亡くなった飼い主の帰りを渋谷駅の前で10年も待ち続けた忠犬ハチ公のエピソードに見られるように、言葉でコミュニケーションの取れない人間と動物の間にも深い愛情と信頼の絆が芽生えることがあります。ブラジルの浜辺で瀕死(ひんし)だったところを救助されて以来、命の恩人の家まで毎年自力でやってきては一緒に暮らすマゼランペンギンをCBCが取り上げています。

Penguin travels every year to visit man who rescued him | CBC News

https://www.cbc.ca/news/trending/dindim-penguin-1.3487668

マゼランペンギンは南アメリカ大陸南部のパタゴニアを中心に生息するペンギンです。成鳥は5〜8月の繁殖期以外は基本的に海を移動していて、年間数千kmという距離を泳いで生活するため、めったに上陸しないペンギンであることで知られています。

リオデジャネイロの沖合にあるグランデ島に住む元レンガ職人のJoao Pereira de Souza氏は、2011年に自宅近くの浜辺で原油まみれで飢え死にしそうなマゼランペンギンを発見しました。Pereira de Souza氏はペンギンに「Dindim」と名前をつけ、生息地であるパタゴニアに帰るだけの十分な体力が回復するまで毎日餌を与えていたとのこと。



しかし、体力が回復しても、Dindimは帰ることを拒んだそうです。野生の生き物が群れから離れて人間の中で暮らしてしまうと元に戻ることは非常に難しいため、ブラジルでは野生動物をペットとして飼育することは違法となっています。そのため、Pereira de Souza氏は船に乗ってDindimを海まで送り、自分のすみかへ戻るよう促しました。

しかし、Pereira de Souza氏が自宅に戻ると、なんとそこにはPereira de Souza氏の帰りを待つDindimの姿がありました。それからDindimはPereira de Souza氏の自宅に滞在しましたが、しばらくするとまた海に帰っていきました。Pereira de Souza氏や周囲の人々は、これで人間とペンギンの友情物語に結末が訪れたと考えていましたが、また数カ月ほどするとDindimはリオデジャネイロのPereira de Souza氏の自宅に戻ってきたそうです。



そして、Dindimに興味を持ったリオデジャネイロ大学がFacebookでPereira de Souza氏とDindimについてのムービーを公開したところ、670万回以上の再生回数を記録し、大きな話題となりました。実際にペンギンのDindimとPereira de Souza氏がふれ合う姿は以下のムービーでも見ることができます。

Patagonian Penguin Finds Second Home in Brazil - YouTube

マゼランペンギンが生息するパタゴニアからリオデジャネイロまでは少なくとも3000km前後の距離があり、DindimはPereira de Souza氏に会うためだけに数千kmも海を泳いでやってきているということになります。マゼランペンギンはより暖かいブラジルの海域までやってくることもあり、Dindimが自分のすみかからリオデジャネイロまで泳いでくることは決して不可能ではないそうです。

「Dindimは毎年6月にやってきて、次の年の2月に自分のすみかへ戻ります。私は毎年Dindimに会えることを幸せに感じますし、Dindimとの愛情もより深くなります」とPereira de Souza氏は語っています。



Dindimが特に人懐っこいペンギンであるというわけではなく、Pereira de Souza氏以外が近寄ろうとするとDindimは距離を取ったり近づく人をつついたりするそうです。生物学者のJoao Paulo Krajewski氏は「Pereira de Souza氏にとってペンギンのDindimは家族の一員であり、またDindimも同じことを考えているのでしょう。DindimがPereira de Souza氏を見ると、まるで犬のように尻尾を振って喜びの声を上げます。二人の間にある愛は本当に印象的です」とコメントしています。