マンチェスター・ユナイテッドは、かつてないほどの“金満クラブ”に変貌を遂げるかもしれない。

 現地時間2月17日、英紙『The Sun』は、サウジアラビアの第一副首相などを務めるムハンマド・ビン・サルマーン皇太子がユナイテッドの買収に動いていると報じた。

 隣の芝生は青く見えるということか。ユナイテッドは、オイルマネーで変貌を遂げた“隣人”のマンチェスター・シティを追うのかもしれない。同紙によれば、ビン・サルマーンは、早ければ来シーズンまでに新オーナーとなることを目指し、38億ポンド(約5400億円)という超巨額のオファーを提示しているという。

 この報道に対して18日、サウジアラビア・メディア省のトゥルキ・アル・シャバナ大臣は公式ツイッターで、「皇太子がマンチェスター・ユナイテッドの買収を意図しているという報道は全くの虚偽だ」と否定。その一方で、「ユナイテッドとサウジアラビア公的投資基金の間でスポンサー契約に向けた交渉が行なわれているのは事実だ」としている。

 これを受けて、同日中に『The Sun』は、「ビン・サルマーンはシティのオーナーで、アブダビの王族のシェイク・マンスールと競争したがっている」と伝え、買収の可能性がゼロではないことを報道した。
 
 また、アル・シャバナ大臣は、ユナイテッドが2017年10月にサウジアラビアの総合スポーツ局「General Sports Authorit」と戦略的提携を行ない、さらに同国のインターネット会社『Saudi Telecom』ともスポンサー契約を結んでいる状況にあるとしている。このサウジアラビアとの関係強化を図る動きが買収に繋がるというのが、『The Sun』の読みなのである。

 では、ビン・サルマーンとは一体どんな人物なのか。まず触れなければいけないのは、そのバックボーンだ。

 サウジアラビアの第7代国王サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズを父に持ち、初代国王アブドゥルアズィーズ・イブン・サウードの孫でもある彼は、現在、同国の副首相を務めており、次期国王との呼び声も高い。

 当然、その財力は凄まじく、推定の個人資産は日本円にして9800億円と言われ、一家の資産は総額182兆円に上るという。ただ、『The Sun』によれば、いずれも過小評価された金額であり、それ以上に有していると言われているから驚きだ。

 現在、ユナイテッドを取り仕切っているアメリカ人投資家のグレイザー家は2005年に買収し、2012年にはニューヨーク証券取引所に上場させ、クラブ経営を重要視している。ゆえに現時点で売却の意志はないようだが、ビン・サルマーンはその圧倒的な財力を元手に「断りきれないオファー」を提示して譲歩させる算段なのかもしれない。

 いずれにしても、実現すれば、プレミアリーグのみならず、サッカー界においても重要な事柄になる。それだけに関係者の動向に注目したいところだ。