農水省は29日、輸出検疫を受けずに和牛の受精卵と精液を中国に持ち出したとして、家畜伝染病予防法に基づき、大阪府在住の該当者を刑事告発したと発表した。和牛の遺伝資源の国外への持ち出しで同省が刑事告発するのは初。悪質な行為に対して厳正な対応が必要だと判断した。不正流出が起きないよう、輸送関連会社や関係団体に注意を喚起し、国内流通での適切管理の徹底にも力を入れる考えだ。

 今回のケースは、大阪府在住の男性が2018年7月、動物検疫所に連絡せず、和牛受精卵・精液を専用ストローに入れ、冷凍保存容器に詰めて中国へ持ち出そうとしたとされている。

 中国の検疫当局で輸入が認められなかったため、和牛受精卵・精液の違法な流出は水際で食い止められた。持ち出そうとした受精卵・精液を入れた専用ストローは100本を超えるという。

 同法では台湾に限り、牛の受精卵・精液の輸出が認められているが、和牛はどの国に対しても認められていない。

 同省は、同法に違反している実態と持ち出そうとした本数の多さから、悪質な行為とし、刑事告発に踏み切った。同日、大阪府警に受理された。同省は告発した人の国籍などは明かしていない。

 再発防止の一環で、受精卵・精液を入れたストローの輸出に使う凍結保存容器が特殊な形状であることを踏まえ、同省は航空・船舶会社、税関、関係団体、生産者団体などに外観の特徴を周知。不正持ち出しと思われるケースがあれば、動物検疫所へ連絡するよう求めている。 さらに和牛受精卵・精液の国内流通でも、適切な対応を呼び掛ける。都道府県の畜産担当者に対し、受精卵・精液の施錠管理、必要書類の適切な記入などを関係者に指導するよう連絡した。家畜人工授精所の管理実態も調査する。3月にも結果をまとめ、指導通知を出す。一連の対応で、和牛受精卵・精液が海外に不正流出するのを防ぐ。