[画像] 鶴城丘vs西尾東

連休最後に組まれた西尾市勢対決は、ガチンコ対決で緊迫の好試合西尾東・山田紘太郎君

 平成から令和と元号が替わるという、日本にとっては歴史的な事象がある中で、学校等の公的機関等は史上まれに見る10連休ということになった。この連休の期間、高校野球の各チームは、地区によっては春季大会の真っただ中というところもあろう。

 ただ、4月に春季県大会などを終えている多くの都県ではこの時期は練習試合を積極的に組んで、春季大会で見つかった課題を一つ一つ解消していくことや、夏へ向けての新たな取り組みを見出していくという時期でもある。

 日程ということで言えば、この時期には遠征を多く組んでいて普段あまり対戦することのない遠来の他県の学校との対外試合を組むというところもある。一方で手の内を知っている近隣校同士で、お互いの課題を検証していきながら一つひとつを解消していくという取り組み方もある。

 昨夏の東愛知大会では決勝進出を果たし、その後の新チームになっての秋季大会でも県大会ベスト4に進出した西尾東。この連休は、至学館や西尾、鶴城丘という県内でも知った仲の相手と研鑽を積んでいくこととなっていた。この日は鶴城丘との試合が組まれていた。

 学校の歴史ということで言えば、鶴城丘は西尾市内で一番古い学校となる。前身は1909(明治42)年に設立された幡豆郡立農蚕学校で、やがて県立農蚕学校を経て、1942(昭和17)年に西尾実業学校となり、48年の学制改革を経て農業、工業、商業といた産業の専門性を有する西尾実高となり、2004(平成16)年に7つの総合学科のある鶴城丘となり今日に至っている。

 これに対して西尾東は、76年に開校された比較的新しい学校ということになる。とはいえ、野球ということに関して言えば、昨夏の東愛知大会決勝進出をはじめ、2012年以降で夏のベスト4以上が3度、昨秋も県大会ベスト4という実績だ。

 それに、中日のというよりも日本球界を代表する守護神を務めた岩瀬仁紀投手(現解説者)を輩出しているということで知られている。

 そんな西尾対決を連休の締めに配した西尾東の寺澤康明監督と鶴城丘の江川亮介監督。「第一試合は、ガチンコの対戦で行きましょう」ということで、西尾東は山田 紘太郎君、鶴城丘は神田琉成君と両チームともエースを先発に立てて、緊張感のある投手戦となった。西尾東は加藤 健輔君、鶴城丘は星野寛太君と、ともに好捕手もおりバッテリーが試合を引き締めていた。

本塁打を放ち本塁へ向かう西尾東・加藤君

 山田君は、この日は5回までという予定にしていたということもあって「最初からエンジンフル回転で飛ばしていった」投球だった。春先の西三河地区一次予選から中部大一に敗れた県大会3回戦まで、もう一つ調子が上がってこなかったというが、ここへきて調子が徐々に上がってきているということは実感しているようだ。

 結局、予定の5イニングを投げて、8三振という力を示した。ただ、4回だけは、内野安打と四死球で満塁としてしまい、ストライクを少し安易に取りに行ったところを7番星野君に中前打されて1点を失ったのは今後への修正テーマでもあろう。

 鶴城丘の神田君は、江川監督が「随分気合が入っていて、ビックリするくらいだった」と言うくらいに気持ちが入った投球だった。だから、寺澤監督も、「そんなには打てないだろうから、しっかりと点を取る野球を心掛けた」と、2回と6回、いずれもスクイズで得点した。こういう厳しい試合できちっとスクイズを決められるか否か、これは練習試合としても質の高い試みとも言えよう。

 こうした中で、さすがと思わせたのが西尾東の4番加藤君だった。この日4度目の打席となった8回、一死走者なしで回ってきたのだが、神田君の渾身の投球を捉えて打球は左中間を完全に超えていく大きなソロホーマーとなった。通算18本目と言うが、会心と言ってもいい一打だった。

 西尾東の強さは、その後も大谷君が四球で出ると、寺澤監督は「ここが勝負どころ」と、代走内藤君を送る。足を警戒して牽制が悪送球となって二塁へ進み、内野ゴロで三塁へ進んだ。ここで、6回から山田君の後を受けてリリーフして好投していた7番橋本竜輝君。橋本君はしっかりと中前へはじき返して三塁走者を帰した。こうしてソロアーチの後に、すぐに次の1点を追加できるところに西尾東は勝負強さを感じさせた。

 また、寺澤監督は、「夏を考えた場合、やはり山田に続く次の投手を育てていくというのは大きなテーマだったのだけれども、春季大会からここまで橋本が成長してきて、試合で使える目途が出てきたことは大きい」ということを、この日の試合でも確認していた。

 続く試合も、西尾東が2回に森君のソロで追いつき、3回は3四球と失策などに乗じて無安打で3点を奪うなどしてリード。しかし鶴城丘は1番松本君が初回に続いて2本目の三塁打を放った5回、瀬口君と杉浦君の連続二塁田和を含めた6連打などで5点を挙げて逆転。その後は、西尾東は磯貝君、鶴城丘は小林君、栗田君がしっかりと抑えていった。

 長い連休でも、ほとんどの野球部は活動を続けていたであろう。ここから、約2カ月、夏の本番へ向けて各チームとも再調整していくことになろうが、練習試合でもこうした緊張感のある試合を経ていくことで、メンタル面も強化されていくことになるではないだろうか。

 西尾東は、この後は全三河大会と県招待試合で日大三との対戦という日程もあり、質の高い緊張感のある試合を経験できる機会を得ている。そうした一つひとつをこなしながら、夏を目指していくことになる。

(取材・写真=手束 仁)