仕事に適性があるように、結婚にも向き不向きがある。
どんな爽やかイケメンでも、高学歴・高収入のハイスペ男でも、残念ながら“結婚に向かない男”は存在し、数々の婚活女子を絶望させている。
一時の恋愛を楽しむのなら問題はない。しかし結婚したい女が、結婚に向かない男に割いている時間はないのだ。
この連載では、婚活中のアラサー女子から寄せられた情報を基に、東京に数多生息する “結婚に向かない男”の生態を紹介していく。
先週は拘りすぎるハイスペ男、女を不幸にする男、美意識の高すぎる男、家でも臨戦体制の男、超絶淡白な男、束縛男、親の言いなり男、不機嫌な男を紹介した。さて、今週は?
【今週の結婚に向かない男】
名前:村中雄太(仮名)
年齢:36歳
職業:総合商社
住居:六本木
【報告者】
名前:林田葵(仮名)
年齢:32歳
職業:損害保険会社(事務職)
住居:恵比寿
結婚に向かない男File No.9:独身貴族男
週末の午後。『M HOUSE』は今日も若い女性客で賑わっている。
「このくらい賑やかだと、話がよそに聞こえなくていいですね。…ほら、今日は少しばかり下世話な話になっちゃうから」
そう言って悪戯な笑みを見せた後、今回の報告者・葵は、つい先日別れたばかりだという彼・村中雄太について語りだした。
「結婚を考えなければ、めちゃくちゃいい男なんです。リーダーシップがあって、女性にも優しくて。わかりやすいブランドは買わないけど質の良いものを持っているし、家のインテリアもシンプルでかっこいい。レストラン選びも旅先のセレクトも完璧。つまり、センスがいいんですよね」
元彼のことをそんな風に語る葵は、未だに少々未練があるようだ。
“いい男”だと認めながら、ではなぜ葵は彼と別れたのか。
その理由は他でもない…独身貴族を満喫しすぎた、雄太の浪費癖にあった。
36歳の商社マン。それなりに稼いでいるはずなのに、まさかの貯蓄ゼロ!?
「付き合うことになる前から気前のいい人だなぁと思っていました。デート全奢りは当たり前。それだけじゃなくて、二人で食事をしている時、たまたま私の友人ふたりが同じ店にいたことがあって。途中から合流したんですけど、当然のようにさっと全額支払ってくれて」
デートの会計問題については各々意見が割れるところかもしれないが、スマートに会計を済ませてくれる男が素敵だという事実は女の総意だ。
葵は雄太の男らしさや頼り甲斐にどんどん惹かれていき、彼から付き合って欲しいと言われた時には、まるで10代の乙女のようにはしゃいでしまったという。
「プレゼント選びも素晴らしかった。誰か他の女性にアドバイスもらってるんじゃないかって疑いたくなるくらい(笑)」
ちなみに昨年のクリスマスギフトは、TASAKIのプチバランス。中身を確認した瞬間、葵は思わず飛び上がるほど喜んだ。
「本当、最高の彼氏だと思っていました。彼も私と一緒にいると楽しい、ずっと一緒にいたいと言ってくれて。年末年始は別々に過ごしましたが、お正月明けに会った時、結婚を考えていると話してくれたんです」
二人の関係は極めて順調…のはずだった。
しかしいざ結婚を真剣に考え始めたとき。葵は雄太から、とんでもない事実を突きつけられたのだ。
稼いでいるはずなのに…なぜ?
正式なプロポーズこそまだだったが、雄太と葵は結婚に向けて具体的な話をするようになった。
六本木にある雄太のマンションにお泊まりをした夜になど、結婚したらどこに住みたい?子どもはどうする?など、ふたりで幸せな未来を語りあった。
その流れで、葵はそれとなく尋ねてみたのだ。結婚するとなればぜひとも聞いておきたい、彼の貯蓄事情について。
「ねぇ。お互いの貯蓄額、大よそでいいから言い合わない?」
しかしこの質問こそが、パンドラの箱だった。
「貯金とか俺ないよ、って。しれっとそう言われたんです」
−ど、どういうこと…?
悪びれもせず言い放つ雄太に、葵は言葉を失ってしまったという。
「だって…彼、総合商社勤務で36歳ですよ。貯蓄ゼロって…ありえます?損保の事務職で32歳の私だって、さすがに数百万はあるのに」
さすがにゼロはあり得ない。隠しているだけだろう。願望を込めて、葵も最初はそう思おうとした。
しかし雄太は葵に、トドメともいうべき一言を放ったのだ。
雄太が葵に言った一言とは…?“素敵な彼氏”だからと言って、結婚向きとは限らない
「別に大丈夫でしょ。葵も働いてるんだし」
その言葉に、葵は絶句してしまったという。
「いや別に、私も仕事を辞めるつもりはありません。共働きには賛成なの。その方が良いに決まってるし。でも…まさか雄太が私の収入を当てにするなんて思わなくて。その瞬間、私の中で何かがスーッと冷めていきました」
そう、雄太はとにかく外面命の男だったのだ。
他人でいる間は“いい男”の部分だけを見ることができる。しかし身内になってしまったが最後、彼が外でいい男でい続けるための犠牲を、ともに強いられてしまう。
「よく考えてみれば、家賃補助もないのに六本木にマンションを借りていること自体が見栄っ張りですよね。正確には知りませんけど、家賃で25万は払っているはずです。付き合っているだけの時は、素敵な部屋で嬉しい!としか思っていなかったけど…こうなってくると、六本木に借りる必要、あった?と言いたくなります」
しかも雄太の散財は、家だけではない。
「彼、スポーツジムにも通ってるし、暇さえあればゴルフに行くし、スパやマッサージも欠かさない。おしゃれも好きだから、服や靴も頻繁に買ってる。旅行も大好きですしね」
葵は彼から、連休のたびに「どこかに行こう」と誘われていた。行き先は温泉だったり海外だったり様々だが、その旅費もほとんどを彼が負担してくれていたらしい。しかも絶対に、LCCや安いホテルなんかは使わない。
さらには彼の同僚の話によると、葵だけではなく会社の後輩や事務の女の子にまで同じように奢りまくっているそうなのだ。
結婚するならもう少しお金の使い方を考えて欲しい。葵も一度は、彼にそう忠告してみた。しかし雄太にはまるで響いていなかったという。
「36歳まで独身貴族を謳歌してきちゃってますからね…。一度経験した贅沢って、そう簡単にやめられない。しかもお金がないわけじゃない、稼いではいるわけなので」
こういう男とは、恋人のままでいるに限る。
そう痛感した葵は、彼を“いい男”だと認めながらも別れることに決めたのだった。
「私がまだ20代前半とかだったら、別れずに付き合っていたと思います。でも私はもう32歳。結婚に向かない男に費やしている時間はありませんから」
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最終回:女友達がやたらいる男
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