今回の日本代表には4人のGKが選出されている。トレーニングをこなす順番で言えば、権田修一(30)、川島永嗣(36)、シュミット・ダニエル(27)、大迫敬介(19)。そして現在の序列もこのとおりと考えられる。

しかし、最も刺激を与えているとすれば今回初招集された大迫敬だろう。川島は大迫敬を見て「自分が19歳だったときより技術もしっかりしてると思う」と高評価を与える。

本人は「いろんな経験をしてきた選手の中で一緒に練習できているのは楽しいですし、その中で自分の強みを出しているというのは刺激的です」と笑顔満面。試合中の無表情ぶりとは大きく違う一面を見せた。

大迫敬は久保建英とともに荷物運びをして「若いので役割を果たしたいです」と語るなど、謙虚な側面も持ち合わせている。だが、プレーについて語るときは自信のほどを覗かせた。

「シュートストップだったり、ハイボールだったりは自信を持っているのでどんどんアピールしていきたいです。他の3人にないところを自分がドンドン出してお互い刺激試合ながらやっていけたらと思います」

「若いGKが上の選手たちに危機感を与えられるようにしていきたいですし、ここに入っている限りは自分が出るつもりでやっていきたいです」

実際、公開された練習の中ではファンブルも少なく、ジャンプでも高さを見せていた。若武者の台頭はベテラン選手たちの危機感をあおったはずだ。

もっとも、森保一監督が最も期待を寄せているのはシュミットかもしれない。監督就任以来、欠かさずに招集している唯一のGKがシュミットなのだ。シュミットは代表に呼ばれ続けていることを「自分の成長を待ってくれている」と理解している。

シュミットは高校で本格的にフィールドプレーヤーからGKへと転向した。そのため長所と短所が混在している。長所は足を使ったボールコントロールが他のGKよりもうまいこと。森保監督が目指すGKからの展開という戦術には最も適している。

短所はGKとしての経験の少なさ。それはシュミットも理解している。今回、川島を見て「シンプルに速いボールに対して動きが速いし、そういうのに慣れている」と自分との違いを認識していた。

その上で、自分の高さに加えて「高さを横の守備範囲に広げていければ、もっと自分を活かせる。そこでレベルアップする必要がある」と、どう経験を積むか考えている。噂されている海外移籍については「代理人に任せている」と肯定も否定もしなかった。

このシュミットの移籍の噂以上に、他のGKに刺激を与えたのではないかと思う場面があった。川島がシュミットの頭付近にめがけてボールを蹴り、シュミットがキャッチをするトレーニングで、川島がミスキックしたボールがシュミットの足下に飛んだのだ。

シュミットは素早く腰を落としてボールをキャッチ。ファンブルすることもなかった。長身選手は足下が弱いという一般的な弱点を防ぎ、成長した姿を見せていたのである。

【森雅史/日本蹴球合同会社】