自分は映画の主人公なのか? 
主人公の心情、臨場感までがリアルに体験できる。

今後、映画の視聴は、革命的に変わるかもしれない。

・映画「THE GUILTY/ギルティ」
・ソニーモバイルコミュニケーションズのオープンイヤーステレオヘッドセット「STH40D」
この2つの出会いとコラボレーションが、
かつて誰もなしえなかった主人公と観客1人1人とのシンクロを生みだした。

「THE GUILTY/ギルティ」は、
俳優ヤコブ・セーダーグレン演じる主人公のアスガー・ホルムが
「電話からの声と音だけで誘拐事件を解決する」
新感覚のサスペンス映画。
予測不可能な展開は、観客を圧倒し、世界各地の映画祭で様々な賞を受けている。

2019年2月20日
・「THE GUILTY/ギルティ」
・ソニーモバイルコミュニケーションズのオープンイヤーステレオヘッドセット「STH40D」
このコラボレーションが、観客の誰しもを「主人公のアスガー・ホルム」そのものとなる体験を与えたのだ。

作中の電話の音を「STH40D」で聴き、それ以外の音は劇場の音響設備で聴く。
これまでに類をみない体感型鑑賞イベントは、主人公になりきって映画を楽しめるというものだった。

あまりの没入感と違和感のなさに、映画「THE GUILTY/ギルティ」は、まるでソニーモバイルのオープンイヤーステレオヘッドセットのために作られたようにさえ思えるほどだが、実はそうではない。

今回、「THE GUILTY/ギルティ」とオープンイヤーステレオヘッドセットという奇跡的なコラボを実現した2人に、その舞台裏を聞いた。


■本当に主人公になりきれた! 初めての体験を実現した奇跡のコラボレーション

ある日、主人公のアスガー・ホルムが受けた1本の電話から事件が発覚する(画像提供:ファントム・フィルム)


予告編映像

主人公アスガー・ホルムは、緊急通報司令室の電話オペレーター。
司令室を離れることができないため、電話での犯人の声と音だけで誘拐事件を解決するというストーリーだ。

スクリーンには緊急通報司令室が映しだされるだけだ。
観客は、電話の音声だけを頼りに、それ以外の場面で何が起きているかを想像する。
このため観客は自然と主人公アスガー・ホルムとシンクロしていく。

この没入感とシンクロ度を飛躍的に高め、「主人公アスガー・ホルム」になりきらせた。
それがソニーモバイルコミュニケーションズのオープンイヤーステレオヘッドセット「STH40D」だ。


一般客や報道陣を招いた体感型イベントでは、劇場で「STH40D」を貸し出して鑑賞した

コラボレーションで利用された「STH40D」は、
耳をふさがず周囲の音を自然に開きながら、ヘッドセットからの音楽や音声も同時に楽しめる、ソニー独自の音導管設計を採用した製品である。



会場で貸し出された「STH40D」とFMラジオ


この「STH40D」を装着して「THE GUILTY/ギルティ」を見ると、
どうなるのか?

・劇場内のスピーカーからは、主人公がいるオペレーター室の音が聞こえる
・ヘッドセット「STH40D」からは、映画内の電話の声と環境音のみが聞こえる

つまり、
映画の主人公アスガー・ホルムの「緊急通報指令室のオペレーター」と同じ状況で映画を観ることになる。

観客1人1人が、主人公アスガー・ホルムと同じ体験をできてしまったのだ。


主人公アスガー・ホルムとの、あまりの没入感とシンクロ感から、
「THE GUILTY/ギルティ」とソニーモバイルのオープンイヤーステレオヘッドセット「STH40D」は、
はじめから用意された企画かとさえ思えるほどだった。

しかし、実はそうではなかった。


■奇跡のコラボレーションは、こうして生まれた




・「THE GUILTY/ギルティ」
・オープンイヤーステレオヘッドセット「STH40D」
この奇跡のコラボレーションを実現させたのは、
・ファントム・フィルム 企画調整部 杉本雄介氏
・ソニーモバイルコミュニケーションズ プロダクト&エリアマネジメント部 小川由理子氏
この2人だ。


ファントム・フィルム 企画調整部 杉本雄介氏


杉本雄介氏は、
ビデオのパッケージメーカーに新卒で入社後、ゲームや音楽などのネット系の新規事業を開発する仕事経て、現在はファントム・フィルム 企画調整部で映画の企画を行う部署に所属している。




ソニーモバイルコミュニケーションズ プロダクト&エリアマネジメント部 小川由理子氏


小川由理子氏は、
新卒で大手部品メーカーに入社後、海外向け法人営業を担当。
その後、「BtoCでお客様が手に取る商品を扱いたい」との想いからソニーモバイルコミュニケーションズに転職し、現在はスマートフォン関連アクセサリーのプロダクトマネージャーを担当している。


杉本雄介氏
「主人公がヘッドセットを付けて電話をかけていることから、イヤホンやヘッドセットのメーカーとコラボしたらおもしろいと考えていました。
イヤホン=ソニーさんというイメージが私の中にあったので、まずは1回、ソニーさんと打ち合わせをさせていただくことになり、映画をご覧いただきました。」

小川由理子氏
「私はXperia Ear Duo(エクスペリア イヤー デュオ)のプロダクトマネージャーをさせていただいておりまして、『ながら聴き』の認知活動を、今、グローバルで行っています。
そんな中、杉本さんから、声だけで事件を解決する映画があって、
ぜひ、ソニーのヘッドセットとコラボしたいという話をいただきました。」


ヘッドセットを装着しての映画鑑賞は、バリアフリーの上映会などで実施されている。
これらは視覚に障害のある方がヘッドセットを装着し、音声ガイドを聞きながら映画を観るという方法で、すでに日本各地で実施されている。

当初、小川由理子氏は、オープンイヤーヘッドセットを使って、映画本編を見ながら音声ガイドを聞くというイメージを考えていた。
ところが実際に試写で「THE GUILTY/ギルティ」を観たあと、この作品はあまり音声ガイドが必要ないことに気付いたという。

小川由理子氏
「試写を観て(音声ガイドではない)何かおもしろいことができないかと考えました。

そこで主人公になりきる体験はどうだろうかと。
電話の向こうの音声のみをヘッドセットから流すという案です。

オープンイヤーステレオヘッドセットだったら『ながら聴き』ができるので、新しい手法での映画鑑賞体験としてご提案させていただきました。」

映画内の電話の音をオープンイヤーステレオヘッドセットで流すというアイデアは、試写を観た直後にイメージできたという。
最近人気のASMRも、オープンイヤーヘッドセットを使用するアイデアのヒントになったそう。

※ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)
日本語では「自律感覚絶頂反応」
最近、JR東日本が参入したことでも話題となっており「音のオーガズム」とも呼ばれている。聴覚や視覚に与えられた「特定の刺激」がトリガーとなり、心地よさや快感を得られる現象。
ASMRは、集中力を高めたり、癒やされたり、睡眠を改善できたりする効果があるという。


しかし、コラボレーションを実現するのは、そう簡単ではなった。


■驚嘆の嵐! 主人公アスガー・ホルムになれる
杉本雄介氏
「一番のハードルは、音声がオペレーター側と電話側の両方を用意できたとしても、電話の音だけを、どのようにお客様の耳元に届けるかという方法でした。

スクリーンから音を流すのは簡単ですが…。
パターンとしては、お客様のスマートフォンを使って、ソニーさんのオープンイヤーステレオヘッドセットを使ってもらう、という方法がありました。

ところが、そこにはいろいろなハードルがあって…。
たとえば、
(事前に)お客様のスマートフォンにデータをダウンロードしておかなければならない。
そもそもお客様がスマートフォンを持っている必要もあります。
またリアルタイムに通信するには、その環境は会場によっても違います。
遅延が発生してしまうこともあります。

そこは両者で打ち合わせの場を設けて、何が作品にとって一番良い方法なのかを、けっこう話し合いました。」


小川由理子氏
「(お付き合いのあった)パラブラ株式会社というバリアフリーの音声ガイドなどを制作されているところにご相談させていただいて、今回の音声の同期とか、そういったところを調整させていただきました。」

最終的には、
・音声の遅延が起きない
・観客は手ぶらで来場できる
この2つの条件をクリアしたFMラジオに音声を飛ばすという方法に決定した。

仕組みは、
・映画館の観客にオープンイヤーステレオヘッドセットとFMラジオを渡す
・ヘッドセットでFMラジオに繋げて映画内の電話の音声を聞く

試行錯誤を重ねて実現した「デュアルリスニングスタイル」は、
一般客を招いての体感型試写会を成功させた。

観客からは、
・映画の世界への没入感がすごかった
・主人公の感覚を疑似体験できるユニークな内容だった
・既に2回観ているのに今回の臨場感と緊迫感はすごかった
・電話口の声や環境音が耳元で聞こえる凄まじい臨場感
など、没入感や臨場への驚きと、高い評価の声が集まった。
さらに、SNS上でも「体験したい!」「絶対に楽しい!」という反響もあったという。


そして一般向けの「THE GUILTY/ギルティ」体感型上映が実施されることになった。


●「THE GUILTY/ギルティ」体感型上映
ヒューマントラストシネマ渋谷
3月8日(金)に実施した初回の体感型上映は満席で終了。2回目の体感型上映は3月15日(金)に実施される。
・3月15日(金)13時20分

https://guilty-movie.tumblr.com/post/183136575585/the


関連リンク
映画「THE GUILTY(ギルティ)」
ファントム・フィルム
ソニーモバイル


執筆:ITライフハック 関口哲司
撮影:2106bpm