北方「打者の反応が楽しみ」 ビザが下り次第、渡米しメディカルチェックを受ける予定
米大リーグ・ドジャースとマイナー契約を結んだ栃木ゴールデンブレーブスの160キロ超右腕、北方悠誠投手が30日、栃木・小山市内の栃木県民球団県南事務局で入団会見を行った。2度のNPB球団戦力外から、独立リーグを渡り歩き、つかんだ大きなチャンス。北方はチーム、ファン、両親らへの感謝の言葉を並べた。スピードボールが魅力だが、ド軍入りへの決め手となったのはその速さだけでなかった。
日本の独立リーグから、160キロ右腕が海を渡る。夢を諦めなかった北方だったからこそ、つかんだチャンスだった。
緊張気味に会見場に現れた北方は栃木GBの寺内崇幸監督をはじめとしたチーム、スタッフに感謝した。
「僕は(昨年)11月に栃木に来て、ずっと練習させてもらっていました。トレーニングをする場所もありましたし、ほとんど休みなくトレーニングさせてもらえたので、いいコンディションでシーズンを迎えられました」
「1月、2月から実戦、シート打撃、打者と対戦する機会をもらえたので、開幕まですんなり入れました。いっぱい試合に使ってもらえて、試合の中でいい状態を感覚を維持できたというのがあったので、使っていただいた監督、コーチには感謝をしています」
北方には160キロの直球があっても「制球難」という言葉がついてまわっていたが、練習と登板を繰り返す中で、そのウイークポイントは改善されてきた。
今後はビザが下りれば、渡米。米アリゾナのキャンプ施設に入り、メディカルチェックを受ける。その後、マイナーで登板機会のあるチームに入り、現場のコーチ、ファームディレクターらがチェックする。
北方は「今はストレートの調子がいいので、それをストライクゾーンに腕振って投げたら、どんな反応をするか、それが楽しみですね。そこでまたいろいろ考えて、違うレベルアップができたらいいなと思います。1試合1試合大事に投げたいと思います」と高鳴る気持ちを抑え込みながら、抱負を語った。
会見に同席したドジャースの日本担当顧問・鈴木陽吾氏の目に映った北方の魅力はスピードボールだけでなかった。
ド軍日本担当顧問・鈴木陽吾氏「心・技・体のすべてにおいて判断」
「スカウティングというのは総合力。心・技・体のすべてにおいて判断をします。オフも休まずにトレーニングしていること、課題のコントロ―ルがいい方向だということも調査で確認ができました。球速も高いレベルを維持している。本人の野球に対する姿勢、そういったことを含めて、総合的な判断をさせていただきました」
北方は2012年に佐賀・唐津商高からドラフト1位でDeNAに入団。14年に戦力外となり、15年はソフトバンクで育成選手としてプレー。高校時代から150キロを超える直球で将来を嘱望された右腕がイップスにもなった。まだ20代前半で2度のNPBから戦力外。厳しい現実に何度も心が折れそうになった。野球を辞める選択肢もあった。
それでも応援してくれる家族のため、野球が好きな自分の気持ちを裏切りたくなかった。独立リーグのチームを転々としながら、練習だけは止めなかった。高いところでもう一度プレーするという思いも失わなかった。一度は失ったスピードが150、152、156……今では160キロを超えた。球速が戻っただけではなく、先に進んだ。
ドジャース入りにつながったのは、そのような野球への思い、熱だった。これは北方にしか持っていないものだ。
会見で、同じように夢を追う独立リーガーへのエールを求めると、これまでの苦悩を思い起しながら、北方は言葉を繋いだ。
「僕も独立4年目になるんですけど、諦めず、思い切り、しっかりやっていたら見てくれている人は見てくれる。手も気も抜かずやっていたら、いい結果出ると思うし、納得して次のステップアップできると思っています」
北方はドジャースのユニホームを身にまとうと、照れくさそうに笑みを浮かべた。「日本人の大先輩、前田健太さんが活躍されているということ。ワールドシリーズに出ている強いチームの印象です」。30人以上の報道陣を前にして、自分がドジャースについて語っている姿を4年前、想像できていただろうか。
これで終わりではない。北方のこの先には見たことのないような光景が待っている。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)
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