NY市場では株価が過去最高額に迫り各国で地価も高騰、金融資産価格も上昇するなど、日本を除く世界のトレンドはバブルとなっています。しかしこのバブル状態は「いつ弾けてもおかしくない」とするのは、メルマガ『国際戦略コラム有料版』著者の津田慶治さん。津田さんは記事内にその理由を詳述するとともに、日本が海外発のバブル崩壊に翻弄されないためすべきことを記しています。

バブル崩壊をどう切り抜けるか?

日経平均も上昇し、NY株価が最高株価水準になり、益々バブル拡大状況に世界はなってきた。このバブルがいつか崩壊する。そのバブルが崩壊しても、日本だけが助かる道を探る必要になってきた。この政策を検討しよう。

日米株価

NYダウは、2018年10月3日26,951ドルで過去最高株価であるが、12月26日21,712ドルと暴落したが、その後は上昇して4月18日26,559ドルになっている。過去最高株価まであと一歩まで迫っている。強気相場継続である。

日経平均株価も、同様に2018年10月2日24,448円になり、12月26日18,948円と暴落したが、4月19日22,200円になり、上昇相場に復帰したようだ。

自社株買いとPKOの2本立てで、株価は回復している。日経平均を押し上げているのは、ファーストリティリングとソフトバンクGであり、ファーストの上昇は日銀のETF買いであり、ソフトバンクGの上昇は自社株買いである。

中央銀行は量的緩和で、お金を市中に大量供給したことて、お金が市中にジャブジャブの状態になり、そのお金がベンチャー・キャピタルと不動産投資、美術品に投入されている。民間・企業は、2%程度の低金利の金を借りて、自社株買いやベンチャーや不動産などに投資している。その借金が2000年に80兆ドルだったが、2018年250兆ドルに膨れ上がり、金融資産バブル拡大が止まらない。

世界の中央銀行が量的緩和で供給したお金は、22兆ドルになり、8倍のレバレッジで、銀行は民間に貸し出したことになっている。

米国FRBは金融緩和を止めて、バブルを縮小させる政策をしたが、市場の要求で緩和方向に見直したことで、バブル拡大が再開している。このため、株価も上昇して過去最高株価に迫るところまで来た。

それと、中国の経済成長が3月6.4%まで回復し消費も8.2%増えていることで、景況感が好転して、安心感が出ている。しかし、鉱工業生産の落ち込みが大きく、このため、輸入数量は回復しないので、中国への輸出量が大きいドイツ経済の落ち込みは回復していない。中国の景気が良くなったように見えるのは、インフラ投資を増やしたからである。不動産価格の上昇も再度始まっている。上海株価も上昇し始めた。

しかし、米カリフォルニアや中国の大都市部では不動産バブル発生で、普通の職業人が、家賃が高くて家に住めなくなり、キャンピングカーや地下で生活をしている。不動産価格の上昇で、小売業などの商売ができなくなったり、庶民は、生活防衛のために節約している。このため、物価の上昇もない。

一層の株価上昇を必要としているトランプ大統領は、米中通商交渉を決着させる必要があり、交渉も大詰めを迎えたようである。国家補助金の禁止などの体制絡みの問題を先送りして、貿易赤字解消と知財権保護と金融サービスなどの参入などを得て、一応ここで部分合意をするようである。認証体制も整えて、違反したら関税を復帰するという条件が付いているようである。

世界経済の上昇は起きていないのに、金融資産価格を上げて企業の利益を見た目に膨らましているだけで、これができるのは米中日独英などの最先進国だけである。その他の労働賃金が高い先進国や中進国では、不動産価格は上昇するも、庶民の生活が苦しくなっているようである。その証拠に世界的な紛争が増えている。

リビア内戦

フランス経済は、中国製造業の不振から景気後退局面にあり、新しい収入源が必要になっている。ロシアも石油以外の産業が衰退して国民の生活は苦しい。このため、リビアの内戦が起きたようだ。

リビアの石油の争奪が起きて内戦に至っている。各国が石油争奪を始めているからである。しかし、米国は内戦が始まり、駐留していた米軍を撤退させている。米国は自国で石油が出るので、リビアの石油を必要としていないからである。

米国はモンロー主義になり、中南米は米国のテリトリーであり、他国の介入を嫌うが、米国経済に貢献する日本周辺を除く、その他地域では軍事介入や経済支援などをしないで経済力や軍事力の消耗を防ぐようである。ボルトン補佐官も、このことを明確に述べてベネズエラに介入するロシアに警告している。

フランスとロシアが東の武装勢力を支援しているが、国連は西のトリポリ政府を承認していたことから、停戦に持ち込もうをしているが、うまくいかない。

特にフランスは、ルノーなども新技術がなく日産の技術を使い生き延びている。フランスの経済を支える石油会社トタルもフランス領ギアナでの石油生産がなくなり、新しい石油権益の獲得が必要になっている。ロシアはベネズエラに石油流通ルートを提供するなど、石油流通部門の拡充で、OPECと米国に対応するために、世界的に石油流通権益を握りたいようである。

このため、2国は、組んだような気もする。

金融緩和ができるのは、経常収支黒字国だけであり、ロシアのような経常収支赤字国が金融緩和をすると通貨安になり、諸物価高騰して生活ができなくなり、苦しくなった国民は、暴動などの活動をして社会が不安定になる。フランスはEU中核国であるが、産業競争力が弱くて、国民生活は苦しい。世界が国内と国間での格差が増して、貧しい国や人と、豊かな人と国に分離している。

日米通商交渉

米中通商協議が一先ず終わり、次に日米通商交渉が開始させる。その次に米欧通商交渉を行うとしている。

為替条項は、茂木・ライトハイザーの場とは違う場で、交渉することになり、麻生・ムニューシンの場ができたようである。日本は物品貿易協定TAGとしてきたので、為替は違う場で交渉して、日米通商交渉とはしないようである。実質は同じことではある。

茂木・ライトハイザーの場では、農産物と自動車の2つを優先的に交渉するようである。米国は676億ドル(約7兆5,000億円)の対日貿易赤字を問題視し、貿易赤字の大部分は自動車であり、農産物の輸入だけでは解消しないので、米国産石油やLNGを大量に買う必要がある。しかし、米国は自動車での赤字解消を求めているので、そう簡単ではないと見る。

もう1つ、円高になるかどうかは、麻生・ムニューシン交渉の場で決まることであり、市場の楽観的な円高にならないという予測は、間違いである。

現状の確認

現状は、バブルの最末期で、投機には一番おいしい時期と言われる。しかし、この状態を保ったとしても高々1、2年後にはバブル崩壊になる可能性が高い。勿論、その前でも、今でもバブル崩壊は起きる。いつ起きるかわからない。

その時までは、皆が浮かれているので、ギャンブル性が高まり、金融資産は、何でも上がるようだ。この時期は、危険いっぱいであるが、ギャンブル性の高いものに先回り投機すると、うま味もでかいという2面性を有している。何でも急騰するので、儲けが大きな時期でもある。急騰した物は、その後停滞するので先回りが必要になる。

しかし、お金がない庶民は、苦しくなり生活防衛をするのでデフレ気味になる。このため、物価も上昇しない。このため、適温経済になる。

ということで、余計に行け行けドンドンということになり、日本以外の不動産価格が高騰している。日本は人口減少になることがわかり、東京などの数大都市以外では不動産価格は下落している。

しかし、不動産価格が上昇すると、生活するために住宅を買うことができなくなる。価格が高いので実需がなくなり、投資目的だけになり、どこかで行き詰まる。その時にバブル崩壊となる。

株価も上昇して、NY市場では過去最高株価の近くまで来ている。一方で、日本は1989年年末38,915円が過去最高株価で、2009年7,054円が最高株価以降の最安値であり、その半値戻しは、23,054円だが、現時点株価22,200円で、まだまだ株価が高い水準とは言えないことになる。日本は、この30年、経済成長が止まっているのでバブル化できないのであり、日銀の支援があっても、そこに達しない。

このため、日本では、バブルが起きているとは思えない。そこが世界とは違うところである。

今回は世界的に中央銀行が金融資産や国債を買い、金融資産価格を上昇させている。日銀は株も買い、現状でも水準以上の株高にしているが、バブルの規模が小さい。このため、日銀が振りまくお金は、日本から米国などにばら撒かれている。日本に留まっていない。

しかし、この世界的なバブルが潰れると、資産価格は急落して、不良資産になるが、それを一番持っているのが、中央銀行ということになる。もう1つが、バブル経済に踊っていた人が大きなダメージを受けることになる。

このため、バブル崩壊になると、インバウンドの海外旅行者も激減する。日本は、その面からもバブル崩壊に注意が必要になっている。

日本は、バブルが起きていないことが幸いかもしれないが、銀行がCLOなどの組込ジャンク債を大量に買ったことで、そこからバブル崩壊の影響が出てくることになる。しかし、全般的には弱い経済で、被害が少なくて済む可能性もある。

バブル崩壊をどう切り抜けるか?

世界的に金融緩和で長期金利を下げて、金利をゼロ以下にしている。中央銀行の金融緩和で金利水準を下げた統制経済になっている。企業利益が増えないので、米国のように企業減税や金融資産価格の上昇で、見た目の利益を増やしている。

しかし、この方向の利益拡大も今後なくなる。一層の統制経済化が必要になってくる。中国の現状は、債務不履行の企業にも追い貸をしている。銀行は政府の命令に背けない。このため、企業を延命している。これは、企業の不振原因が米中貿易戦争で生産が落ち込んでいるので、それがなくなれば、企業は復活するからだ。このため、米中通商交渉を早く決着したいのである。

日本は、この面からだけ見ると、優位な位置になっている。現時点でバブル化していないので、今後もバブル景気にしないことである。このためには、日本だけ、少し景気を減速させて、金融資産や不動産投資をさせないことである。景気後退にしても労働力不足であり、貧困家庭を増やすことにはならない。

このため、10月の消費税増税は、非常に良いことになる。前回の消費税増税も結果から見ると、バブルを抑えたことで非常に良かった可能性がある。

萩生田内閣官房副長官の「消費税延期もあり」と言う発言は、消費税増税の準備を開始している企業からの抵抗が強いことで、消費税をするしかないとなり、また、世界的な景気は回復基調であることからも、日本だけが景気悪化になるはずもなく、止めることができないことを、安倍首相は確認したような気がする。消費税増税には、それ以上の対策費を積んでいるので、景気対策にもなっている。

このように、人口減少と労働力不足で、日本は知らぬ間に、世界的なバブルに巻き込まれるのを免れている感じがしている。というよりは、30年前にバブルを経験して、その後遺症から抜け出せていないとも言える。

もう1つのバブル崩壊の影響は、世界展開している銀行や証券会社を通じて、日本の銀行が危機的な状態になることであるが、これはCLOなどの格付けは高いが、バブル崩壊時には流動性がなくなる債券の購入を制限することである。こちらは金融庁が監視しているが、それと共に、日銀は長期金利を1%辺りまで上げる事で、銀行経営を安定させることであると見るが、どうであろうか。

しかし、世界的なバブル崩壊になると、一番問題と思われているのが円高となるが、その時には、輸出が減り、インバウンド旅行者も減り、日本の経常収支は赤字になるので円安に振れるはずが、世界的な安定通貨である円の人気が高まり、円高になり円安インフレにならないことになる。日本は、企業の世界展開で輸出依存から観光客のインバウンド依存になるので、円高にした方が良く、円安の方が問題になる。

長期金利をゼロにするための日銀の量的緩和で、円安になっていると見た方が良い。

イノベーションの必然

イノベーション原動力は「必要が発明の母」である。偽札が横行する中国でスマホ決済サービスが発展したのは、お札が信用できないからである。日本でスマホ決済が流行らないのは、お札の信用が高く、停電時に使えないスマホ決済サービスより利便性が高いことによる。日本での必要性があまりないからである。

しかし、今後、人手不足になり、高齢化が進み、スマホサービス、ロボットやAIなどの省力化が必要になり、高齢化社会で難しい病気治療の需要があり、イノベーションを起きる。そして、基盤がスマホとなり、その上でのサービスになる。労働生産性を上昇させる技術・サービス開発が大きく必要になる。

また、IPS細胞などの再生医療やIPS細胞でタンパク質類の効果が簡単に試験できるようになり脳梗塞・心筋梗塞、アルツハイマー病などの治療薬や試験薬のバイオ技術が発展する。

しかも、お金は日銀がジャブジャブに出しているし、株価は2009年から3倍になり、投資で大儲けしている投資家が多数いる。しかし、今後、大企業の利益は増えないことで、投資妙味がなくなる。このため、ベンチャーへの投機が拡大する。株価の低いベンチャーには、ギャンブル的な大幅上昇期待が持てることからである。

このため、省力化技術やバイオなどの技術を持つベンチャーに、投資が集まることになる。この投資が成功すると、日本には新しい潮流が起きるが、政府は、規制緩和などでどこまでサポートするのであろうか。

さあ、どうなりますか?

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