設定される通信料金次第ではユーザーの流動化が激しくなるだろう。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3大キャリアにとって最大の計算違いとなった。

 加えて、通信料金と端末料金の完全分離が実施されることになった。今回の変更でも、通信契約と端末の販売がセットの場合に端末の割引は認められるが、限度額の上限が2万円までとなる。従来は端末価格が”ゼロ円”と表現されるような極端な事例も珍しくなかったが、実態は端末価格が通信料金に上乗せされていたため、新端末への切り替え頻度が高くキャリアを渡り歩くユーザーには有利だが、長期間安定して利用しているユーザーには不利になるという、常識外れの商売が長年続けられていた。

 今秋以降は、通信会社が自社のマーケットを守るために、他社の通信料金よりも安い料金設定を、積極的に行うことが期待されている。特に10月には話題の楽天がいよいよ携帯電話事業に参入する。楽天の三木谷浩史会長兼社長は「いつでも加入できて、いつでも辞められる、超シンプルな料金プランにする」と述べて、解約違約金を設定しない可能性も示唆している。

 新規に携帯電話事業に参入する楽天は、クラウドを使用した「仮想化」と呼ばれる通信ネットワークの新技術を採用する。交換機能や中継機能がソフトウェアで「仮想化」されることによって、データセンターから末端の基地局網までの投資額が大幅に抑制される。三木谷会長兼社長が発言するように「プラットホームで削減したコストが利用者に還元」されるようだと、楽天のビジネスモデルがマーケットを席巻することも想定される。

 現在の携帯電話事業は成熟化が進み、新規に携帯を申し込むユーザーはあまり期待できない。今後は他社のユーザーをどうやって取り込むのかというところに、知恵を絞った戦いになる。ユーザーがキャリアの変更を検討する時に、通信料金を比較するのは当たり前だ。

 今秋、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに楽天が加わった、天下分け目の戦いが開幕する。楽天がどんな料金プランを引っ提げて戦場に参入するのか、迎え撃つ古豪がどんな秘策や奇策を繰り出してくるのか。間もなく、生き残りをかけたガチンコ勝負が始まる。