-パワー半導体の材料としても窒化ガリウムが期待されていますね。
  「EVには軽くて小さく大電流で使える半導体を入れる必要があります。炭化ケイ素系やシリコンの半導体は大きな電流を流すと欠陥ができます。そのため複数のチップを1セットにしたデバイスにするのですが、周波数の関係で性能にバラツキが生じてしまいます。窒化ガリウムを使えば1チップで大電流を流しても耐えられるパワー半導体を実現できます」

1億円を170万円以下に
 -窒化ガリウムを使った半導体応用がさらに発展すればどのようなことが可能になりますか。
 「例えば、超小型LEDを利用したディスプレーを開発できます。現在の液晶ディスプレーは特定の色を出すために他の色をフィルターでカットするという処理を行っており透過効率は5%程度です。超小型LEDが実現すれば好きな色をそのまま表示できるので理論的には効率が100%になります」

 -すでに企業からこの発想を生かした製品が出ていますが、非常に高価です。
 「220インチの大画面で1億円以上と非常に高価です。我々は価格破壊を起こしたいと考えています。今までは結晶を一つずつ並べていましたが、我々は単結晶からウエハー(基板)を作製しその上に一つ一つのチップを形成するという半導体の製造工程を利用し、ディスプレーを作る技術に取り組んでいます。こうした技術を使えば、販売価格を従来の70分の1の170万円以下にできるのはないかと考えています。さらにこの技術をスマートフォンに導入すればディスプレーの消費電力を現在の半分にでき、バッテリーの持ちを長くできると期待しています。さらに画面が明るくきれいに見えるというメリットもあるでしょう。こうしたことを実現し『世の中の人が幸せになる』という究極の目標を達成したいと思います」