4月15日、NTTドコモは新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」を発表した。

記事の見出しとしては「最大4割値下げ」が目立つが、実際に4割値下げしているのはデータ容量が1GB未満のところで、多くの人が安さを実感できるとは思えない「期待はずれなプラン」となっている。

これで菅長官は納得するのか


そもそも4割という数字は、昨年8月に菅官房長官が「携帯電話料金は海外と比べても高い。4割程度、値下げできる余地がある」と発言したことが発端だ。

その後、総務省での有識者会議を経て、電気通信事業法を改正することで端末代金と通信料金の分離、いわゆる「完全分離プラン」を実現しようとしている。NTTドコモは法改正を待たずして、今回、分離プランを導入したというわけだ。

NTTドコモは否定するが、今回の発表で4割を強調したのは、菅官房長官の発言を当然、意識し、官邸に向けた「メッセージ」と捉えることができる。

確かに、1GB未満のところは4割下がった。しかし、菅官房長官の発言の根拠は「海外と比べて、4割程度下げる余地がある」というところにある。つまり、今回の料金値下げによって、従来の4割程度安くなり、海外の通信料金と同等になっていなければ、菅官房長官は「激おこぷんぷん丸」になる可能性もある。



旧プランは世界で最も高額、新プランでは?


では、今回の新料金プラン、海外の通信料金と比べてどうなのか。菅官房長官が参考にしたと思われる、総務省が発表している「電気通信サービスに係る内外価格差調査(平成30年9月19日発表、平成29年度調査結果)」のデータをもとに比べてみたい。

電気通信サービスに係る内外価格差調査にはスマホの料金比較に関して、いくつかの項目があるのだが、そのなかで「MNO:シェア1位の事業者比較」というものがある。もちろん、日本からはNTTドコモの旧料金プランで比較されている。

平成29年度の調査結果を見ると、NTTドコモの旧料金プランは、データ容量月2GBではニューヨークに僅差で2位となっているが、データ容量月5GBと20GBではぶっちぎりの1位で「世界で最も高い料金プラン」となっている。ロンドン、パリと比べると2〜4倍近い差になっており、菅官房長官が「4割値下げできる余地がある」と発言するのも納得だ。

新プランを海外キャリアと比較した結果


では、今回、NTTドコモが発表した新料金プランは、「4割値下げできる余地」を満たしたものになるのか。それぞれでのデータ容量で比較したグラフのうち、一番左が新料金プラン、左から2番めが旧プランのデータだ。

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新プランと旧プランを比較すると、900〜1400円ほど安くなっているのがわかる。

とはいえ、新料金プランが海外のシェア1位キャリアの料金と比べて、互角、あるいは安くなっているかといえば、決してそんなことはない。

確かに世界的にも高いアメリカ・ベライゾンの通信料金よりも安くなったプランもあるが、ロンドンやパリなどに比べれば、まだまだ高いと言わざるを得ない。

単純に「高い」と決めつけるのは早計


ただし、これで「日本の通信料金は世界に比べて高い」と決めつけるのは早計だ。

ロンドンやパリなどは、地下鉄においてはネットワークが「圏外」でスマホをまともに使える状態ではない。郊外の電車に乗れば、2Gにつながることも珍しくない。「ネットワーク品質がいまいち」だからこそ、通信料金が安いわけで、地下鉄でも離島でも山間部でもYouTubeを安定して視聴できる日本の通信環境とは異なるという点を理解しておく必要がある。日本は、全国どこででも快適に高速通信が楽しめるからこそ、この料金設定になっているといえるのだ。

ただ、今回の料金プランは「海外と比べて4割値下げできる余地がある」という指摘に応えていないわけで、菅官房長官を想像するに「新料金プランでも、海外と比べてまだ値下げできる余地があるではないか」とまた怒り出しそうで、とても心配だ。

(注:ドコモの新料金プランは、総務省の比較データが「音声月70分」という条件であったため、「5分通話無料オプション」を付加している。2GBと5GBはギガライト、20GBはギガホ。1回線、2年定期契約、ユニバーサル料、消費税の合計となる)