日本国内でも販売されていない非売品ステッカーが売られている

 下の写真のステッカーは筆者がバンコクを訪れたときの定番散歩ルートにある、クローントム市場(通称:泥棒市場)の、さまざまなカー用品を扱う商店がひしめく場所にある某店で購入したステッカー。真偽は定かではないが、日本の排ガス規制などに関するステッカーの正規品が、遠く離れたバンコクの商店の軒先で購入できるということはまず考えられないので、コピー商品であるといっていいだろう。

 日本では当たり前のようにリヤウインドウに貼られていて、それについて何か特別な感情を持つ人はまずいないのに、ここタイではコピー品(のようなもの)が出回るほど注目されているのだ。

 バンコク市内を走る日本車のなかには、正規輸入されたり、現地生産されたモデルのほかに、日本から日本仕様が個人輸入され販売されているケースがある。こちらの富裕層はまさに“金に糸目はつけない”といった感じで、「どうせ乗るなら、高くても構わないので日本仕様に乗りたい」と考えているひとも多いと聞いたことがある。

富裕層が乗る日本仕様への憧れからコピー品が誕生したのでは

 となると、富裕層が乗っている日本車の多くは、日本の工場で日本向けにラインオフされているので、低排出ガスや燃費基準のステッカーは正規モノが貼られている。その意味でもこれらのステッカーのステイタスが高まっており、憧れの気持ちを持つ人が多いようで、このようなコピー商品を自分の愛車に貼るひとがいるようなのである。

 いまの日本でも日本仕様の日本車を北米向け仕様に改造するUSDMや、北米仕様車を個人輸入したり、専門業者などから購入して乗ることで、アメリカ仕様を堪能するという趣味の世界があるが、バンコクのこれらのステッカーは、まさに日本でアメリカのカーライフも含めたライフスタイルに憧れるがいるのに対し、タイでの憧れの対象が日本となっていると考えていいだろう。

 このようなステッカーはインドネシアでも見かけたことがあるので、東南アジアでの日本や日本車への強いリスペクトの気持ちを感じることもできる。コピーステッカーが出回ること自体は良くないことだが、それだけ日本や日本車がリスペクトされていると感じると、なんかもっと頑張らなくてはと筆者は励まされてしまうのである。