レスター・シティにおける岡崎慎司の活躍は、まさに伝説的なものだ。

 2015年6月にドイツ・ブンデスリーガのマインツから990万ポンド(約13億8600万円)でレスターに加入したストライカーは、その献身的なプレースタイルで相棒のジェイミー・ヴァーディーを引き立て、クラウディオ・ラニエリ監督(当時)のもとで1年目からレギュラーとして活躍。「奇跡」と呼ばれたプレミアリーグ制覇を成し遂げた功績は、レスター・ファンの間で永遠に語り継がれるだろう。

 フォクシーズ(レスターの愛称)で偉業を成し得た岡崎は4月、今シーズンいっぱいでの退団を表明した。5月12日に本拠地キング・パワーで行なわれたシーズン最終戦では、大勢のレスター・ファンが万雷の拍手を送り、その貢献に謝意を示したのだ。

 そんなサムライ戦士の退団を惜しむ男がいる。レスターの指揮官ブレンダン・ロジャースだ。

 今年2月にセルティックから電撃的に就任した北アイルランド人監督は、最後まで岡崎を先発起用することはなかったが、チームにおける重要性と存在価値をあらためて絶賛した。地元紙『Leicester Mercury』が伝えている。

「彼は常に自分の仕事に没頭していて、こちらとしてはさしてメンテナンスが必要でなく、求められた時には準備ができていた。普通、ストライカーはゴールを決めたか決めないかで評価されるが、レスターでの彼はジェイミー(ヴァーディー)と中盤を繋ぐリンクマンとしての役割と、クレバーにプレスを掛けにいくことでレギュラーの座を勝ち取ったんだ」
 
 岡崎の献身性を称えたロジャースは、「シンジは自分の強みがより純粋なストライカーとしての動きにあると考えている」としたうえで、気になるその新天地についても私見を述べた。

「ストライカーとしては残念ながら、このチームでは出場機会が限られてしまう。ゆえに退団は、彼の意志を尊重してのものだ。シンジはイタリアとスペインのように、イングランドよりも少しテンポの遅い場所で自分を試してみたいと思っているようだね。私は彼がどこに行くかは本当に知らない。きっと彼自身もまだどこに行くのかは分かっていないだろう」

 そして、「どこに行っても彼は大きな成功を掴むさ」と太鼓判を押す。

「シンジは進むべき時が来たと感じたのだろうが、私はこの先も彼の貢献を決して忘れることはないだろう。なにより人柄が素晴らしく、常に私のグループに置いておきたい選手だったし、私の監督キャリアのなかでも最高の選手の一人だ。

 彼は正直者だし、毎日一生懸命に働いてくれた。そして何事もエネルギッシュに、熱意をもって、笑顔で取り組んでくれる。どれだけ蹴られても、何度も立ち上がって、ピッチですべてを捧げてくれるんだ。

 この国では、『タンクを空っぽにする』というのが、全力を尽くすひとの例えだが、彼こそまさにタンクを空っぽにする男だった。練習場でも常にタンクを空っぽにするまで走った。短期間ではあったが、彼と一緒に仕事ができたのは、私にとってこの上ない喜びだった」

 2022年のカタール・ワールドカップ出場を目標に掲げる33歳の点取り屋。ロジャースが挙げたスペインやイタリア、さらにはトルコなど、新天地についてはさまざまな噂が飛び交っているなか、いかなる決断を下すのだろうか。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部