3月上旬といえば、学生の旅行シーズンだ。欧州サッカー観戦はかつてその目玉の一つだった。しかしこちらも下火になっている様子だ。旅行に出かける絶対数が減ったとのことだが、学生の旅行と欧州サッカー観戦とは相性がいいと見ている。そこに広がっている世界は異文化そのものだからだ。

 その最たるものがチャンピオンズリーグになる。欧州のクラブ対抗戦は言い換えれば都市対抗戦で、W杯さらには五輪といった国別対抗戦に慣れた日本人にこれは依然として新鮮に映る。現地に行かずには味わえない違和感だ。老婆心ながら言わせてもらえば、日本の学生に体験して欲しいカルチャーギャップになる。

 とはいえ、日本のJリーグも都市別対抗戦だ。アジアチャンピオンズリーグ、先述のクラブW杯も、その延長上にあるイベントになる。鹿島という街のクラブが世界に進出していく姿に、熱くなったサポーターがUAEまで大挙駆けつける姿は、従来の日本にはなかったものだ。新しい価値観になるが、これは鹿島に限った話ではない。

 日本は、国別対抗戦への関心が薄まる一方で、都市別対抗戦への関心が増している状態にある。UAEを訪れた日本サポの数は日本代表が出場したアジアカップより鹿島が出場したクラブW杯の方が多かったという現実には、大きな意味が隠されているのだ。

 時代は、日本代表ではなくJリーグを後押ししているのか。

 しかし、国別対抗戦より都市別対抗戦という図式は、マスメディアにとって歓迎すべき話ではない。「ページビュー」で勝るのは、鹿島ではなく日本代表だからだ。いくら日本代表の人気が低迷しても両者の差が大きくつまることはない。これは日本の構造的な問題になる。都市対抗戦でも十分商売になる欧州との違いだ。

 とはいえ、ファン気質の変化は止まりそうもない。ラグビーW杯を今秋に、東京五輪を来年に控える日本だが、頑張れニッポン的なムードは減退している。少なくともサッカー界においては。僕はそう見ている。